
10月29日(金)と30日(土)の両日は「呉酒まつり」の開催日。
広島では西条の酒まつりがつとに有名で、平成2年に初開催されて以来、今年で21回目という歴史ある会です。西条酒まつりは、入場券(前売りなら1,500円)を買って酒広場に入って、その券と引き換えに試飲用のお猪口をもらうと、会場内にずらりと並ぶ900銘柄ほどの日本各地の日本酒が飲み放題で飲めるというもの。毎年10月の体育の日を含む三連休の土日に開催されているそうで、今年も大盛況のうちに幕を閉じました。
いっぽう、「呉酒まつり」は一昨年から開催がはじまり、今年で3回目という、まだまだ若いお祭です。
開催に当たっては、西条の酒まつりとはあえて違うスタイルにすることによって、独自性を出そうと工夫されたようです。西条の酒まつりが酒広場にみんなを集めて、日本中のお酒を飲み放題にしているのに対して、呉の酒まつりのほうは、酒まつりに参加してくれた呉市内の40軒ほどの酒場で分散開催。そして出されるお酒も呉の地酒のみ。つまり呉の地酒を、呉の料理人達作った料理で楽しもうというお祭にしているのです。
参加店の多くは、前売りチケットによる予約制。値段は店によってまちまちですが、4~5千円くらいで、地酒が飲み放題になっているお店が多いようです。
『呉の地酒だけと言っても、呉の地酒ってそんなにあるの?』とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、平成15~17年にかけて順次行われた市町村の合併(呉市への編入)によって、呉市の範囲は広くなりました。それにより呉の「千福(せんぷく)」、仁方の「雨後の月(うごのつき)」に「宝剣(ほうけん)」、吉浦の「水龍(すいりゅう)」といった、昔からの呉市内の酒に加えて、安浦(旧・豊田郡)の「白鴻(はっこう)」や、音戸(旧・安芸郡)の「華鳩(はなはと)」、倉橋(旧・安芸郡)の「三谷春(みたにはる)」なども呉の地酒になったのです。
数ある参加店の中で、「呉酒まつり」初日の今日、出かけたのは「魚菜や(ぎょさいや)」です。前売りのチケットは5千円で、先着12名のみながら、「呉酒まつり」の日程が公開されたときには、もう満員御礼。まだ3回目の「呉酒まつり」ながら、ここ「魚菜や」の常連さんたちから、「今年も必ず来るから」と早々と参加表明があったのだそうです。ところが、先週になって急に来られなくなった人が出たため、ラッキーにも私も参加できるようになった次第。金曜日の仕事が終わるのを待ちわびるように、いそいそと出かけてきたのでした。
「魚菜や」は、もともと日本酒は呉の地酒しか置いていない店なのですが、今日は「千福」は《純米酒》と《特選黒松》の2種、「宝剣」は《純米吟醸・魂心の一滴》と《純米酒・限定超辛口》の2種、「雨後の月」は《純米吟醸うごの月》と《特別本醸造・櫂歌》の2種、「白鴻」は《特別本醸造・金ラベル》と《純米酒65》の2種、「華鳩」は《にごり酒》と《生もと・減農薬米》の2種という、合計10種類の地酒が飲み放題です。うれしいけど、そんなにたくさん飲めるかなあ!?
料理も、空腹に染み込むような熱々の芋スープから始まって、八寸(前菜)には、芋のくき、煮魚、小芋の柚みそ、玉子焼、カキの辛子漬、ナスの漬物が盛られています。奥の小鉢にはワケギのぬたです。
最初の1杯は生ビール(サッポロ)で喉を潤すと、すぐに地酒に切り換えて、まずいただいたのは仁方の「宝剣」です。呉の地酒は、それぞれ個性的な味わいなのがおもしろい。「宝剣」は、呉の地酒の中ではもっともスッキリとしていて、銘酒居酒屋などでも好まれるタイプの都会風(?)の味わいが特徴だろうと思っています。
とそこへ、入口引き戸がガラリと開いて入ってこられたのは「雨後の月」でおなじみの相原酒造さんです。「呉酒まつり」では、みんなが飲んでる酒場に、それぞれの蔵元さんがお酒の説明や、新商品の紹介をしに回ってきてくれるのです。
「雨後の月」は、呉の地酒の中ではもっともフルーティで、女性にも好まれるタイプ。さっそく持参された大吟醸酒をいただくと、当然のことながら、普段いただいている「雨後の月」よりもより洗練されたフルーティさが、ものすごい。こんな「雨後の月」もあるんですねえ。
「これはうまいっ!」と飲んでるところへ、宝剣酒造さんが入ってこられてバトンタッチ。入れ替わりに、相原酒造さんは次のお店へと向かわれます。
「雨後の月」と「宝剣」とは、300メートルくらいしか離れていない、ご近所同士の酒造会社なんだそうです。今日、宝剣酒造さんが持ってきてくれたのは、この「呉酒まつり」専用に仕込んだという、非売品の大吟醸酒。一升瓶にはラベルも貼られていません。ックゥ~ッ。これはうまいっ。もともと呉の地酒のなかでも、もっともスッキリとした味わいの「宝剣」ですが、この大吟醸酒はその透明なスッキリ感が突き抜けています。こんなにおいしい「宝剣」の唯一の欠点は、生産量が少なくて手に入りにくいこと。呉市内でも何軒かの酒屋さんにしか置いていないんだそうです。
料理は刺身代わりに、ヒラメとタイのレモン漬け(カルパッチョぽい)が出され、アン肝も登場です。
続いて入ってこられたのは安浦の「白鴻」を造っている盛川酒造さん。ここで飲み物も「白鴻」の燗酒に切り換えます。このお酒は冷たくして飲んでも、燗をつけて飲んでもおいしい、しっかりとしたボディが特徴です。盛川酒造さんが持ってきてくれたのは、「白鴻」の梅酒です。
店内では、毎年恒例という三味線の演奏もされていて、やわらかい和の音色が耳に心地よい。
盛川酒造さんの次にいらっしゃったのは、音戸の「華鳩」を造る榎酒造さん。にごり酒なのに、スッキリとした味わいの「華鳩・にごり酒」のほか、珍しい貴醸酒(きじょうしゅ)も持ってきてくれました。「華鳩」は魚介類にとてもよく合うお酒で、「千福」と同様に、ごくごく普通のお酒として出回っているので、魚と合わせてグイグイといただくのに最適です。私はこの「華鳩」を、燗をつけて飲むのが好きなんですよねぇ。
料理のほうは、イカとほうれん草のゴマ和え、酒盗から、イチジクと松茸の天ぷらへ。
続いてサバ寿司が出されたのですが、これがまた締めのご飯というよりも、立派なつまみ。お酒が進んでしまいます。
デザート代わりにアイスクリームが出され、先ほどの「華鳩」の貴醸酒をかけていただいて、「魚菜や」での「呉酒まつり」を終えたのでした。
この形式の酒まつりもおもしろいなぁ。じっくりと腰をすえて、たっぷり飲めるのがいいですね。明日も楽しみだ。

八寸とぬた(左上) / 三味線の演奏 / 芋のスープ

ヒラメとタイのレモン漬け / 宝剣酒造 / アン肝

盛川酒造 / イカとほうれん草のゴマ和え、酒盗 / 榎酒造

イチジクと松茸の天ぷら / サバ寿司 / アイスクリームの貴醸酒かけ
・店情報 (前回)
《平成22(2010)年10月29日(金)の記録》
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