晩酌セットで軽く一献 … 酒肴旬菜「味庵くれ(あじあんくれ)」(呉)
何千人もの工員さんが働く造船所の近くには、仕事が終わるのを待ち構えるように酒場が軒を連ねていることが多いのですが、かつて戦艦大和を建造した呉の造船所の近くには酒場がありません。
このあたりには、呉駅に近い側から海上自衛隊呉教育隊、入船山公園、海上自衛隊呉地方総監部、造船所(IHIマリンユナイテッド)、海上自衛隊潜水隊、製鉄所(淀川製鋼所、日新製鋼)と並んでいますが、戦前はすべてが海軍という、ひとつの組織だったのです。
現在、めがね橋のバス停があるところ。ちょうどJR呉線の高架があるところが、海軍鎮守府の入口で、そこから先はすべて海軍の敷地だったんだそうです。
ひとつの組織が持っている、大きな敷地の中なので、当然、その敷地内に勝手に酒場を作ったりすることはできません。
そこで、その敷地を出た先の本通(ほんどおり)や中通(なかどおり)に酒場街が形成されてきました。現在は別の地名になっていますが、かつての本通十三丁目には遊郭もずらりと並び、それはそれはにぎわっていたんだそうです。
そんなような経緯で、造船所の近くには酒場がなく、今もみなさん飲み会ともなると、タクシーに分乗して、本通や中通へと繰り出していくのでした。
年に何度かの飲み会のときはそれでいいとして、気になるのは呑ん兵衛たちの毎日の飲み場所です。呑ん兵衛はみんな、チマチマとでもいいので毎日飲みたいもの。それには職場の近くや、乗換駅の近くの酒場が重要です。
その酒場では、特別おいしい料理や、特別おいしい酒が出される必要はなくて、毎日食べても飽きない料理や、ごく自然に毎日飲めるお酒が、毎日でも飲める安い価格で提供されれば、それでいい。
呉の呑ん兵衛たちは、どこで毎日のように飲んでるんだろうか?
そう思って探していたら、先日、同期入社のH君から、「JRを利用する人たちは、呉駅の1階にある『味庵くれ』でちょっと飲んで帰ったりしてるみたいだよ」という情報をもらいました。
さっそく出かけていって、みんながよく注文するという晩酌セット(980円)を注文します。
晩酌セットは、生ビール(中)・日本酒(小)・焼酎・酎ハイのいずれかと、日替わり料理4品がついて980円。飲み物は燗酒を選ぶと、すぐに「千福」(本醸造・精撰辛口)の徳利(とっくり)と猪口(ちょこ)が運ばれてきます。
料理の1品目は小イワシの天ぷら。紙を敷いた平皿の上に8尾ほどの小イワシ天が盛られ、それとは別に天つゆの小鉢が出されます。
小イワシをはじめとする瀬戸内海の小魚の濃厚な味わいと、「千福」に代表される、割りと淡白な感じの日本酒の相性は絶妙。瀬戸内海の魚介類をおいしくいただくために、この酒のこの味わいがあるのに違いないと、こっち(呉)に来てから思うようになりました。
残る3品の料理は、三つに仕切られた長い箱型の器に盛られて、いっぺんに出てきました。ひとつはサーモンの刺身(2切れ)で、もうひとつは、ひざ軟骨の唐揚げ。そして大根やキュウリ、ニンジンなどの鱠(なます)です。
まわりを見ると、女性のひとり客でも、この晩酌セットを注文してビールを飲んでいたりします。小上がりの座敷席では、会社帰りのグループ客がワイワイと盛りあがっている。基本的に食事処なので、食事だけの利用の人も半分くらいいます。
そんなに安くはないものの、駅に近いという利点は非常に大きいようです。電車を待つ間などに、ちょうどいい飲み場所なんでしょうね。
うどんやそばの立ち食いコーナーも隣接されていて、そちらでも飲み物やつまみも出されます。そこでササッと立ち飲んで飲み食いして帰るのが、一番安上がりかもしれません。今度は立ち食いコーナーに行ってみなきゃね。
お勘定は980円でした。ごちそうさま。
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