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寝るのがもったいない … スタンド「シロクマ(しろくま)」(呉)

「シロクマ」


 屋台の「一二三」を出たところで午後10時半。呉駅から広島方面行きの終電車は午後11時過ぎと早いのですが、今日はオオカワさんもタクシー帰りでOKとのこと。「それじゃ、もう1軒」と、オーセンティックバー「アンカー」を目指して、れんが通りと本通りの間にある飲み屋通りへと戻ったところで、なんと正面から歩いてくるのは、先ほど「どん底」でお会いした、横浜の小野さんではありませんか。

 「やぁやぁ」と再合流し、進路変更して「シロクマ」へと向かいます。

 「シロクマ」は、現存するスタンドバーの中では、呉で2番目に古い店。「どん底」から遅れること4年、昭和32(1957)年に創業しました。

 日本の高度成長期は昭和30(1955)年に始まり、経済企画庁の経済白書「日本経済の成長と近代化」の結びに、「もはや戦後ではない」と記述されたのが昭和31(1956)年のこと。そういう右肩上がりの景気の中で、「シロクマ」も開店したのでした。

 「シロクマ」の創業店主(初代マスター)は昭和5(1930)年生まれ。店を創業したときは27歳。その息子さんである現在の店主・川西清司(かわにし・きよし)さんは昭和25(1950)年生まれで、「シロクマ」創業時には、なんとまだ7歳だったのでした。

 戦後の復興の中にあった呉は、オーストラリアやイギリスからの進駐軍の兵隊さんたちも多く、同じ洋酒の店でも、女性がとなりに座って接客してくれるような“カフェ”が人気があったんだそうです。とはいうものの、多くの人たちはまだまだ食べるものにも困るような状況の中、スタンドバーが生まれてきました。

「カウンターの中で働いてもらったら、まかないが付いてて食べるものには困りませんよ。カウンターから出て、となりに座ることはありません。ビールくらいは注いであげてもいいけれど、タバコに火をつける必要まではありません。」

 というのがスタンドバーのスタンス。この仕組みに多くの女性が共鳴してくれたことや、カウンター席のみの小さな店舗で開業OKという気安さも手伝って、その後、スタンドバーが続々と増えていったんだそうです。

 呉市スタンドバー組合ができたのも、昭和30年頃。日本人向けに洋酒を売る店がまだまだ少ない中、みんなが共同で警察に対応したり、保健所に対応したりすることが目的だったのだそうです。

「組合のみんなで野球のチームを作ったりしてたんですよ。呉市の大会のときには、みんなでユニフォームを新調して試合に臨んだんだけど、みんな明け方まで飲んで、そのまま試合に出てるんで、すっかり酔っ払い。1塁から3塁に向かって走ったりと、もうムチャクチャやったねぇ。毎日、毎日が楽しくてしょうがなくて、寝てるのがもったいないような時期だったんだそうな」

 銀行にしてもコンピュータなんかないので、大晦日(おおみそか)も遅くまで締めの作業をしていて、紅白歌合戦が終わる頃に、やっと仕事も終わって飲みに出られるような状態。だから、「シロクマ」をはじめとする多くの飲み屋も、大晦日だって、いや大晦日だからこそ普段どおりに営業して、休みは元日の1日だけだったんだそうです。

 そんなスタンドバー「シロクマ」の大きな特徴は、カウンターの中にいるマスターも女性陣も、みんな立ったまま接客をしてくれること。オーセンティックバーでは当たり前のこのスタイル。昔は呉のスタンドバーもすべてそうだったんだそうですが、カラオケ全盛の時代に入った頃から、カウンターの中の女性も座るようになってきて、最近できた新しいスタンドバーは、最初からカウンターの中の女性も座るのが標準という造りになっています。

 ちなみに最老舗「どん底」も、カウンターの中は立つスタイルだったそうなのですが、女将さんが腰を悪くされてから、カウンターの中の椅子に「ごめんなさいね」と座るようになったんだそうです。

 キープボトルの角瓶をソーダ割りでいただきつつ、カラオケもちびちびと歌いつつ、2時間ほどの滞在。途中でボトルがなくなったので、新しいボトルを入れて、今日のお勘定は3人で22,000円(一人当たり7,300円強)でした。どうもごちそうさま。

店情報前回

《平成23(2011)年2月4日(金)の記録》

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コメント

仙台には、東北一大きい国分町という繁華街がありますが、その虎屋横丁を西の方へ向かって歩くと『門』という、老舗のバーがあります。ぜひおいでになってみてください。

投稿: りゅうちゃん | 2011.05.24 04:04

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受信: 2012.03.17 09:18

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