名残の天然ガキを食す … おでん「魚菜や(ぎょさいや)」(呉)ほか
「今年は寒いからか、まだ岩ガキがあるんよ」と女将・小栗さん。
「やった! 先週くらいで終わるって聞いてたから、今シーズン最後の岩ガキを食べそこなったかと思ってました。」
ということで生ビールと、その岩ガキを酢の物で、そしてもう一品、刺身と天ぷらが選べる地ダコを天ぷらで注文すると、すぐに出される生ビールとともに、まずはお通しの「おからサラダ」です。
この地方で岩ガキというのは、磯の岩場で採れる天然のカキのこと。日本海沿岸で採れる大粒の夏ガキとはまったく別ものです。
この岩ガキ、エサが少ないからか養殖物と比べると、かなり小粒なのですが、肉も味わいも引き締まっていて、それはそれは美味しいのです。通常は12月ごろに出まわって、1月になるともうあまり採れなくなって、2月にはもう終了といった感じなのですが、今年は3月に入ってもまだ残ってたんですねぇ。
その岩ガキは、注文を受けてから大根おろしで洗って、酢の物にしてくれます。おぉ、これはまた、3月なのに粒も大きいですねぇ。いかにも“海のミルク”といった感じの、軽くえぐみのある味わいは、天然ものならでは。この岩ガキに合わせて出してもらった「華鳩(はなはと)生もと」の燗酒にもよく合います。
そして地ダコ天。この店の天ぷらは、カウンターの中、客の目の前で揚げて出してくれるので、できたての熱々を食べることができるのです。一緒に出された藻塩(もしお)をちょっとつけていただくと、地ダコの自然な甘みがすばらしい。これまた燗酒によく合うなあ。
店内にいる客は、常連の老夫婦と、60代くらいの男性ひとり客、そして私の4人。ここ「魚菜や」では、素材を厳選した和風のお惣菜をリーズナブルに楽しむことができるので、長年にわたって通い続けるお客さんが多いのです。
毎日、手書きされるお品書き。今日は刺身やお惣菜として、地ダコ刺、地ダコ天、カキ天、カキフライ、白子、おからサラダ、煮さば、うるめいわし、わけぎぬた、たかなの煮物、沖縄のもずく、ぎんなん、が。そして「おでん」として、アキレス、ロールキャベツ、はんぺん、ごぼう天、じゃが芋、玉子、大根、こんにゃく、こんぶ、厚あげ、がんもどき、がんす、ウインナー、しらたき、がそれぞれ書き出されています。
おでんは、関東風の黒い甘辛いだしと、関西風の白いだしの両方があって、好みのだしで煮込まれたおでんを選ぶことができます。東京暮らしの経験もある女将なので、「アキレス(牛スジ)」や「がんす」などのこっちの材料に加えて、「はんぺん」なんかも入っているところが面白いですね。さすがに「ちくわぶ」や「(魚の)すじ」はありません。
「華鳩」に続いては、「千福(せんぷく)特撰黒松」を燗でもらって、つまみには季節の「分葱(わけぎ)ぬた」を大皿から取り分けてもらいます。春近し、といった感じですね。
2時間ほどくつろいで、今日のお勘定は3,800円でした。どうもごちそうさま。
「魚菜や」を出て、たいていの場合はここから二次会に向かうのですが、今日は週のはじめの月曜日。しかも年度末で飲み会の頻度もぐんと高くなっているので、今日のところはサクッと〆て帰りますか。
そんなわけで向かったのは、そば処「平原(ひらはら)」です。
“そば処”といいつつも、西日本エリアではやっぱり“うどん”が大人気。ここ「平原」でも、ほぼすべてのメニューで、“うどん”も“そば”も選べるようになっていて、しかも“うどん”も“そば”も自家製手打ち麺。さらに値段も安いときているので、午前11時から午後9時まで(正月三が日以外、無休)の営業時間中、いつも大勢のお客でにぎわっているのです。
今宵の〆に選んだ一品は「肉うどん」(400円)。うどんに別鍋で煮た牛肉、ネギ、そして玉ネギの具がトッピングされます。どぎつくない自然な甘みが美味いですねぇ! この自然な甘みは、玉ねぎから出ているんですね。この甘味なら、生卵を加えて食べてもおいしいかもしれません。
そこへ、ふらりと入ってきたのは、単身赴任中の会社の同僚。「天ざるそばと生ビールのセット」(980円)を注文して、生ビールを飲み始めます。「晩酌付きの夕食が、千円以内で楽しめるので、ここにはよく来るんですよ」とのこと。
この店には、彼が注文した「天ざるそばorうどんと、生ビールor千福のセット」(980円)の他に、「鍋焼きうどんと、生ビールor千福のセット」(900円)もあって、ちょいと一杯飲みながら、食事を済ませて帰るにもちょうどよくて、我われ単身赴任族のみならず、呉への出張族もよく利用しているお店なのでした。
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コメント
いつも美味しそうな写真が並んでいます。でもこれだけ美味しいものが、この値段で食べられるのは最高ですよね。仙台で食べたとしても、この値段では食べることができません。単身赴任族御用達というのも納得できますね。
投稿: おおぽん | 2012.03.27 10:00
呉をはじめとする瀬戸内海の漁港近くの町では、魚介類はすごく安く手に入るようです。
夏場のハモなども、京阪神方面と比べると、うんと安いと聞きました。
その魚介類に、日本酒が爆発的に合うので、2年前に呉に来て以来、日本酒を飲む機会がものすごく増えています。
投稿: 浜田信郎 | 2012.04.02 21:50