サザエ香りバター焼き … 料理屋「灘(なだ)」(呉)
仕事関係の飲み会の二次会を終えたのは午後11時過ぎ。タクシーで帰途につくみなさんと別れ、ここから徒歩5分ほどの単身赴任社宅に向かいつつ、最後にもう1軒と立ち寄ったのは、料理屋「灘」です。
「灘」はなんと、午前2時までの営業(午前1時半ラストオーダー)なので、この時間でもまったく大丈夫。もっと昔から「灘」を知っていたら、呉での食生活もずいぶん豊かになっただろうなぁ。
東京から出張で来ていたころは、夜10時を過ぎて呉に到着すると、普通に食事ができるみせが開いていなくて、コンビニで弁当を買ったりするしかなくて、困ったことを思い出します。“とり屋”などの1次会用のお店のほとんどは10時には閉店しちゃいますもんねぇ。
「こんばんは」と入った店内には、先客は男性ふたり客のみ。カウンター席の一番手前側に座っています。私はカウンターの一番奥の席に座り、「剣菱」の燗酒と、サザエ香りバター焼きを注文すると、お通しには小イワシの南蛮漬けが出されます。
小イワシを南蛮漬けで食べるのは初めてだけど、これがまたおいしいこと! 小イワシって、こういう調理法も合うんですね。
ちょうど小イワシの南蛮漬けを食べ終える頃合いで、サザエ香りバター焼きも出てきました。サザエ香りバター焼きは、フランス料理のエスカルゴなのですが、材料の貝がカタツムリではなくて、サザエなのです。
弾力感のあるサザエの身と、エスカルゴバターソースの組み合わせがどんなものかと興味津々だったのですが、まずひと切れ食べてみると、これがとてもよく合っています。カタツムリのフニャッとたよりない食感よりも、こっちのほうがはるかにいいんじゃないか?! 肝のほろ苦い部分まで、エスカルゴソースで美味しくいただくことができます。こりゃいいなあ。
うれしいことに、このサザエ香りバター焼きには、ガーリックトーストが2切れ添えられていて、サザエの殻の中に残っているエスカルゴバターソースも完食することができるようになっているのです。
「灘」の店主・灘佳憲(なだ・よしのり)さんは、昭和44(1969)年5月に、呉の氷屋の息子さんとして誕生。高校まで呉で過ごし、「手に職をつけるのがいい」という親のすすめに従って、大阪の辻調理師専門学校に進学しました。卒業と同時に、先生の紹介で大阪の割烹料理店で修業。この割烹料理店の大将、つまり灘さんにとっては師匠にあたる方が、まだ年齢も若くて、和風割烹ながらも洋風の料理もどんどん取り入れていただんだそうです。
このサザエ香りバター焼きも、大阪の師匠ゆずりの創作料理。しかしながら、ガーリックソースを添えたのは、灘さんの発想です。
「最初はパンは付けてなかったんですけど、お客さんの多くが貝殻を口につけてソースを飲もうとされるので、それならばとガーリックトーストもお付けするようにしたんですよ」
この大阪の師匠の店が、営業時間が午前2時までだったんだそうで、その師匠に「何時まで開けてるんだ」と聞かれて、「2時までです」としか答えようがなくて、現在の営業時間になったんだそうです。
「大阪は大都会なので、深夜でもお客さんが多そうですが、呉で2時までだと大変じゃないんですか?」と聞いてみたところ、
「遅い時間帯になると、手術なんかで遅くなったお医者さんが食事をとりに来てくださったり、自分の店の営業を終えた料理人の方が来てくださったりするんです」とのこと。
ここ「灘」も、「魚菜や」や「一つ家」などと同様に、メニューに金額表記がないんだけど、それほど高くないお店。今回も、1時間ほどの間に、燗酒1本とお通しにサザエ香りバター焼きをいただいて、お勘定は1,620円でした。どうもごちそうさま。
料理屋「灘」 / お通し(小イワシ南蛮漬け)と燗酒 / サザエ香りバター焼き
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コメント
なるほど、だからお店の名前が『灘』なのですね!
投稿: おおぽん | 2012.03.26 20:15
そうなんですよ。
「なぜ『灘』という店名にしたんですか?」
と伺ったら、
「私の名前が“灘”だからです」
って教えてくれたのでした。
投稿: 浜田信郎 | 2012.03.26 21:34