サッと飲みスッと帰る … 立ち飲み「鈴傳(すずでん)」(四ツ谷)
ものすごく久しぶり(4年半ぶり)に四ツ谷の「スタンディングルーム鈴傳」にやってきました。
ここ「鈴傳」は、嘉永3(1850)年創業の老舗の酒屋。その酒屋の一角で立ち飲みができるようになったのは昭和24(1949)年のこと。戦後間もないその当時は、大蔵省や東京陸運局などが四ツ谷にあって、ちょっとお酒を飲むことができる場がにぎわっていたんだそうです。
昭和31(1956)年に大蔵省が霞が関に移転した際には、「鈴傳」も虎ノ門に支店を出したほど、両者の関係は濃厚だったようです。(虎ノ門の「鈴傳」は、残念ながら平成20(2008)年4月末をもって閉店いたしました。)
四ツ谷の「鈴傳」の立ち飲みスペースである「スタンディングルーム鈴傳」は、現在も多くの酔客でにぎわっています。
酒屋の立ち飲みというと、たいていは酒屋の中に積み上げたビールケースを簡易テーブル代わりにして、ビールやつまみ(乾きものや缶詰など調理が要らないもの)を酒屋で購入するなり、その場でそれを飲み食いしちゃう、といった、いわゆる角打ち(かくうち)スタイルの店が多いのですが、ここ「鈴傳」は、酒屋スペースと、立ち飲みスペースが完全に分離していて、立ち飲みスペースのほうは、かなりしっかりとした、本格的な立ち飲み屋になっているのが大きな特徴です。
ど~んと立派な老舗「鈴傳」の店構え。正面から見えているほとんどの部分は酒屋スペースです。その立派な店舗に向かって一番左端にある小さな扉。その小さな扉が「スタンディングルーム鈴傳」への入口です。
扉を開くと、店の奥に向かって真っすぐに伸びる細い通路。その通路の左手にも作り付けの立ち飲みテーブルがずらりと並んでいて、にぎわう時間帯にやってくると、そこも客であふれているのですが、午後5時半のこの時間帯は、さすがにまだガラ~ンとした、ただの通路です。
通路を抜けると、ちょうどアルファベットのPの字型に、右奥に向かってパッと空間が広がって、そこがメインの立ち飲みコーナーです。右手には立ち飲みカウンターがΓ型に伸びていて、左手から奥にかけての壁際には4~6人くらい立てる立ち飲みテーブルが作り付けてあります。各テーブルの間には、ちょうど腰の高さくらいの金属製のバーがあって、となりのテーブルスペースを侵犯できないようになっているのがすばらしい。
カウンターの一番手前のところにレジがあって、注文と支払いはそこでする仕組み。先客の一人が、ちょうどそのレジのところでお酒の出を待っているところだったので、その後ろに並んで順番を待ちます。
「なんにしますか?」
自分の順番になると、レジのおばさん(麗子さん)がそう聞いてくれます。
「小瓶のビール(370円)と刺身をください」
「はい。刺身は盛り合せ(400円)ますね」
「ええ、そうしてください」
すぐに後ろの冷蔵庫からアサヒスーパードライの小瓶が出され、ポンッと栓を抜いて、グラスと一緒に出してくれます。そのグラスを、ビール瓶の上に逆さにかぶせて待っていると、カウンター上の大皿に並ぶ刺身から、マグロ赤身と〆鯖、タコを小皿に盛り分けてくれます。そして、それとは別に小さな醤油皿も出してくれます。
「770円です」と麗子さん。その場で支払いを済ませ、左奥の二人用立ち飲みテーブルへと移ることにしますが、ありゃ、これは困ったぞ。ビール(グラスつき)に、刺身の皿に、醤油用の小皿。両手しかないのに、持たないといけないものが3つある。2回に分けて運んでもいいんだけど、それも面倒なので、なんとか片手で刺身皿と醤油皿をうまく持ち、残る片手でビール瓶をもって、立ち飲みテーブルへ。
ひとりなのでカウンター席の空いている部分に入ってもいいのですが、ここのカウンター席は、特に今のように早い時間帯は常連さん率がものすごく高い。ほとんどのみなさんが毎日通っているのか、いい感じに(?)酒焼けして、まっ黒い顔の人たちが並んでいるのです。
そんなわけで、私はこっち側のテーブル席にやってきたような次第ですが、となりの二人用テーブルには、30代くらいの女性ひとり客。お新香をつまみに冷酒をキューッと飲んで、レジのところに冷酒のおかわりをもらいに行っています。う~む。ひとり立ち飲みが板についてますねぇ。
私も小瓶のビールをグイッと飲み干して、レジのところに瓶とグラスを返しに行くとともに、千葉は勝浦の「腰古井(こしごい)純米酒」(400円)を燗でもらいます。刺身にはやっぱり燗酒が合いますなあ!
そうこうしているうちにも、お客はどんどん入って来て、Pの字の広い部分は、午後6時ごろにはほぼいっぱい。通路の部分にも客が入りはじめました。
それじゃ私はこれくらいにしておきますか。サッと飲んで、スッと帰れるのが立ち飲みのいいところ。空いたお皿とコップを返して、40分ほどの滞在。今日の支払総額は1,170円でした。どうもごちそうさま。
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