連載で書けてないこと … 炭焼「鳥平(とりへい)」(呉)
月刊「くれえばん」の取材で、昭和47(1972)年に呉初の関東風炭火焼き鳥の店、「鳥平」にやってきました。カウンター13席+座敷38席の店内を、濱井正記さん(大将)・幸恵さん(女将)夫妻と、息子の俊行さん(二代目)に、アルバイトの女性1~2名が加わって切り盛りしています。
ここでは、現在発売中の「くれえばん2013年1月号」で、字数の関係でご紹介することができなかった内容について、ご紹介したいと思います。「くれえばん」の記事と合わせてお読みいただけると完璧な情報になります。
まずは定番のお通しである漬物とじゃこおろし(二つで315円)。漬物(なす、きゅうり、大根)は大正14年創業の老舗・中元本店のもの、じゃこおろしには音戸ちりめんを使っています。これで千福(上撰1合450円)を飲めば、すべて呉のものということですね。
鶏は、特に銘柄指定はないそうですが、九州産のフレッシュ(=冷凍ではない)もの。
そして「鳥平」ならではのものが、大将が独自に考案したという窯(かま)。これは炭火焼きの焼き台を、耐火煉瓦で囲って、専用の吸排気設備を付けたもの。夕方3時ごろに火を入れて、営業開始までに窯の内部全体が火傷しそうなほどカンカンにあったまったら、あとは炭をちょっとずつ継ぎ足し継ぎ足ししていくので大丈夫なんだそうです。
この焼き台には、ずらりと並べて串が17~18本くらい、手羽先だと8本くらいを並べることができます。きっちりと細部まで目配りしながら焼き上げられる本数です。
炭は、以前は県北の布野村(現在は三次市布野町)で焼いてもらっていたのですが、焼き手がいなくなって、現在はやむなく市販のものを使っているそうです。昔に比べたら、市販の炭も少しは使えるようになってきたのですが、やっぱり違うそうで、大将は満足がいっていません。焼いてくれるとこがあったらと思って探しているんだけど、まだ見当たらないんだそうです。
そしてその焼き台で、大将がパタパタとあおいでいるうちわ。このうちわは、火をおこしたり、火力を強くするためにあるわけではありません。焼き台で焼き鳥を焼いていると、油が落ちて煙が上がる。これが焼き鳥にあたると真っ黒になってしまう。そうならないように、うちわであおいで、その煙を逃がしているのです。
このうちわも、竹の芯に和紙をはった、昔ながらの大きなものじゃないとうまくいかないらしいのですが、これも作るところが減ってきている。なんとか香川県のうちわ製造所を見つけて、そこに特注して作ってもらったのが今使っているうちわです。
基本的には大将が焼き台を守り、二代目がカウンターの中で店全体に目を光らせ、女将さんが奥の厨房にいて、カウンターの外をアルバイトの女性が担当。
できたて熱々の焼き鳥は、大将が窯の上の皿に置き、それを二代目がカウンターの客に届けます。座敷席の客には、二代目がカウンター越しに外の女性に渡し、女性陣が席まで届けます。
お客さんの食べる状況を見ながら、二代目から大将に「ゆっくりめに」などと声が飛びます。「ゆっくりめに」というのは、お客さんの食べるペースに合わせながら、できるだけタイミングよく焼き鳥が出せるようにという配慮なのです。
一口鍋(1,050円)は、冬場のみ出される一人用の鳥鍋で、ポン酢醤油でいただきます。メニューには載っていませんが、鍋を食べ終えると、プラス450円(=お茶漬けと同じ値段)で雑炊にしてもらうことができます。
食事が終わったら、最後に、お茶代わりに鶏スープがサービスされるのですが、この鶏スープ、仕込みは朝の8時半ごろから始まり、鶏ガラを熱湯で一気にあくぬきして、ゆすいで改めて水を入れて、いろいろと野菜を加えてまた煮込む。開店前にそれをこして、やっと鶏スープができあがります。スープだけでも5~6時間かかっているのです。
最後の最後に、女性客だけへのサービスで、レモン・シャーベットを出してくれます。
この店の焼き鳥は、日本酒とぴったりと合って、今日は改めて「焼き鳥は和食なんだなぁ」ということを再認識することができました。
お通しの漬物とじゃこおろし / 鳥平コース12本 / この7本を加えると全19種
季節の飲み比べセット / 冷蔵庫に並ぶ地酒やワイン / カウンターには焼酎
窯内部の焼き台 / 一口鍋 / きじ丼は〆の一品として大人気
雑炊は鍋のあとのみ可 / 鶏スープ / 女性にはレモン・シャーベットも
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コメント
いつもながら、地元も知らないディープなレポ、ありがとうございます。
年明け早々、行きたくなりました。
鳥平の思い出。30年ほど前、前の店に初入店。小さな店なのに、煉瓦の焼き台がやけに大きくて、呉にこんな鳥屋があるのかと、思った次第。
焼酎は、球磨焼酎「六調子」のみ。米焼酎とは知らず、クセのあるサケだと思いました。すべては、若造の思い出で…
呉では、「とり屋」の陰に隠れがちですが、標準語の「焼鳥屋・串焼屋」のいい店が、鳥平以外に、けっこうあります。
堺川沿い「鶏気舎(けいきや)」。PANビルの溶岩焼き、「地鶏食堂」。博多串焼「びんちょうや」。スタイリッシュな「鳥長」。広では春駒近くの「海ざん」などと、鳥平や呉のとり屋ほどの歴史はないですが、起業の若い店主が頑張っています。
今年も呉の話題を全国に発信ありがとうございました。良いお年を。
投稿: 遊星ギアのカズ | 2012.12.31 22:00