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営業再開の美酒に酔う … 「武蔵屋(むさしや)」(桜木町)

4人卓を独占


 おばちゃんがインフルエンザにかかってしまい、1ヶ月近くお休みしていた「武蔵屋」。今日から営業を再開いたしました。

 こういうニュースは、野毛の呑兵衛(のんべえ)たちの間を、あっという間に駆けめぐり、私も仕事を終えてから「武蔵屋」のある野毛(のげ)へと向かいます。

 店に着いたのは午後7時過ぎ。再開当日にもかかわらず、店は大にぎわいで、もしかすると入れないかと一瞬心配したほど。かろうじて空いていた4人卓の1席に相席させてもらうことができました。

 この店は、創業店主である先代の木村銀蔵さんが平成5(1993)年に亡くなった後、ふたりの娘さん(喜久代さん、富久子さん)がその跡を継いで、今日に至っています。

 常連さんたちは、お姉さん(喜久代さん)のことを「おばちゃん」、妹さん(富久子さん)のことを「小さいおばちゃん」と呼んで親しんできました。残念ながら、小さいおばちゃんは膝(ひざ)の調子が悪くて、立ち仕事ができなくなったため、今はお休み中。現在は、おばちゃんこと、女将の喜久代さんが、店を手伝ってくれる6人ほどの若者と一緒に、火・水・金の週に3日間、店を切り盛りしている状態です。

 そのおばちゃんも、今年で91歳。小さいおばちゃんは2歳違いなので89歳かな。常々、「細くでもいいから、長くやっていきたいと思っておりますのよ」とおっしゃっているとおり、ご病気のときは無理をされずに休み、猛暑の夏も数ヶ月間にわたる長期休店にしながら、今もずっと営業を続けていってくれています。

 この店の最大の特長は、飲み物は日本酒3杯だけと決まっていて、料理もその3杯を飲む間に定番の5品が出されるので、客はほぼ何も考えずに、座っていればいいというところにあります。

 私は「酒場浴」といって、銭湯や温泉にのぉ~んびりと浸(つ)かっているような感じで、酒場にどっぷりと浸かっているのが好きなのです。だから本当は何も考えたくない。

 しかしながら、普通の酒場に行くとどうしても、

「酒はどれにしようかな。料理はどれが合いそうかな」

「もうちょっと食べたいけど、次は何をたのもうか」

「もう1杯飲もうか。それともこれでやめて次へ向かおうか」

 なんてことを考えて、注文したりしないといけない。

 ところが「武蔵屋」の場合は、これすら考える必要はないんですね。店に入って、最初にビールでのどを潤したい気分であれば、

「最初は小瓶のビールでお願いします」

 とだけ言っておけばいい。あとは黙っていても日本酒3杯と5品の料理がやってくるので、それこそボォ~ッと過ごしていればいいのです。これぞ究極の「酒場浴」ですねえ。

 同じテーブルにいた、私以外の3人(二人連れと、ひとり客)は、午後8時過ぎにそれぞれ席を立ち、気がつけば4人掛けのテーブルを、私ひとりが独占という贅沢な状況。

 2卓ならんでいる4人掛けテーブルのもう1卓も同じような状況で、同席していた3人が席を立って、今、ひとりでテーブルを独占しているのは、「野毛ハイボール」の店主・ハルさんです。

 ハルさん自身も、以前から「武蔵屋」の大の常連さんで、ご自身の店「野毛ハイボール」を持たれたときも、週に1回は「武蔵屋」に顔を出せるようにということで、当初は火曜日を定休日にしていたほど。現在は、手伝ってくれる女性店員さんも入ったので、定休日はなくなった代わりに、ハルさん自身は、相変わらず火曜日に休みを取って(お店は女性店員さんに任せて)、「武蔵屋」にやってくるのでした。

 閉店時刻の午後9時前に「武蔵屋」を出て(ビール小瓶500円+3杯セット2200円で、お勘定は2700円)、「ホッピー仙人」でホッピー(500円)を1杯いただいて帰宅したのでした。

 「武蔵屋」再開の美酒に酔った一夜でした。

店情報前回

《平成25(2013)年3月5日(火)の記録》

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受信: 2013.06.22 07:25

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