殻付きのおでんの玉子 … 酒房「北国(きたぐに)」(中野)
金曜日の夜は、横浜の単身赴任社宅から、都内の自宅に戻りつつ、途中下車して酒場に寄って帰るのが大きな楽しみになっています。
途中下車と言っても、横浜から東京への最短経路上で途中下車するわけではなくて、ちょっと遠回りしたりしながら、行きたい街、行きたい酒場に立ち寄ります。
今夜は中野駅で途中下車。南口側に出て、向かうは2年ぶりとなる「北国」です。
前回のブログ記事にも『2年ぶり』と書かれているので、なんだか2年ごとの訪問になっちゃってますねえ。女将さんや常連のみなさんはお元気なのでしょうか。
「こんばんは」
と入った午後9時の店内には先客は5人。8人ほど座れるL字カウンターに、均等割り付け状態で座っているところを、少しずつ奥に詰めあわせてくれて、私も一番手前側のL字短辺に座ることができました。
一番奥に座っているのは、この店にしては若い男性ひとり客。この店に来ると、私自身がもっとも若手であることが多いので、それより若いと『この店にしては若い』という状態になるのでした。
それ以外の4人は、以前からずっと、この店に来るたびによく見かける大常連さんたち。みなさん、それぞれひとり客としてやってきて、この店で勢ぞろいします。
酒場は「放課後の部室」のようなもんじゃないかと思うのです。昼間は、それぞれの学年の、それぞれのクラスにいる「同好の仲間」(=同じ部活動の部員)たちが、放課後になると同じ部室に集まって、楽しい時間を共有する。
その放課後の部室と同じような感じの酒場が多いんですね。ここ「北国」もそう。同じ中野の北口側にある「路傍」もそう。毎晩のように同じ常連さんたちがやってきます。
「いらっしゃい」と笑顔を見せてくれる女将さんは、今年で83歳のはず。お元気そうで安心しました。
キリンラガーの大瓶ビールを注文すると、お通しは野菜の盛り合わせ。ごぼう酢漬けや、ゆで卵(半分)、プチトマト1個、葉っぱ類などが、たっぷりと盛られています。
「こんなお通しを出したら、おでんをたのむ人なんていないだろうよ」
とカウンター中央部に陣取る大常連のTさん。
テレビもなく、音楽も流れていない、昔ながらの店ながら、常連さんたちの会話そのものが、一番いいつまみになります。
今日は奥から3番目ぐらいの席に座っている常連さんが痛風になった話や、三社祭神輿の話、江戸三大祭に浅草、深川が入ってない話など、言ってみればどうでもいい話が多いんだけど、それがまたいいのです。誰もが気軽に会話に参加できるし、ボォ〜ッと聞いてるだけでもいい。
ビールを飲み終えたところで、「八鶴」の燗酒に切り替え。
つまみにはTさんが「誰もたのまないのでは?」と心配していたおでんをもらいます。つみれと、ちくわぶ、玉子をもらうと、サービスで昆布も付けてくれました。
つみれはヒジキも入った練り物風で、玉子はなんと!殻付きで出してくれるのが「北国」の大きな特徴なんですよねえ。
女将は私のことを覚えてくれているようで、ときどきチラッと笑顔を見せてくれながら、もっぱら一番奥の一見のお客さんをフォローしてます。
常連さんたちはある程度ほっておいても、一見さんのことに気を配る。これが正しい酒場の姿なんだろうなと、改めて感心しました。だからこうして長くやってこれたんでしょうね。
「吉田類さんのテレビ番組を見て、この店のことを知ったんです」
と奥の一見さん。なるほど!この店もだいぶ前に「酒場放浪記」で紹介されましたもんねえ。
「八鶴」をもう1本おかわりして、ふと気がつけば、もうこの店の閉店時刻である午後10時。みんながお勘定をはじめたタイミングで、私もお勘定をお願いし(2,100円でした)、常連さんたちよりは早く店をあとにします。
「ごちそうさまでした。お先に失礼します」
と女将さん、常連さんたちにあいさつして引き戸を開けると、
「来週も来いよ!」
と声をかけてくれるTさん。最高にうれしい送り言葉ですねえ。今度は2年も間が空かないように来なきゃね。
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