飲んで食べて、2千円 … 定食「はまや食堂(はまやしょくどう)」(杉田)
「特別定食をオールで。ごはんは小で、あとからお願いします」
店に入るなり、大瓶ビール(キリンラガー、480円)を注文し、そのビールを持ってきてくれたところで、上のような料理の注文をしたのでした。
特別定食(980円)は、この店に3種類ある日替り定食のひとつで、基本的に主菜1品に、3品から2品が選べる副菜、そしてライスセット(ライス中+みそ汁)という組み合わせ。
普通に注文すると、すべてがそろってから、大きめのお盆に一式を載せて一気に出してくれます。しかしながら、ビールや酒を飲んでいる場合には、まずつまみとして副菜を出してくれて、その後、主菜とライスセットを出してくれます。
さらに冒頭の注文のように「ごはんは後から」とお願いしておくと、副菜から主菜とおかずだけを順番に出してくれて、ライスセットは「ごはんをお願いします」と声をかけたときに、はじめて出してくれるという、きわめて呑ん兵衛向けのコース料理になるのです。
私はこれを『大衆食堂のフルコース』と名付けて、毎週のように楽しんでいるのでした。
冒頭の注文で、「オールで」と注文しているのは、本来は3品から2品を選ぶ副菜を、「3品とも全部ください」ということで、3品の副菜のうち、単品価格がもっとも安い1品の値段が、特別定食の料金に加算されます。
「ごはんは小で」というのは、通常は中ライス(170円)が付いてくるライスセットを、「小ライス(150円)に変更してください」ということで、その差額、20円分が、特別定食の料金から引かれます。
今日の特別定食の主菜はトンカツ。選べる副菜は、小松菜のおひたし(200円)、しらすおろし(180円)、酢の物(180円)の3品なので、オールで180円プラス、小ライスで20円マイナスで、都合1140円のスペシャル特別定食となりました。
お通し(サービス)の枝豆をつまみ、テレビのニュースを見ながらビールを飲んでいるところへ、まず出てきたのはしらすおろし。追いかけるようにキュウリと若布の酢の物も出てきました。
すぐにでも燗酒をもらいたいような2品の料理の登場ですが、今日はこの時期にしてはものすごく暑い一日だったので、急に燗酒という気持ちにはなりにくい。むしろ冷たいビールと、冷たい料理2品の清涼感がうれしいなあ。
この店の飲み物は、ビールが大瓶(キリンラガー、480円)と中瓶(キリンラガーまたはアサヒスーパードライ、430円)。日本酒(秋田の「爛漫」)が大(500円)か小(280円)ととてもシンプル。焼酎類は置いていません。
この店で、特別定食をつまみに飲むと、大瓶ビール1本だけではちょっと飲み足りないので、もう1本ビールを追加するか、日本酒の小を追加するかすることが多い。どっちかというと日本酒のほうが好きなんだけど、今日は主菜がトンカツなので、もう1本、ビールをもらうのがいいのかなあ。
なんてことを考えていたところへ、女将さんが「特別定食のトンカツです。おひたしは後で、ごはんと一緒にお出ししましょうね」と、先にトンカツを持ってきてくれました。
ビールがまだ残っているうちに、先にトンカツを出してくれたのかなあ。もしそうだとすると、ものすごい配慮だ!
揚げたて熱々のトンカツに、ソースをちょっと回しかけてサクッといただくと、豚肉の脂身の甘みがおいしいこと。そして冷たいビール、ビール。
トンカツがなくなるのと同時に、ビールもちょうど終了。
「すみません、お酒の小(280円)をぬる燗で。小松菜も出してください」
女将さんは、ライスセットのおかずとして、小松菜のおひたしを後で出してくれようとしたんだと思いますが、ビール1本だけではやっぱりちょっと飲み足りないので、その小松菜をつまみに、燗酒をいただくことにしたのでした。
小松菜に限らず、この店のおひたしは、野菜のゆで具合がちょうどよくて、シャキシャキとした野菜の食感が残っていて、野菜の風味をたっぷりと感じることができるんだけど、硬いわけではない。「野菜がうまいっ!」と感じるおひたしなのです。
小松菜のおひたしも食べ終えて、燗酒を少し残した状態で、いよいよ〆のライスセット。
「小ライスのセットをお願いします。あと追加で納豆(100円)もください」
燗酒を少し残しておいたのには理由(わけ)がある。ここのみそ汁がこれまた、いいつまみになるんです。具は豆腐と若布、玉ねぎに、とろろ昆布が入っていて、沸かさないように、絶妙に加熱して出してくれるのです。
納豆を混ぜてごはんの上にのせ、この納豆ごはんや、添えられているお新香もつまみにして、ぬる燗をちびりちびり。
最後に特別定食に必ず付いてくる果物(今日はパイナップル2切れ)をいただいて、『大衆食堂のフルコース』を終了します。
1時間半ほどの滞在。特別定食で満腹になり、大瓶ビールと小徳利で、酔い具合も、ちょうどいいほろ酔い状態になって、今日のお勘定はちょうど2千円でした。どうもごちそうさま!
ちなみに、私がひそかに『刺し定のおっちゃん』と呼んでいる、いつもマグロ刺身定食(780円)と冷やしトマト(150円)を注文するおっちゃんは、今日はなんとホッケ焼き定食(780円)と冷やしトマト。マグロ刺身定食以外を注文するところを初めて見たなあ。でもちゃんと小ライス(150円)はおかわりしてました。
『大食漢のおっちゃん』と呼んでいるおっちゃんは、大瓶ビール(480円)に、特別定食(980円)はしらすおろしと小松菜を選び、それと同時に里芋煮(250円)、ポテトサラダ(200円)、冷やしトマト(150円)、納豆(100円)を一気に注文して、出てくる順にワシワシと食べ進んでいく。その早いこと早いこと。
普通の人は、出てくるおかずをチマチマとつまみながら、ビールをチビチビと飲んだりするのですが、この大食漢のおっちゃんは、おかずが出てくると、その器を手に持って、息もつかない勢いで、ワッシワッシと一気に食べ終える。
あっという間におかずがなくなって、そこで「ふぅ~っ」と息をついて、ビールをちょっとだけ飲みながら、次のおかずが出てくるのを待つのです。このおっちゃんにとってビールは、おかずとおかずの間の、合いの手みたいな存在なんですね。
私よりも後にやってきたのに、30分もかからないくらいで完食し、これでお勘定は2,160円。あんなにたくさん食べてた割りには安いなあ。そうか、ビールを1本しか飲んでないからなんだな。
大衆酒場と同じように、大衆食堂も、毎日のようにやってくる常連さんが多いので、ついつい観察してしまうのでした。
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