真鯛かぶと煮で菊正宗 … 「金田(かねだ)」(自由が丘)
金曜日の夜は寄り道の時間。横浜の職場から、都内の自宅へと帰る道すがら、途中の駅で下車してちょっと一杯飲んで帰ろうというもの。
しかしながら、会社の出張旅費規定にあるような『もっとも経済的かつ合理的な経路』で帰るわけではなくて、あっちに回り、こっちを通りしながら帰ることが多いので、途中の駅もあっちやこっちと幅広い。今日は東急東横線を経由して、自由が丘で途中下車。
現在の時刻は午後8時前。一番混んでそうな時間だけど、大丈夫かな?
駅のすぐ近くにある、うなぎ串焼きの店、「ほさかや」は、サラリーマン二人連れが店の外で空席待ち。うなぎ串焼きの店は、どことも人気が高いようですねえ。
そして「金田」。今日のお目当ては、このお店です。
入口引き戸をガラリと開けて玄関に入り、さらにすぐ右手の引き戸をガラリと開けて、やっと店内へと入る仕組み。
おぉ~っ。満員だ。
「ひとりです」
カウンターの中のおねえさんに向かってそう言いながら、人差し指を立てると、
「こちらにどうぞ」
とそのカウンター席の一角を指し示してくれます。
なあるほど。ぎっしりと満席のように見えていたのですが、カウンターの一番端っこ、ダブル「コ」の字のつけ根の部分に、かろうじて1席分の空席がありました。
まずは菊正宗(420円)の燗酒を注文すると、すぐに出される小皿の冷奴。こうしてちょっとした豆腐が、サービスのお通しとして出されるのが「金田」の定番。夏は小さな冷奴、冬は小さな湯豆腐です。
その冷奴をつるりといただいて、燗酒をちびちびやりながら、A3サイズの用紙にびっしりと書き出された、80品ほどの料理をじっくりと眺めます。どれもおいしそうなので、いつも困るんですよねえ。迷って迷って仕方がない。
5分ほど、じっくりと検討して、マグロのぬた(800円)と、ふき味噌(450円)をもらおうかなあと、ほぼ心に決めたところで、3~4人ほどのお客さんがお勘定をして席を立ち、入れ替わるようにダダダッと3~4人のお客さんが入ってきて、再び店内は満席状態。さらに続いて何人かが入ってくるものの「満席です」と断られています。2階、3階もいっぱいなんですね。
私がスッと入れたのは、とてもラッキーなことだったんだなあ。改めてそう実感。
そんなこんなで、新しく入った人たちの注文が終わるのを待ちながら、厨房との間の短冊メニューを見ると、A3メニューにはなかった、真鯛あら煮(1,000円)があるのを発見。マグロぬたにするか、鯛あら煮にするか、ちょっと迷ってあら煮に決めました。
「ふき味噌と、真鯛のあら煮をお願いします」
やっと新たなお客さんたちへの対応が一段落したおねえさんをつかまえて、私も料理の注文を済ませます。予想どおり、すぐに出てきたふき味噌は自家製のもので、小鉢にたっぷりと盛られています。このほろ苦さが日本酒に合うんですよね。
昭和11(1936)年に開店。今年で創業77年になります。長くお店の顔であった二代目店主が、2011年10月21日に他界されたという話を聞いていたのですが、店の雰囲気は以前と同じで、変わりがないように感じます。
二代目がご存命中も、料理は京都・祇園の料亭などで7年ほど修業されてきた三代目(二代目の息子さんで、初代創業者のお孫さん)が担当されていたので、料理については、いっさい変わりなし。それがいいんでしょうね。
「鯛のあら煮は、こちら? いいところがありましたよ」
と女将さんが笑顔で出してくれた大皿は、なんと大好物の鯛かぶと。しかも左右両側で、まるまる1尾分の大きな頭がデ~ンと載っています。これは嬉しいなあ。『でも、こんなに食べられるかなあ』と思ってしまうほどボリュームたっぷりです。
まずは頭頂部の身をちょいとつまんで口に入れると、しっかりとした弾力感。さすが天然の真鯛です。こんな立派なかぶと煮が1,000円で食べられるとは! 女将さんがわざわざ「いいところがありましたよ」と出してくれたのがわかりますねえ。
なんで真鯛のかぶと煮が好きかというと、それぞれの部位で、食感と味が違うから。
目玉のまわりはちゅるんとやわらかく、ほっぺの肉はしっかりとしていてギュッとしまっている。カマのあたりは脂がたっぷりとのっていて、旨みがものすごく強い。
この1品だけで、いろんなもつ焼きを出してもらっているのと同じようなバラエティが楽しめる。『少量ずつ多くの種類を』という呑ん兵衛の好みによく合うのです。
この真鯛かぶと煮だけで、けっきょく菊正宗の燗酒(420円)を3本いただいて、飲み喰いともに、もう十分。大満足です。
ゆっくりと1時間半の滞在。今日のお勘定は2,710円でした。どうもごちそうさま。真鯛のあら煮(かぶと煮)、ものすごくおいしかったです。
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