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殻がうまい!うずら卵 … やきとり「大和鳥(やまとちょう)」(高円寺)

殻がうまい!うずら卵


 中野区大和町やまとちょうにある焼き鳥の店、「大和鳥」にやってきました。店名の読みは『やまとちょう』。大和町にあるから『やまとちょう』なんですね。

「みんなが一発で覚えてくれるんだよ。高円寺は焼き鳥激戦区だから、いろいろと工夫しないとな」

 と笑うのは店主の佐藤由亘さとう・よしのぶさん。

 テレビや雑誌では、この店の名物として、殻付きのうずらの卵や、イカ墨の富士宮焼きそばが取り上げられることが多いのですが、実は本当の名物は店主マスター自身だろうと思います。店主を、自分のオヤジやアニキのように慕って、この店に通ってくる若者が多いのです。

 昭和56(1981)年6月1日の創業。今年で創業32年になります。

 メニューはない。「食べ物はオレが決める!」という店主が順番に出してくれるものをつまみながら、冷蔵庫に入っているビールを自分で出して飲んだり、焼酎の水割りを作って飲んだりする。何をどれだけ飲んだかは自己申告制なのです。

 だから基本的に一見いちげんさんはお断り。この店のルールをある程度知っていないと、戸惑ってしまうからです。

 一見でも行ってみたいという方は、入り口に面した焼き台で、焼き鳥を焼いている店主に、店の表から、開けっ放しの窓越しに話しかけて、正直にその思いを伝えてみましょう。きっと思いは伝わります。

 最初は奥さんと二人で切り盛りしていたのですが、弟のようにかわいがっている知人のお店が人手不足になり、やむなく店主の奥さんが手伝いに行くことになった。そこで、この店を店主ひとりで切り盛りするのにあたって、メニューをなくして店主が作ったものを出すようになり、飲み物もセルフサービスの自己申告制にしたんだそうです。

 だから座る位置も、「あんたはここに座んなさい」と店主が指定する。店主のすぐ近くのベストポジション(一番入口に近い席)に指定されるのは、フットワークの軽い若手の常連さん。なにしろここは店主の手伝いをしないといけないからね!

 よそで食べてきてお腹がいっぱいだったり、ふところ具合が寂しかったりするときは、最初にその旨を申告しておけば、それを考慮した出し方をしてくれます。

 今日はカウンターに3人、その後ろの2人掛け×2卓のテーブル席の、奥側の1卓にも二人連れのお客さんが入っていたので、私は冷蔵庫から瓶ビール(キリン一番搾り大瓶)と冷えたグラスを取って、残る1卓、入口側のテーブル席に座ります。(奥にも座敷席があります。)

「昨日は久本が10人ぐらいでやってきて大変だったんだよ」

 と言いながら、店主がお通しのネギとエノキの和え物を出してくれます。この日替りのお通しは、毎日、店主の奥さんが作ってくれるんだそうです。それ以外の料理はすべて、仕入れから仕込みまで、店主がひとりでやっています。

 店主が『久本』と呼ぶのは、タレントの久本雅美ひさもと・まさみさん。久本さんは、上京してすぐ、東京ヴォードヴィルショーに入団したころ(1981年)から、つまりこの店の創業当時から、この店に通っていて、WAHAHA本舗(1984年設立)もこの店で生まれたんだそうです。「超」が付くほどの人気者になった今も、ときどき顔を出してくれるというのがうれしいですね。

 おぉ~っ、すげぇ~っ。

 見ただけでびっくりする本日の1品めは、『鯨赤味と鯨ベーコンの刺身』です。赤味・ベーコン・赤味・ベーコン・……と順番に並べてくれているので、ぜいたくに赤味の上にベーコンをのせて、一緒にいただきます。ん~~~ん。これはうまいっ!

 2品めは『ささみの明太子焼き』。軽~く炙る程度に焼いた鶏ささみに、店主オリジナルの明太子ソースをのせて、さらに焼き海苔をのせたもの。この明太子ソースだけでもいいつまみになるんですよねえ。

 ここで大瓶ビールを飲み終えて、飲み物を麦焼酎(いいちこ)の水割りに切り替えます。この焼酎のボトルは、『おっとこまえH氏』こと、酒友・H氏のもの。H氏も、久本さんと同様に、創業の2か月後、1981年8月からこの店に通っているという古い常連さんです。私自身、はじめてこの店に来たときは、H氏に連れてきてもらったのでした。

 そして3品め。ここでしか食べられない『殻付きのうずらの卵』です。できたては殻の部分が火傷やけどするほど熱いので、2分ほど待ってからいただきます。熱いほど美味しいので、なるべく熱々で! 5分も待つと待ち過ぎです。

 この『殻付きのうずらの卵』は、殻ごと、カリカリ、シャクシャクといただきます。

(えぇ~っ、うそでしょう?!)

 と思う人もいるでしょうが、この一品は、むしろ殻があるから美味しい。殻にもちょっと醤油っぽい味が付いていて、それが香ばしくてうまいのです。

「殻付きのうずらの卵は、ひらめきで、すぐに思いついた料理だけど、それからお店でちゃんとした形で出せるようになるまでが長かった。うちの料理の中で、完成するまで一番時間がかかった料理じゃないかなあ」と店主。

 4品めは『シシャモのしそ海苔巻』。焼き台で熱々に焼いたシシャモを、刻んで梅肉で和えた大葉(しそ)をのせた海苔で巻いて、手渡しで出してくれるもの。シシャモの熱さと、刻んだシソの冷たさのバランスもおもしろくて、お酒が進む一品です。

 5品めは『砂肝の塩焼き』。ここの砂肝は、いつも同じ形のものが出されるのがすばらしい。いろんな大きさの砂肝があると思うのですが、ほぼきっちりと大きさもそろっている。昔のスペースインベーダーのキャラを彷彿とさせる、丸っこいクラゲのようにカットされているのが、なんだかカワイイのです。

 店内はまるで放課後の部室のよう。店主が話の中心になって、店中の客が同じ話題で盛り上がる。その話のあいま、あいまで、店主がちょいと出してくれる料理がまたうまい。こうして、みんな時間を忘れて話し込んでいくんですねえ。

 そろそろ午後11時。私はボチボチと腰を上げるとしましょう。たっぷりと3時間ほどの滞在。今日のお勘定は2,700円でした。どうもごちそうさま。

130504g 130504h 130504i
やきとり「大和鳥」 / お通しとビール / 鯨刺身と鯨ベーコン

130504j 130504k 130504l
ささみの明太子焼き / シシャモのしそ海苔巻 / 砂肝の塩焼き

店情報前回

《平成25(2013)年5月4日(土)の記録》

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 昨日の記事で、とろりととろける「一火」(鳥佳グループ)の半熟うずらのご紹介をしましたが、うずらの卵となると、この店もご紹介せずにはいられない。  中野区大和町(やまとちょう)(最寄り駅は高円寺)にある「大和鳥(やまとちょう)」です。  こちらで出される「うずら串焼」(1串150円)は、なんと殻付き。  それを殻ごとシャクシャクといただきます。  通常、焼き鳥屋で出されるうずらの卵は、業者から仕入... [続きを読む]

受信: 2013.08.15 22:25

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