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この夏の新作、かわ焼 … うなぎ串焼「川二郎(かわじろう)」(中野)

かわ焼


『かわ焼: 鰻のしっぽの部分です。サクっとして鰻の身のやわらかさを残した新しい食感です。この夏の新作串焼!』

 「川二郎」店主のfacebookに、そんな書き込みが載ったのは、6月27日(木)のこと。

 私自身、うなぎの串焼きは大好きなので、いろんな店に食べに行っていますが、新作メニューの登場は、少なくとも私が知っている中では初めてじゃないかなあ。それくらい、うなぎの串焼きのネタは定番化しているのです。

 これはぜひ食べに行ってみなきゃと、ダメ元(売り切れ覚悟)で、翌金曜日の仕事終了後、横浜の職場から、大急ぎで中野を目指したのでした。

 店の前に到着したのは午後8時過ぎ。店の前の行列は4人と少ない。時間的に、多くのネタは売り切れてるでしょうが、入れないことはなさそうです。

 すぐに一人お客さんが出てきて、カウンターの人たちがちょっとずつ左右に寄って、行列先頭のサラリーマン二人連れが店内へ。さらに10分ほど待ったところで、店内からサラリーマンの4人組が出てきて、私も含む行列の3人が店内に入ることができました。

 私の後ろには人は来なかったので、この時点(8時15分ごろ)で行列は解消。店内にも、私のとなりに、もう1席分の空席がある状態になりました。

 まずは大瓶のビール(キリンラガー、650円)をお願いして、店主が一緒に入ったカップルに、

「今日は残りが4種類しかないんですが、その4種類をお出ししたんでいいですか?」

 と確認し、カップルが「はい、それでお願いします」と答えたタイミングで、「私もそれでお願いします」と追いかけて注文し、あわせてカルシウム(うなぎの中骨の唐揚げ、300円)ももらうことにしました。

 カルシウムは、揚げ終えてカウンター上のバットに盛られているものから、1人前を小皿に分け、塩を振って出してくれるので、出るのが早いのです。パリポリとした香ばしさがビールにもよく合う! これとお通しのキャベツをつつきながら、うなぎ串焼きの焼き上がりを待とうという寸法です。

 一緒に入ったカップルは、きも刺(1人前650円)を出してもらって、これをつまみながら焼き上がりを待つようです。見てくれはあまりよくない(過去記事に写真がある)のですが、このきも刺もうまいんですよねえ。とくにモツ(内臓)好きにはたまらん一品です。

 昭和43(1968)年創業のこのお店。昭和48(1973)年から、長きにわたって2代目店主の鈴木正治さんが切り盛りしてこられましたが、平成20(2008)年に正治さんの甥っ子で、この店で修業を続けてきた鈴木規純さんに店主の座をバトンタッチ。以来、規純さんが3代目店主として、老舗「川二郎」の暖簾のれんを守っています。

(その後、2代目・正治さんの娘さんが、すぐ近くに同じく鰻の店、「味治みはる」をオープンし、現在は正治さんもそこを手伝われています。正治さんのもとで修業した鈴木康治さんが独立して、荻窪に出した「川勢かわせ」も含めて3軒が、それぞれ大人気の繁盛店だというのは素晴らしいことですよね。)

 現在の「川二郎」を切り盛りするのは、3代目・規純さんご夫妻と、男性スタッフひとり。この男性スタッフが、店頭の行列をうまくさばいてくれます。

 カルシウムもほとんどなくなりかけた頃合いに、まず出てきたのは「ひれ焼」(170円)と「えり焼」(170円)です。

 これまで何度か来たときには、焼き置きしているうなぎ串を、もう一度、炭火で温め直して出してくれたので、ほとんど待つこともなく「ひと通り」が出されていたのです。今日は金曜日の午後8時過ぎということもあってか、焼き置きしたものはまったくなくなった様子。冷蔵庫の中に保存されている生の状態の串を焼き上げてくれたので、時間がかかったようです。生から焼くと、こんなにかかるんですね。びっくりしました。(それとも、もしかすると現在は焼き置きせず、すべて生から焼いてるのかな?)

 ひれ焼は、うなぎの背びれや腹びれをニラと一緒に串に巻いて焼いたもの。すべてのうなぎ串焼きの中で、私はこれが一番好きかな。うま味が強いんです。しかも今日のひれ焼は、生から焼き上げただけあって、カプッとかじると脂がしたたるほどジューシー。これはすごい。待った甲斐があったなあ。

 えり焼は、おなじみのカブト(=頭)ですが、ほっぺたよりも前側の骨ばった部分は取って、それより後ろの、いわゆるカマの部分を焼いたもの。ここがうなぎの首のあたりでもあるため、えり焼きと言うんですね。

 えり焼でも、骨っぽい店は、かなり骨っぽいのですが、ここ「川二郎」のえり焼は、骨をほとんど感じないくらい、上手に処理されています。山椒粉をチャチャッと振りかけて食べるのがおいしいですね。

 3本目は「ばら焼」(170円)。これも好きだなあ。これはうなぎの腹骨(あばら骨)からそいだ身をこねて焼いたもの。マグロで言えば『トロの部分の中落ち』ですもんね。うまくないわけがない。

「最後は『かわ焼』です。味はついてますので、そのままお召し上がりください」

 やった! まだあったんだ。思わず心の中でガッツポーズをしながら、

「これですね。新作のうなぎ串は!」

「そうなんです」と3代目・規純さん。

 鶏の皮の焼き鳥のように、カリッとしているんだけど、ジュワッとうま味があるような串を、うなぎでも作れないかと試行錯誤して、うなぎの尾の方の身を使って焼く、この「かわ焼」にたどりついたんだそうです。

 たしかに食感はサクッとしているし、口の中で噛みほぐすにつれ、さすがはうなぎ(しかも尾の身)と思わせる旨みがたっぷり! こいつはいいぞ。いきなり好物の仲間入りです。

 これで今日残っている4本はすべていただいたのですが、これだけで帰るのもしのびない。もう待っている人もいないし、私自身も久しぶりなので、もうちょっとゆっくりして帰りましょうか。

「お酒のあったかいのと、あと、おつけものをお願いします」

 ここの標準的なお酒は秋田の「新政」だったんだけど、今は同じ秋田の「八重寿」(330円)になっているようです。燗酒は、2代目の頃と同じように、保温しているポットから、受け皿付きのコップに注がれます。

 おつけもの(300円)はキュウリとカブのぬか漬け。『2代目は外で飲んでいるときでさえ、「漬物の世話をしないといけないから」と店に帰っていた』という逸話があるほどの「川二郎」のぬか漬け。今も健在なようですねえ。

 店に入ってからちょうど1時間ほどの滞在。今日のお勘定は2,240円でした。どうもごちそうさま。新作の「かわ焼」、おいしかったです!

 ただでさえ行列ができるほど混んでるのに、こんな新作までできちゃったら、ますます混むんだろうなあ。うれしいような、悲しいような、複雑な気持ちです。

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店頭の行列に並んで待つ / カルシウム、お通しのキャベツ / ひれ焼、えり焼

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ばら焼 / おつけもの、燗酒 / 店を出て、金曜、午後9時15分の「川二郎」

店情報前回

《平成25(2013)年6月28日(金)の記録》

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受信: 2015.03.26 08:39

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