ワタがいい鯉のうま煮 … 鯉とうなぎの「まるます家(まるますや)」(赤羽)
はまってますねえ、鯉のうま煮(800円)。このところ毎回これをたのんでる。
「小生ビール(350円)と鯉のうま煮をお願いします」
ワンパターンのようにこう注文するのが常になってきました。
鯉のうま煮は、ウロコの付いた皮ごと、そして内臓ごと、どすんと輪切りにした鯉を、まっ黒になるぐらいまでコトコトと煮込んだもの。骨までホロリと食べられるほどのできあがりになります。
ここ「まるます家」では、あらかじめじっくりと煮込んである鯉のうま煮を、注文を受けてから温め直して出してくれている様子。だから、小生ビール(といっても他の店の中生ビールと同じくらいの量)を飲み干すぐらいのタイミングで、ちょうどよく鯉のうま煮が出てくるのでした。
で、鯉のうま煮が出てきたところで注文するのが、地元・北区の「
鯉のうま煮は、まずその内臓部分から箸をつけます。なにしろここが一番うまい。鯉の「もつ」ですもんね。
そしてキューッと冷たい「丸眞正宗」。
ん~~~~っ。幸せじゃ。
少し前に、『それぞれの部位で食感と味わいが違うから、真鯛のかぶと煮が好きだ』ということを書きましたが、鯉のうま煮もそれと同じ。
よく煮込まれた、鯉のもつ煮の部分があり、その内臓を水の冷たさから守るための、よく煮込んでもなお豊富な脂分を感じる腹の身(トロの部分)があり、そしてなによりウロコの付いた皮がうまい。
ほかの魚の場合、たまにウロコが残っていたりすると、ウェッとなったりするものですが、鯉の場合は、ウロコそのものがしっかりし過ぎているほど、しっかりしているので、これだけよく煮込むと、そのゼラチン質がとても心地よい食感になるのです。よそには鯉の「うろこせんべい」を名物にしているお店まであるくらいですから、まずかろうはずがない。ぜひ一度お試しください。
「失礼ですが、東北のご出身じゃないですか?」
となりに座っているカップルの男性から、そんな声がかかります。
「東北じゃないんですけど、どうしてですか?」
「いや、私自身が東北の出身でしてね。鯉のうま煮がなつかしいなあと思って」
「そうなんですか。私はこの店で初めて鯉のうま煮を知ったんですよ。最近はこれにすっかりはまってまして……」
「なんといってもワタ(内臓)がうまいんですよねえ。東北のほうでは『ワタこく』といって、ワタがいっぱい入った鯉こくも食べるんですよ」
なんとまあ。ワタこく。聞いただけでもうまそうな。
「こっちも鯉のうま煮をもらう?」と連れの女性に聞く男性。
「次でいいんじゃない。こんなにあるのに」
カップルの前には、ずらりといろんな料理が並んでいます。
「でもおいしそうだよ、いやきっとおいしいよ、鯉のうま煮」
「そんなに入んないよ。もうお腹いっぱい」
女性は生まれも育ちも東京の方なんだそうです。鯉のうま煮は、ちょっとグロテスクに感じちゃうのかもね。おいしいんだけどなあ。
その後も男性は鯉のうま煮を強烈にアピール。たび重なる男性からのオファーに、ついに女性も「じゃ、たのめば」と折れてくれました。
「すみません! 鯉のうま煮をお願いします!」
意気揚々と注文する男性。すると店のおねえさんが、
「ごめんなさいね。鯉のうま煮、さっき売り切れちゃいました」
「あ………、そうですか…」
苦難の末の意気消沈。ほんとうに残念でした。
「来週また来る! 絶対来る!」
来週に期待をつなげる男性。子供のころから慣れ親しんだ鯉のうま煮。やっぱり食べたいですよねえ。
さてと。私はボチボチ席を立ちますか。1時間半ほどの滞在。鯉のうま煮に、飲み物が小生ビール、丸眞正宗と、酎ハイモヒート(450円)で、今日のお勘定は2,300円でした。どうもごちそうさま。来週は食べられるといいですね、鯉のうま煮。
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