大正4年から続く老舗 … 食堂「長野屋(ながのや)」(新宿)
『店の存在はずっと前から知ってたんだけど、なぜか今まで行ったことがない』
そんなお店がたくさんあるのですが、新宿駅東南口の階段を下りた目の前にある「長野屋食堂」もそんな店の1軒です。
現在の時刻は、土曜日の午後3時半。お店的には一番ゆっくりとした時間帯かな。
開けっ放しの入り口から店内をのぞき込んでみると、一番手前のテーブルに食事をしている中年女性客がひとり、一番奥のテーブルにつまみの小皿を並べてチューハイを飲んでいる男性二人連れがひと組。
よしっ。ちょっと飲んでいくか。
紺地に白で「長野屋」の染め抜かれた
店が角地にあるからか、店内の形はちょっと
えぇ~と、4人卓×7+2人卓×3の合計34席ですか。狭い店内の割りには、効率よく大人数が入れるんですねえ。
「いらっしゃいませ」
と注文を取りに来てくれたのは、なんと入口付近のテーブルで食事をとっていた女性ひとり客。この人が女将さんだったんですね。こいつは失礼いたしました。昼どきのランチ営業が一段落したところで、夕方から混み合う前に食事をとっておこうということだったんでしょうね。
「大瓶のビール(630円)をお願いします」
そう注文しておいて、テーブル上に置かれたメニューを確認すると、これが写真付きで、日本語の他に、英語、韓国語、中国語の4か国語表記。国際的ですねえ。しかもA3ぐらいの大きさで、ラミネート加工された表裏1枚にすべてをまとめていて、とても見やすい。
15種類ほどの定食は650~1,000円ほどで、カツ丼(700円)やカレーライス(500円)などもある。もちろん、
「はいどうぞ」と、キリン一番搾りの大瓶とコップを出してくれたところで、ハムエッグ(250円)を注文すると、注文は伝票につけられて、料理用の小さいエレベーターで上の階へと運ばれていきます。
「厨房は上にあるんですか?」と聞いてみると、
「そうなんです。ここ(1階)の他に、2階と3階に客席があって、全部のフロアの料理を1か所で作るんです。今は1階しか使ってないんですけどね」
と女将さん。この女将さん、ひとり客にも気を使ってくれて、テレビから流れているワイドショー的な内容にも、
「わっ。この人、ものすごく悪そうな顔よねえ」
と誰にともなく話しかける。ちょっとおしゃべりしたい気分の客であれば、このタイミングで「そうだね」と相槌を打てば、どんどん話が展開していく流れになります。
ブーッ
とブザーの音がして、小さなエレベータが下りてきました。
「はいお待たせ。ハムエッグね」
あらあら。お皿の大きなちょうどに、真ん丸にできあがったハムエッグがきれいですねえ。黄身もいい具合に半熟状態。ハムをとって、その半熟の黄身にプツンと突き刺しながらいただきます。
「二人だけど入れる? ここは定食屋?」
と新しいお客さんが入ってきました。
「いらっしゃいませ、入れますよ。うちは定食屋なんだけど、実際は飲み屋みたいなものね」
と女将さん。やるなあ。この返しがおもしろい。
この店の創業は大正4(1915)年だそうですから、あと2年ほどで創業100周年。ものすごい老舗です。
昔は、甲州街道を通って荷物を運んできた馬と人がひと休みするような場所だった。戦後の高度成長期には、この近くにかつて「旭町」と呼ばれていたドヤ街ができ、そこに寝泊まりして働く日雇い労働者が大勢やってくるようになったが、その木賃宿もなくなり、現在はサラリーマンや学生が客の中心になっているんだそうです。
「昔は
と嘆く女将さん。いかにも作りものの、
単品のロースとんかつが700円なのに、カツカレーが600円(普通のカレーライスは500円)というのも面白いなあ。今度はカツカレーでビールを飲んでみようかなあ。
女将さんと話をしたりしながら、大瓶ビール1本とハムエッグで1時間ちょっとの滞在。お勘定は930円でした。どうもごちそうさま。また来なきゃね。
・店情報
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コメント
もしかすると、何年もこの値段でやっているのかもしれませんね。このような店は他に…あ!思い出横丁にある、つるかめ食堂!もそうかな?両店ともにこれからも、みんなの胃袋を満たしてくださいね!良いお店はいつまでも、残っていてほしいですね。
投稿: 仙台おおぽん | 2013.07.07 04:23