鶏皮みそ煮とホッピー … 焼き鳥「鳥好(とりよし)」(横須賀中央)

呉の「本家鳥好」の流れをくむ、横須賀の「鳥好」。
「本家鳥好」も含む、呉の『とり屋』の多くが、昭和50年代のはじめごろまでに、店内に
呉の『とり屋』も昔はこうだったんだろうなあ、と思わせてくれる酒場なのです。
店内は、入ってすぐ右手が10席ほどのカウンター席。左手奥に4人掛けのテーブル席が1卓あって、その奥が座敷席(20席)になっています。
店は店主・野村宏さんと、その娘さん、そしてもうひとり女性店員さんがいて、合計3人で切り盛りしています。
カウンターの一角に腰を下ろし、まずは飲み物から。
横須賀なので、やっぱりホッピー(350円)でしょうね。
「氷は入れますか? なしですか?」と娘さん。
「なしでお願いします」
と反射的に答えたものの、出てきたホッピーを見てちょっと後悔。
なんと、ジョッキの半分ほどが焼酎です。
この店では、焼酎を目分量で、ジョッキの半分ぐらいまで注いでくれるので、氷が入ってるとその分、焼酎の量が少なくなるのですが、氷なしだとものすごいことになります。
強めのホッピーが好きな方は、ぜひ『氷なし』をお試しください。ガツンと強烈なホッピーが楽しめます。
そのかわり、この『氷なし』のホッピーを2杯ぐらいいただくと、記憶が飛ぶか、腰砕けになるか、ということになるのでご注意を。
つまみも最初の一品は決まっています。
「みそ煮(1本60円)を3本、お願いします」
「はい」という返事とほぼ同時に、煮込みが3本のった皿が出されます。
煮込みはカウンター内のバットで、とろとろと煮込まれているものを、注文を受けて皿に取って出してくれるので、とにかく早いのです。「鳥好」にあっては、お通し代わりの一品ですね。
ちなみにここ横須賀「鳥好」でも、呉の「本家鳥好」でも、お通しは出されません。
「客が注文していないものは(勝手に)出さない」
というのが、「本家鳥好」の店主・上瀬弘和さんのモットー。その流れが、横須賀「鳥好」にも受け継がれています。
みそ煮というのは、鶏の皮を串に刺して煮込んだもの。
今でこそ、鶏皮は多くの人たちから好まれる一品ですが、「本家鳥好」が創業した昭和26年ごろは、皮は硬くて食べることができず、捨てられていたんだそうです。
捨てるしかない皮を、なんとかして食べられるようにできないか。
工夫に工夫を重ねてできあがったのが、この『みそ煮』だったのです。
「本家鳥好」のみそ煮が、トロトロになるぐらいまで軟らかく煮こまれているのに対して、横須賀「鳥好」のみそ煮は、少し浅めの煮込み方で、鶏皮の弾力感がしっかりと残っています。鶏皮好きには横須賀「鳥好」のみそ煮が向いてるんじゃないかな。私も鶏皮好きなので、このみそ煮、大好きです。
みそ煮とホッピーの組み合わせは横須賀ならでは。呉にはない組み合わせです。
さっと出てくるみそ煮を食べてる間に、次なる料理を注文するのが『とり屋』の基本。こうしておくと、ちょうどみそ煮を食べ終えるころに、次の料理が出てくるのです。
「スープドーフ(450円)をお願いします」
外はまだまだ蒸し暑いのですが、『とり屋』に来たらスープ豆腐もはずせません。みそ煮と並んで、呉のどの『とり屋』にも必ずあるメニューです。
これもまた、鶏肉を鶏脂を取った後の鶏スープを有効利用するために考え出された料理。
店によって、シンプルに豆腐だけが入っていたり、野菜なども入っていたりしますが、ここ横須賀「鳥好」のスープドーフは、野菜もたっぷりと入っています。
実は「本家鳥好」を店主・上瀬弘和さんとともに引っ張ってきたのが、弘和さんの妹の美由紀さん。
「妹は、わしの右腕よのお。あいつだけが鳥好の料理を全部作れた」
という話を弘和さんから聞いたことがあります。
その美由紀さんが嫁いだ先が、当時、海上自衛官として呉にいた、若き日の野村宏さん(現在の横須賀「鳥好」の店主)だったのです。
「呉にいたころに、自分がおいしく楽しく飲んで食べた品々を提供できる店を横須賀に作ろう」
結婚を機に、そう思い立って生まれたのが、ここ横須賀「鳥好」なのでした。
それ以来40年、ご夫婦二人で、この地でがんばって来られました。
昨年(2012年)の9月、「とりマニア」(浜田信郎・監修、メディアパル、2013年9月30日発売予定、1,300円+消費税)の取材で、取材チームがうかがったときにも、ご夫婦で仲良く写真におさまっていただきました。
いよいよ出版ということで、今年の8月ごろ、最終的な原稿チェックを、取材させていただいた各店にお願いしたところ、なんと! その美由紀さんが亡くなられたとのこと。びっくりしました。
現在は、娘さんが手伝いに出てきてくれていて、メニューや定休日も少し変更して、営業を続けられているんだそうです。
鶏正肉を串のままカツにした、『とり屋』ならではの串カツ(3本1皿で350円)や、昔は鶏脂でさっと炒めて作っていたという焼めし(400円)なども食べたいと思っていたのですが、ソト1ナカ3(ナカは300円)の強烈ホッピーで、すっかり酔っぱらってしまいました。
1時間半の滞在。お勘定は1,580円。
「どうもごちそさまでした」と席を立つと、
「とりマニアの出版、母が楽しみにしてました」
と娘さんが見送ってくれました。
がんばってもっと早く出版できてたらよかったなあ。遅くなってしまい、ごめんなさい。(合掌)
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コメント
ども、お久しぶりです。広島県の港町・呉市。
独自の店舗形態「呉のとり屋(≒or≠標準語の焼鳥屋)」について、毎度詳しいお話を聞かせていただき、地元に住む者としては、感慨ひとしおです。
この横須賀の鳥好についても同感。ありがとうございます。
前の東京オリンピック(1964年)頃、呉のとり屋は、中国地方を中心に躍進。広島、岡山、倉敷、福山、三原、米子…
米子、福山、三原の鳥好には行ったことがあります。でも、どの店もベースは呉(倉橋島)にありながらしっかりその町に根付いていました。50年の老舗ですからね。
呉と同様旧海軍の港町・横須賀の鳥好、いつか暖簾をくぐりたいものです。
投稿: 遊星ギアのカズ | 2013.09.17 22:41