横須賀で食べる呉の味 … 「鳥好(とりよし)」(横須賀中央)
「鳥好」の串カツ(3本350円)は、焼き鳥用のネギマ串(=鶏正肉+白ネギ)に、パン粉をつけて揚げたもの。つまり焼き鳥の串カツです。
できたての熱々に、ウスターソースをかけていただくのが美味いんですよねえ。
ックゥ~ッ。冷たいホッピー(350円)にもよく合うのお!
呉の『とり屋』で、串カツと言えばすべてこの、ネギマ串に衣をつけて揚げたスタイル。これが不思議と思う人さえいないほど、標準的な食べ物なのです。
これと同じように、呉ではすっかり定番となっている、『とり屋』発祥のオリジナル料理がたくさんあります。
前回いただいた、鶏皮のみそ煮(1本60円)と、スープドーフ(450円)もそうです。
まだブロイラーがない時代、『とり屋』で主に使っていたのは、卵を産まなくなった親鳥。捨てるしかなかった親鳥の硬い皮を、なんとか食べることができないかと試行錯誤して、できあがったのが「鶏皮のみそ煮」だったのです。
水煮した鶏皮を、ひと口大に切って串に刺し、それを味噌で味付けしたスープでグツグツと煮込んで作るのが、呉の「本家鳥好」流。ここが「鶏皮のみそ煮」を考案したお店です。
その後、呉市内の『とり屋』に伝搬していく過程で、串に刺さずにばらばらの状態で煮込む店や、コンニャクや根菜類などが入る店も出てきたりと、首都圏のもつ煮込みと同じような進化を遂げてきたのでした。
ここ横須賀「鳥好」は、呉の「本家鳥好」の直系とも言える店。伝統ある「本家鳥好」の鶏皮のみそ煮の味と姿を、そのまま横須賀の地で再現しています。
しいて違いを見つけるとすると、呉の「本家鳥好」のほうが、味噌の色が濃いかな。
なぜ、この店が、「本家鳥好」の直系と言えるかというと、まず店主・野村宏さんが、「本家鳥好」で修業をしてから、この店を開いたということ。
そして何よりもその直系性を物語るのが、宏さんの奥様である美由紀さんが、「本家鳥好」の現店主(二代目)・上瀬弘和さんの妹さんであるということです。
しかも、美由紀さんのほうが、兄・弘和さんよりも先に「本家鳥好」で働き始めていたそうですから、仕事の上では美由紀さんのほうが先輩かも!
前回記事でもちょっと触れたとおり、宏さんとの二人三脚で、40年にわたってここ横須賀「鳥好」を盛り立ててきた美由紀さんが、今年4月に急逝。一時は、店の存続も危ぶまれるような状態だったのですが、二人のお子さん(兄妹)が、昼間の仕事を終えてから店を手伝ってくれることになり、なんとか再開にこぎつけたのだそうです。
スープドーフは、鶏ガラからとったスープで豆腐を煮て、醤油で薄く味を付けたもの。
「本家鳥好」のスープ豆腐の具材は、豆腐の他は、長めに切ったネギが数本だけとシンプルですが、横須賀「鳥好」のスープドーフには野菜がたっぷりと入っています。
今日はさらに「だんご」(1本150円で2本から)もいただきます。
だんごは、丸く球状にまるめたつくねのこと。これが1串に3個。
おもしろいのは焼くのではなくて、揚げて出してくれるというところ。「本家鳥好」でも、つくねは揚げて出してくれるので、これもまた鳥好流なんですね。仕上げにウスターソースにくぐらせて出してくれるのは、横須賀「鳥好」独自のスタイル。
横須賀「鳥好」には、だんごの他に、「合鴨のつくね」「辛口つくね」(各1本150円)というのもあって、こちらは串のまわりに棒状に整形したつくねを、焼いて出してくれるもの。これらもまた人気の品々です。
最後に、これまた呉の『とり屋』の伝統的な逸品、ささみの天ぷら(400円)をいただいて、1時間半の滞在。ホッピーは最初のセットに加えて、ナカを2杯おかわり(つまりソト1・ナカ3)し、今日のお勘定は1,980円でした。どうもごちそうさま。
本当は「本家鳥好」の名物でもある、焼めし(400円)まで進みたかったのですが、もう満腹。そこまで行きつけませんでした。次回の課題ですね。
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コメント
横須賀の鳥好=呉のとり屋、しっかり地元に定着。毎回詳細なレポ、呉人として心にしみます。是非行きたい!
景気の良かった昭和40年代、呉のとり屋は、西日本を中心に各都市に進出。花粉をまき散らすが如く、です。
屋号「鳥好」。米子、三原に店があり、ルーツが呉と確認できました。
そして福山。駅前の店もまた、出自は呉でした。但し、今ではすかり地元に根付き、暖簾には『福山名物』の字が躍ります。
結局、オリジナルスタイルを進出した都市に合わせる「融通無碍(ゆうずうむげ)」の精神で、呉のとり屋は各地で生き残ったのだと思います。
勢いのある数店が岡山に、倉敷にも…呉のとり屋、「鳥好」を巡る旅が、私を待っていてくれます。
投稿: 遊星ギアのカズ | 2013.10.19 21:33