名物にうまいものあり … 「大はし(おおはし)」(北千住)
『名物にうまいものあり北千住 牛のにこみでわたる大橋』
有名なこのキャッチコピーは、この店に常連として通っていた画家・伊藤晴雨の作。
今日は創業明治10(1877)年という老舗、北千住の「大はし」にやって来ました。
根津近辺での仕事が終わったのが午後4時ごろ。
(ちょっと早いけど、今日はこれで上がるか。久しぶりに北千住に出てみよう。)
と思い立って、根津から地下鉄・千代田線に乗り込むと、なんと、たったの10分で北千住に到着です。根津と北千住って、こんなに近かったんだ!
そして「大はし」に到着したのは、開店時刻10分前の午後4時20分。
開店前の大行列ができているかと思いきや、待ってるのはいかにも近所の方らしいいでたちの女性がひとりだけ。
へぇ~。平日はそんなものなのか。
以前、土曜日の開店前に来たときは、店の前にズラリと大行列。開店と同時に満席になったのでした。
今は土曜日も休み(土・日・祝が定休)になったので、私のように、平日は横浜で働いている者にとっては、なかなか来れない店の1軒になっています。
行列がないのに安心して、近くの本屋で開店までの10分ほどを過ごします。
開店時刻の4時半になったので、改めて「大はし」の前に行くと、
ガラリと入口引き戸を開けて店内に入ると……。
うそっ!
店内(カウンターとテーブルで40席ほど)はすでに3分の2ぐらいの入り。
みんな、いったいどこで待ってたの?
カウンターはコの字の一辺が短くなったJ字型をしていて、奥のほうから順にお客が入っている感じ。私もそのすぐ手前の空いている席に腰を下ろします。
「はいっ、飲み物はぁ~」
と声をかけてくれるのは、名物店主・神野彦二さん。祖父(創業者)、父、兄につぐ4代目なんだそうで、5代目となる息子さんと一緒に店内を切り盛りします。
「焼酎(250円)ください」
「おぃ~っ」
受け皿とコップを出して、ドドドドッと焼酎(キンミヤ)を注ぎ、
「梅は?」
「入れてください」
「おぃ~っ」
あっという間に梅割りのできあがりです。
以前は「おいきたっ」とか、「はいよっ」と「おいよっ」の中間のような掛け声で注文を受けてくれていたのですが、今はもっと短くなって、「おぃ~っ」と「うぃ~っ」の中間のような掛け声で注文に
近くに来た息子さんに「肉とうふ(320円)をください」と声をかけると、「うぃ~っ」と返事した息子さんが、シャカシャカと奥の大鍋前に肉とうふを注ぎに行き、すぐに戻ってきて「うぃ~っ」と出してくれます。
息子さんも、親父さんとまったく同じような掛け声になっているのがおもしろいなあ。きびきびとした動き方もよく似てるね。
さあ、肉とうふ。これを楽しみにやってきた。
千住名代の煮込みメニューには『牛にこみ』と『肉とうふ』の二つがあって、どちらも320円。
牛にこみは、牛のスジと肩肉を、醤油と砂糖で甘辛く煮たもの。すき焼きの割り下をあっさりめにした(=濃厚さを抑えた)感じの味わいがうまい。
肉とうふは、肉の量が半減する代わりに、同じ鍋で煮込んだ豆腐が加わります。けっこう硬めで、いかにも肉っ! といった感じの肉の部分と、とろりと軟らかくて、煮汁の旨みをたっぷりと含んだ熱々豆腐がいいバランスです。
向かい側に座っているおじさんは、牛にこみと肉とうふの二つをいっぺんに注文。左どなりの男性は「豆腐だけ」という注文。肉がまったくなくなる代わりに、肉とうふには1個しか入っていない豆腐が、ふたつになります。値段は同じ。「豆腐だけ」を注文しているお客さんも多いなあ。
私も焼酎(250円)の梅割りをおかわりして、ついでに肉とうふ(320円)もおかわりします。
千住市場が近いので、魚介類のメニューも多いのですが、ここに来ると、やっぱりここでしか食べられない牛にこみや肉とうふに食指が動いてしまいますね。
開店から20分後の4時50分に、店内は満員。入口近くの丸椅子に座って待つ客が出始めました。月曜日からこの勢いなんですね。
早い時間帯にやって来るのは、ほとんどが常連さんの様子。店に入ってくるなり、
「おぉ、○○さん、いらっしゃい」
と店主や息子さんから声がかかると同時に、スッとキンミヤのキープボトルが出されます。ものすごい数のキープボトルがあるのに、よくこんなに速く出せるもんだ。そのことも驚きです。
ひと言も発していないのに、すっと牛にこみが出されたり、肉とうふが出されたり、とうふだけが出されたりと、それぞれの常連さんの好みに応じたつまみもスッと出されている。
みんな、毎日この時間を楽しみにやって来るんだろうなあ。
そんなことを思いながら2杯めの焼酎を飲み干し、2枚めの肉とうふを食べ終えて30分ほどの滞在。お勘定は1,140円でした。どうもごちそうさま。
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