
舞鶴を朝の10時ごろに出ると、正午には京都に到着。新京極(四条河原町)まで移動して、今日の1軒目は「スタンド」です。
『関東大震災で東京浅草から移ってきた一代目が、大正時代の建物で昭和2年に創めた大衆食堂。それが、京都・四条河原町 新京極通りにある「京極スタンド」です』
店の公式サイトには、そう紹介されています。
以前、吉田類(よしだ・るい)さんとご一緒させていただいたときに、「京都に行ったら、新京極の『スタンド』に行ってみたらいいよ」と教えてもらったのです。
それ以来、「京都に行く機会があったら、絶対に寄ってみよう」と思い続けていたのですが、やっと今日、その思いがかないました。
新京極の商店街のど真ん中。けっこうな人通りがある中に、こつ然と現れる古い建物が「スタンド」です。(電話帳などにも登録されている正式な店名は「スタンド」ですが、公式サイトなどでは「京極スタンド」とか、「新京極スタンド」という呼称を使っているようです。)
白地に黒で「スタンド」と書かれた暖簾をくぐり、スイング扉を開けて店内へ。
すぐ目の前に、店のおねえさんがいたので、「ひとりです」と人差し指を立てると、「はい、いらっしゃいませ。こちらにどうぞ。カウンターの奥を回って、中にお入りください」と自ら先導して、その席まで案内してくれます。
店内は、入口から見て右側に、店の奥までまっすぐに伸びるカウンター席があり、左手壁際には丸テーブルが4つ。高い天井には白熱灯がともり、天井扇の風情もいいですね。
すばらしいのはカウンター席。レンガを積み上げたような基盤に、天板全体が大理石です。このカウンターの両側にずらりと丸椅子が並んでいて、片側に10人ほど、両側では20人ほどの人が座れます。
ただし、なにしろカウンター席なので、その幅が狭い。二人連れの客は向かい合って座っていますが、我われのような一人客は、向こう側とこっち側で1席分ずつずらして、千鳥状に座ります。
(新子安の市民酒蔵「諸星」をご存知の方は、あのカウンター席をイメージしてもらえば近いと思います。ただし、天板は大理石ですぞ!)
壁際の丸テーブルのほうは6人掛けが3卓と、一番入口に近い丸テーブルだけがちょっと小さくて、これは4人掛けかな。このテーブルには二人以上のグループ客が入れ込みの相席で座っています。中にはひとりで相席に入っている人もいます。
「お飲み物は?」と聞いてくれるおねえさんに、
「生大をセットでお願いします」と、あらかじめ公式サイトなどで予習してきた品を注文します。
“セット”というのは、生ビール大(800円)・中(520円)か日本酒1合(420円)に、冷奴、枝豆、スパゲティサラダと、日替りの2品が付いたお得なセットのこと。
生大セットは1,200円(飲み物+400円)、生中セットは1,000円(飲み物+480円)、日本酒1合セットは950円(飲み物+530円)ということで、もっともお得感が強い、生大セットを注文したのでした。
すぐに出される大ジョッキの生ビールと冷奴。
ッカァ~ッ! ビールがよく冷えてておいしいこと。
外は寒くても、今日の口開けの1杯は、やっぱりビールがいいね!
昼間のビールはぐいぐいと、まるで水のように飲めてしまいます。((C)ホッピービバレッジのカレラさん)
冷奴もうまいなあ。京都に来ているということが、いい調味料になってるのかもしれません。
店内は、ベテラン女性陣3~4人で切り盛り。ここからはよく見えませんが、奥の厨房には男性陣もいるんでしょうか。
冷奴以外の4品は、深めの丸皿にいっしょ盛りで出てきました。今日の日替り2品はハムと揚げシュウマイ。シュウマイにかかっているデミグラスソースがうまいなあ。
注文の品が出されると、『ドンタス』(右から読むとスタンド)と書かれた伝票の、注文の品の金額のところまで赤線が引かれ、1,200のところに丸が付けられます。こういうスタイルの伝票は、はじめて見ました。
生大はすぐに飲み干して、続いては日本酒の“サンデシ”(640円)を“冷や(常温)”でもらいます。
サンデシというのは、3デシリットルの略。300ml瓶のことを指します。
壁のメニューには、「月桂冠 一級 三竕 640」と書かれています。この『竕』という字が、“デシリットル”の漢字表記なんですね。これまた、はじめて見ました。
他のお客さんが、「これください」とそのメニューを指さしながら注文したときに、店のおねえさんが、「はい、サンデシですね」と復唱してたので読み方がわかったような次第です。
日本酒が出されると、先ほど1,200のところに丸がつけられたドンタスの伝票の赤線が、一番右の1,600のところまで伸びて、そこに丸。サンデシの640円には、あと220円不足するので、次の行の100単位のところに200まで線を引いて丸。一番下の20円単位のところに40まで線を引いて丸が書かれます。
なるほどなあ。最後に丸で囲まれてる数字をすべて足し合わせると、お勘定が計算できるってことですね。
今は1,600のところ、200のところ、40のところに丸があるので、合計1,840円ってことになります。
私はカウンターの一番奥の席に座ってるのですが、この席の周りには、店のおねえさんたちが集まってくる。なぜかと思ったら、ここがテレビにいちばん近い場所なんですね。
店内でゆっくりと飲んでいると、ここが京都であることなんか忘れてしまいそうになりますが、テレビの下で話している、店のおねえさんたちの言葉はどっぷりと京都弁。なにやら柔らかげな耳あたりなのがいいですね。
お客さんが帰ろうと席を立つと、それに気が付いたおねえさんが「ありがとうございましたぁ~」と声を上げる。それに呼応するように、他のおねえさんたちからも「おおきにぃ~っ」という声が、合唱のように飛び交います。
セットの料理は食べ終わったけど、お酒がもうちょっと残ってるので、お新香でももらおうかな。
「すみません。御漬物盛合せ(450円)をお願いします」
「は~い。つけもり~、ひとつ~」と奥の厨房に注文が通されます。
京都の御漬物って、どんなものが出てくるんだろう、とワクワクしながら待っていると、出てきたのはごく普通の、キュウリとナスの糠漬けの盛り合わせ。ちょっと期待外れではありますが、ま、このほうが大衆食堂らしいかもね。
昼間の京都で、のんびりと1時間40分ほどの滞在。今日のお勘定は2,290円でした。どうもごちそうさま。

日替り2品と枝豆、スパサラのセット / 月桂冠3デシ(冷や) / 御漬物盛合せ
・店情報
《平成25(2013)年12月7日(土)の記録》
最近のコメント