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ひっそりと静かな気品 … お酒処「お田幸(おたこう)」(桜木町)

「お田幸」のおでん


 野毛のげの、JR桜木町駅側の入り口近くに、おでんがおいしい酒場があるという情報を得て、やってきたのは「お田幸おたこう」です。

 同じ読み方をする、おでん屋グループ(なのかな?)がありますが、そちらは表記が「お幸」で、「た」の字が違っています。こちら「お田幸」は、それとは無関係な個人店だそうです。

 店があるのは、養老乃瀧グループの海鮮居酒屋「だんまや水産」のすぐとなり。角を曲がるとすぐに「福田フライ」や「三陽」「若竹」「萬里」などの、いわゆる『野毛の関所』が待ち構えています。

 「お田幸」が、この地に店を開いたのは昭和45(1970)年ごろだそうなので、すでに創業40年を超える老舗しにせ

 それなのに、これまで「お田幸」の存在には気がつかなかったなあ。このあたりは何度も通っているのに…。まわりに、きらびやかな店が多いからでしょうか。あるいは、無意識のうちに『数ある「お幸」の1軒か』と思ってしまって注目しなかったか…。

 それくらいひっそりと、静かにたたずんでいる感じの店構えです。

 店の前には「おでん」と書かれたのぼりが出され、暖簾のれんにも、「おでん」と大書されているものの、実はこの店でおでんが提供されるのは冬場だけなんだそうです。

 その暖簾をくぐり、引き戸を開けて店内へ。

 店内は、右手がカウンター席6席、左手には4人掛けテーブル席が2卓。奥に板敷きの座敷も見えていて、4人用の座卓がゆったりと2卓、置かれています。

 カウンターの上段は、ガラス製の冷蔵陳列ケースになっていて、焼き鳥のネタがずらりと並んでいます。その冷蔵ケースの先に、9穴の燗付け器と、四角いおでん鍋が鎮座しています。

「いらっしゃいませ」

 カウンター内の厨房、店の入り口側に立つ店主から声がかかります。

 先客は、カウンターの手前側に座っている、男性ひとり客のみ。

 私はカウンターの奥から2番め。ちょうど燗付け器の前あたりに陣取って、まずは小瓶のビール(キリンラガー、380円)を注文します。

 すぐにおでんをもらって燗酒にしようと思っているので、小瓶のビールは、のど潤しですね。

 ビールと一緒に出されるお通しは、小皿に「おかき」が2枚。珍しいお通しですが、この店ではこれが定番のようです。

 さあそして、ちょっと腰を浮かして、おでん鍋をのぞき込みながら、おでん鍋の後ろで待ち構えていてくれる女将さんに、一巡めのおでん(各150円)を取ってもらいます。

「え~と、厚揚げと、ちくわぶをお願いします」

「はいはい」と、朱色の丸皿におでんを取り分けてくれる女将さん。店はご夫婦二人で切り盛りされているようです。

 カウンターの入り口側の、焼き台がある空間がご主人の、そして奥のおでん鍋のあたりが女将さんの担当領域のようですね。

 最後に、おでんのつゆをたっぷりと入れて、「はいどうぞ」と出してくれます。

 結論を先に言うと、このおでんの汁が爆発的にうまいっ! この汁だけでも、十分、酒のさかなになります。

 小瓶のビールが残り1杯になったところで、燗酒を小(350円)で注文。酒は灘の「菊正宗」(上撰)です。

 料理のツートップは、おでん(各種150円)と焼き鳥(各種150円)のようですが、それ以外にも、もつ煮込み(400円)や、牛すじ煮込み(400円)、だし巻卵(400円)など、十数品の一品料理がメニューや短冊に並んでいます。

 おっ。シメサバ(350円)発見。魚系の一品はこれと、エイヒレ(500円)ぐらいです。シメサバをいただきましょう。燗酒にもよく合いますもんね。

「珍しいネタも多いんですね。これは車麩くるまぶ?」

 おでん鍋の中央部にある、でんと大きなドーナツ型を指さしながら聞いてみると、

「そう、車麩です。この車麩がねえ、おでん鍋の出汁の味をいっぱい吸い込んで、とっても美味しくなるんですよ」

「この黒いのが混ざった練りものは、ひじき?」

「ひじきや、小さく切ったニンジンなんかが練り込まれてるんですよ」

「ウインナーも面白いですねえ。ウインナーの周りにあるのはなんですか?」

「これは、ウインナーを竹輪で巻いてるんですよ」

「へえ。じゃ、そのウインナーと、ひじきが入った練りものをください」

 2巡めは、練りものづくしとなりました。

 店内にはテレビはなく、音楽も流れていないので、とっても静か。

 先客の男性は、この店の常連さんのようで、店主と話をしながら飲んでいます。男性は店主に向かって話しかけるんだけど、店主はその男性にはもちろん、身体をちょっと斜めに向けて、私のほうにも聞こえるように話をしてくれる。

 たったこれだけのことで、私のような一見いちげん客も、疎外感、アウェイ感がなくなって、居心地がいい。

「じゃ、ぼくはそろそろ」

 とその先客が席を立ったところへ、入ってきたのは男女二人連れ。すぐにテーブル席のひとつに、荷物やコートを置くと、おでん鍋のところにやってきて、あれやこれやと注文します。

 男性は常連だけど、女性のほうは今日、はじめて連れられてきた感じ。

「この巾着きんちゃくはね、中に、シイタケやシメジなどのきのこや、ニンジン、ギンナンなんかが入ってて、おいしいわよ」

 女将さんがその女性に、わかりやすく、おすすめのネタの説明をしています。その巾着も良さそうですねえ。

 さらにもう一組、男女二人連れが入ってきて、先ほどの車麩を注文。車麩は、これで売り切れてしまいました。

 巾着はもう1個あると思っていたのに、実はもう1個は、普通の、おもちが入った巾着なんだそうで、残念ながら茸と野菜の巾着も売り切れ。

 「あとで食べよう」なんて思っていたら、いいネタはどんどん売り切れちゃうんですね。

 よしっ。それらのおでんは、次回の楽しみにとっておいて、ツートップのもうひとつ、焼き鳥もいっておきましょう。

「燗酒の小をもう1本と、焼き鳥は、レバ、皮、つくねを1本ずつお願いします」

 味は特に指定しないで注文すると、レバとつくねはタレで、皮は塩焼きで出してくれました。

 皮のカリフワ感、レバのコク、表面がカリッと焼けた、つくねのボリューム感がいいですねえ。

 初回の今日は、1時間ちょっとの滞在。お勘定は2,530円でした。どうもごちそうさま。

140106a 140106b 140106c
しめさば、燗酒(小) / ウインナー、ひじき天 / レバ、つくね、皮

店情報

《平成26(2014)年1月16日(木)の記録》

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