早めの夕方のにぎわい … 「森田食堂(もりたしょくどう)」(呉)
呉での仕事を終えて、横浜に向かう前に、駅前の「森田食堂」でちょいと一献。
「森田食堂」の創業は大正2(1913)年。今年で創業101年となる、呉を代表する老舗の1軒です。
おぉ~っ、早めの夕方なのに、すでに店内は大勢の常連さんたちでにぎわってますねえ。
みなさん、歳のころなら70前後か。
帰りのサラリーマンたちで混みあう前に、ゆっくりと「森田食堂」でくつろごう、ってことなんでしょうね。
「やあ。久しぶりですねえ。今日は呉でお仕事ですか」
そのうちの、ひとりの常連さんから声がかかります。この店に来ると、よく一緒になったので、まだ覚えてくれている様子。こういうのがうれしいんですよねえ。
すぐに女将さんも、「いらっしゃいませ。ビールでいいの? アサヒ? キリン?」と笑顔を見せてくれます。
「アサヒをお願いします」
と注文しながら、入口から冷蔵陳列棚に直行して、この店の名物のひとつ、小イワシの
さあ来ました大瓶ビール(510円)。
スパンッ!
客の目の前で景気のいい音を立てて、ビールの栓を抜いてくれるのが森田食堂流。この音が聞きたくて、ここに来ると必ず大瓶ビールから飲み始めてるような気がしますねえ。
「小イワシは温めましょうね」
と小鉢ごと電子レンジで温め直して出してくれます。
刺身や天ぷらで食べる小イワシも美味しいけれど、生姜煮だって負けてない。小イワシはすぐに鮮度が落ちるので、とれて間もない新鮮なうちに、さっと煮てしまうのがいいんでしょうね。
転勤で呉に来たごろ(2010年春)、大衆酒場を探し出すことができなかった。
「呉の人たちは、会社帰りにどこで飲むの?」と会社の同僚に聞いてみると、
「車で来とる人が多いけえ、会社帰りにはあんまり飲まんのお。だいたいの人は家に帰ってから飲むんじゃなあか。呉駅から電車で帰る人らは、『森田食堂』や『くわだ食堂』なんかの食堂で飲みよるみたいなで」
と教えてもらって、「森田食堂」や「くわだ食堂」にやって来るようになったのでした。
この2軒に、駅からは離れていますが、「寿食堂」を加えた3軒が、大衆酒場の代わりになる、呉の三大・大衆食堂です。
首都圏の場合は、人口が多いので専業の『大衆酒場』というのも成り立つんだろうと思いますが、地方だとなかなか専業ではやっていけない。だから大衆食堂が、『大衆酒場』の役目も果たすんですね。
ビールを飲み終えたところで、燗酒(白牡丹、300円)をもらって、つまみは陳列棚から、サヨリ刺身(500円)をとってきます。
サヨリは春を告げる魚のひとつ。3月から5月ごろが旬です。
こういう小魚がおいしいんですよねえ、瀬戸内海は。濃厚な旨みがたまらない。
そしてグイッと燗酒です。
ここの燗酒は、コップに注いでくれるので、文字どおり『グイッ』と飲むことができるんですね。
「白牡丹」の創業は、江戸時代前半の延宝3(1675)年。第4代将軍・徳川家綱のときのこと。創業339年の、広島のお酒の中で、もっとも古い歴史を持つ超老舗です。
そしてこのお酒は、広島を代表する甘口のお酒でもあります。
これを熱めの燗でいただくと、瀬戸の魚にぴたりと合うのがいいねえ!
店内の常連さんたちは、みなさん、人世のベテランだけあって、おいしそうに、楽しそうに酒を飲んでいるのがすばらしい。本当に幸せそうなひと時です。
最後は、この店ならではのイリコ出汁の中華そば(400円)か、細うどん(300円)で〆て帰ろうと思っていたのですが、この常連さんたちに混ざって、もうちょっとお酒を飲んで帰りたい。
そこでもう1杯、燗酒(300円)をいただいて、つまみは陳列棚から、大根、きゅうり、にんじん、イリコなどが入った、なます(200円)を持ってきます。このなますも、「森田食堂」定番の一品ですね。
「もう1日、呉に泊まっていけば!(笑)」
と引き留めてくれる常連さんたちにごあいさつをして、席を立ちます。
端数を切り捨ててくれて、今日のお勘定は2,000円。後ろ髪を引かれる思いで、「森田食堂」を後にしたのでした。
行きたいお店はたくさんあるのに、3日間では、そのほんの一部にしか行くことができませんでした。また来なきゃね。
小イワシ煮付け、大瓶ビール / サヨリ刺身、燗酒 / なます
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