ハゲの造りを肝醤油で … 「鳥乃家(とりのや)」(呉)
冬場の呉で、魚と言ったらハゲ(カワハギ)の造り(1,840円~)である。
店内の生け簀からすくったハゲを、その場で調理して出してくれるので新鮮そのもの。
ハゲの身は、フグやオコゼと同じように、白く透き通り、味わいは淡泊なのに旨く、プリッとした弾力感がすばらしい。
そして肝(きも)がまたいい。
生の肝を、醤油に溶いて、それをハゲの身にまぶすようにして食べる。
淡泊だったハゲの味に、肝のコクが加わって、えも言われぬ味わいに昇華する。
ックゥ~~ッ。合わせる燗酒がうまいのぉ!
ここは「鳥乃家」。
「秘密のケンミンshow」というテレビ番組で、かつて(2009年ごろ)『呉市に住む広島県民は、焼鳥屋で、生け簀の泳ぐ獲れたての魚を食べる!?』と紹介された焼鳥屋の1軒である。
こうした焼鳥屋に共通する特徴は、「初代店主が鹿島(呉市倉橋町)出身である」ということと、「店名に『鳥』または『とり』の字が入っている」ということがあげられる。
「本家鳥好」「第三鳥八」「鳥八茶屋」「第一三とり」「第二三とり」「三とり本通店」「第五鳥八」などがそうである。
このように『鳥』または『とり』が入ることから、これらの焼鳥屋は、総称して『とり屋』と呼ばれている。
『とり屋』発祥の店、「本家鳥好」が創業したのは、昭和26(1951)年頃のこと。
倉橋町出身で、大阪で働いていた長尾一良(ながお・かずよし)さんが、戦後、地元に戻ってきて開いたのが、ここ「本家鳥好」(開店当時は単純に「鳥好」という店名)だった。
呉で初めての焼鳥店は、すぐに市民の間でも大人気となり、1日に1,000本もの焼き鳥が出るほどの大繁盛店となった。
そこで、ここ「本家鳥好」で修業した人が次々に独立して、「第二鳥好」(現在の「竜之介」)、「第三鳥好」(現在の「第三鳥八」「第一三とり」)、……と店を出していって、現在に至る『とり屋』グループ(資本的にはそれぞれ別)が形成されたのだった。(詳細は→過去記事にて。)
当初はそうやって焼き鳥を中心に営業をしていた『とり屋』グループだったが、昭和50年代に転機がやってきた。
「養老乃瀧(ようろうのたき)」をはじめとする大衆居酒屋チェーン店が、呉にも進出してきたのである。そして当然のように、それらの居酒屋のメニューには、刺身が並んでいたし、もともと魚好きの呉っこたちも、その刺身に飛びついた。
「えっ? 居酒屋でも、刺身が売れるんだ!」
呉で居酒屋を営んでいた人たちの目からウロコが落ちた瞬間だった。
魚介類が豊富にとれる呉では、魚は自宅でさばいて食べるもの。高級な料亭などはいざ知らず、大衆的な飲食店で調理して出してもらうようなものではなかった。
そんな常識の壁を、大衆居酒屋チェーン店がコロッと打ち破ってくれたのである。
そうとなれば話は簡単。なにしろ『とり屋』グループの経営者たちは、漁師町・鹿島の出身者ばかり。魚はそれこそ、売るほどあるのだ。
さっそく生け簀のついたトラックで、鹿島から生きたままの魚を運び、店内の生け簀で活魚としてお客に出し始めたところ、これがまた大受けに受けた。
こうして『とり屋』は、活魚と焼鳥が二枚看板の、「秘密のケンミンshow」でも紹介されるぐらい、個性的な店に変わっていったのだった。
今日の「鳥乃家」なんて、『活魚と焼鳥の二枚看板』どころか、天ぷらあり、揚げものあり、鉄板焼き料理あり、鍋ものあり、一品料理あり、ごはんものあり、デザートありと、居酒屋チェーン店も顔負けの品ぞろえ。飲みものだってビール、日本酒、焼酎に始まって、ワイン、ウイスキー、カクテルまで、なんでもそろってる。
それでもちゃんと、呉名物!鳥皮のみそ煮(330円)に始まって、刺身の盛り合わせ(約2.2人前、1,840円~)、冒頭でご紹介したハゲ造り(1,840円~)、小イワシ天(480円)にタコ天(480円)といった『とり屋の根っこ』とも言える料理は残しているのがうれしい限り。
最後は、呉の酒場での〆の定番、焼きめし(みそ汁付き、450円)で〆て終了だ。
『とり屋』での宴会は、「呉に来た」って感じがするね!
ホテルの和朝食 / 社員食堂の天玉うどん / ひとりゼロ次会で「オオムラ亜」
「鳥乃家」鳥皮のみそ煮 / 刺身の盛り合わせ / 焼き鳥の盛り合わせ
・店情報 (同じ日の「MUITO BRASIL」)
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