常連さんの会話を肴に … 酒房「北国(きたぐに)」(中野)
前回、木場の「河本」の常連席が、劇場のステージのようであるということを書いたけれど、劇場型という点では、中野の「北国」も負けていない。
昭和32(1957)年創業の「北国」の店内は、L字カウンター10席程度と、その背後に4人ほど座れる小上がりの席と、同じく4人ほど座れるテーブル席という造り。
しかしながら、ほとんどの客はカウンター席に座る。カウンター席に座ることができずに、はじき出された客がテーブル席に座る。小上がりの席は、お客たちの荷物置き場になっていることが多い。
そして、何十年も、毎日のように通っている常連さんたちによる会話も、基本的にはこのカウンター席で繰り広げられるのだ。
つまり演者(=常連さんたち)も観客(=我われ新参者)も、同じカウンター席に座り、そこで演者たちの軽妙なやり取りを聞くことになる。
「河本」が、観客席からステージを見ていたのに対して、ここ「北国」では、みんながステージの上にいて、同じステージで繰り広げられる演者たちのやり取りを見る感じ。
この店の常連さんたちは、アオちゃん、ナカちゃん、テラちゃんといったように、それぞれ「ちゃん」付けで呼び合っている。
その会話はというと、
「オイラなんて、なにしろひとり暮らしだからねぇ。ゴキブリだって友達よ」
「名前付けたりしてね」
「そう。いつも来るやつにテツヤって名前を付けてんだ。『おい、テツヤ! 今日はサユリはどうした』ってね」
「サユリってだれだよ」
「サユリはテツヤのかみさんらしくてね。ときどき一緒に見かけるんだ」
といった会話や、
「昔はカフェーといって、ちょっとエロチックな店があったんだなぁ。我われもよく通ってたんだよ」
「懐かしいなぁ。カフェー↑って尻上がりに発音するんだよね。フランスのカフェ↓とは違うんだ」
といった話題などなど、実に他愛ないんだけどおもしろい。
今日のお通しはサヨリの煮物とおひたし。
飲み物は、ビール(一番搾り大瓶)から始めて、青森は八戸の地酒「八鶴」を燗(かん)へと移行。
さらにウインピー(430円)という、ウインナーとピーマンの炒めもので、角(ウイスキー)の水割りをもらって2時間ほどの酒場浴。
お勘定は2,200円でした。どうもごちそうさま。
酒房「北国」 / お通しとビール / 青森の「八鶴」(燗酒)
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