煮込みはフワとアブラ … 「鹿島屋(かしまや)」(三田)
「芝で生まれて 神田で育ち 今じゃ火消しの
という
今夜はそんな芝の地に、昭和6(1931)年に創業した、もつ焼きと煮込みの店、「鹿島屋」に、男3人でやってきた。今年で創業85年である。
いかにも老舗といった感じの古びた店(←褒め言葉です!)の店頭(店の外)には、もつ焼き用の焼き台が置かれており、その横にある入口を入ると、店内は手前にカウンター8席とその奥に4人用テーブルが1卓。さらに店の一番奥は小上がりになっていて、6人掛けの座卓があるようだ。
週まん中の水曜日、午後7時半のこの時間帯、先客はカウンターに座っている男性ひとり客のみ。
奥の4人掛けテーブルに座って、その男性客と談笑している高齢の女性二人が、二代目としてこの店を切り盛りされている、鈴木よし子さん(姉)と田辺秀子さん(妹)のご姉妹だな。吉田類さんの「酒場放浪記」で、お顔を拝見しましたよぉ~。
お姉さんが「いらっしゃいませ」と立ち上がってカウンターの中へ。
我われ3人は、空いているカウンター席へと座らせてもらい、まずは大瓶ビールをもらって乾杯だ。
「煮込みをお願いします。あとキンピラと、このヤリイカもください」
つまみのほうは名物の煮込みに加えて、カウンター上に並んでいる大皿料理の中から、すぐに食べることができるキンピラと、プクッとふくらんで、いかにも美味しそうなヤリイカの煮つけ(2尾300円)を注文した。
ん~~っ。ヤリイカ、正解! 卵がいっぱい詰まってる。
とそこへ、二人連れのお客さんが2組入ってきた。
「我われ(3人)が奥のテーブルに移りましょうか?」
と店主姉妹に声をかけると、
「そうしてくれる。悪いわねえ」
と言いながら、まず店主姉妹が4人用テーブルを立って、小上がり席のふちに腰を下ろし、そのあとに、我々3人が移動。新しく入ってきたお客さんたちはカウンター席に座った。
そして名物・もつ煮込みもやってきた。
串に刺したまま煮込まれた大ぶりの煮込みは、牛のフワ(肺)とアブラ(腸)。もつ煮込みはこの2種類しかなくて、1本が100円。
もうもうと上がる湯気がいいねえ!
練り辛子が添えられているのも、おもしろい。
まずはフワからいただく。フワ自体には味も香りもなくて、ただフワ独特の弾力感があるのみ。そのかわり、煮汁をたっぷりと吸い込んで、煮汁そのものの味と香りになる。
だから、その店の煮汁の味が、とてもよくわかる一品に仕上がるのだ。
おぉ、なるほど。けっこう甘みが前面に出てますねえ。
この店と同じ昭和8年に創業した、麻布十番の「あべちゃん」の煮込みも甘い。このあたりのもつ煮込みは、もともとこういう甘さが特徴なんだろうなあ。
そしてアブラ。牛の腸なんだけど、シロと呼ばずにアブラと呼ぶのは、腸のまわりにたっぷりとついた脂を、そのまま煮込んでいるからなんだろう。
つまり、ここのアブラは、腸そのものよりも、そこについている脂が主役なんだな。
こりゃまた濃厚だなあ。コクたっぷり!
もつ焼きは、つくね、ナンコツ、ハツ、タン、レバー、シロなどがあり、これまた1本が100円。注文が入ると、妹の秀子さんが、店の外の焼き台に焼きに行く。
こんな寒い日に、外で焼いてきてもらうのはちょっと気が引けるので注文しなかったが、あとから入ってきた常連さんと思しきお客さんたちは、ごく普通に注文してた。次回はぜひ注文してみたい。
マグロ中落ち(600円)も、煮込みと並び立つこの店の名物なんだって。これもまた次回は必食だな。
午後9時過ぎまで、1時間半ちょっとの滞在で、お勘定は3人で5,400円(ひとり当たり1,800円)ほど。
たまたま店主姉妹の近くに座れたので、この店の、そしてこの地域の昔話をた~くさん聞かせていただくことができた。
どうもごちそうさま。ありがとうございました。
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