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魚料理が猛烈にうまい … 「瀧元(たきげん)」(大久保)

三点盛りのお通し


 お通しとして出された、揚げたて熱々のメゴチの竜田揚げを食べた瞬間、その美味さに驚いた。

 テレビのグルメ番組などで、「外はサクッと芳ばしくて、中はフンワリとやわらかい」なんてコメントが決まり文句のように使われているが、ここのメゴチの竜田揚げは間違いなくそのとおり。それ以外に使う言葉が見つからないほど、すばらしい食感だ。

 お通しからこんな料理が出るなんて!

 今日は、大久保駅のすぐ近くにある「瀧元」にやってきた。

 この酒場の存在は、実は15年ほど前から知っていた。

 この店の向かい側にあった「くろがね」に飲みに来たときに気が付いていたのだ。

 ただ、店の暖簾のれんや、その上の電灯看板に、「ヤヱガキ酒蔵」と大書されていて、しかもけっこう派手はでな外観だったので、チェーン居酒屋の1軒かと勝手に思いこんでしまい、敬遠していたのだった。

 今回、久しぶりに「くろがね」に顔を出してみようかと思って調べたら、なんと「くろがね」は4年ほど前(2012年5月ごろ)に閉店していたようだ。ぜんぜん知らなかったなあ。

 「くろがね」のことを調べていて、改めて浮上してきたのが、向かいにある「ヤヱガキ酒蔵」のことだった。実際の店名が「瀧元」だということも初めて知った。

 しかも、やはり4年ほど前に、「吉田類の酒場放浪記」にも登場しているではないか!

『大久保駅前周辺の喧騒とは無縁の大衆酒場。昭和45年創業当時から、日本酒は播磨の酒蔵「ヤエガキ」のみ。店主自ら毎朝、築地市場から最良のネタを仕入れ、生でも焼いても煮ても魚がおいしい店。その日の魚介類を使った豪華な「お通し」は、それだけで一品料理。誰もが頼む名物は、鱈と特注の豆腐を利尻昆布と鰹節の出汁が入った鍋で煮込んだ「たらどうふ」。ランチの魚定食も好評だが、残念ながらお酒の提供はない。』

 番組の紹介ページには、そう書かれている。

 そんなわけで、今日は、仕事帰りに大久保駅で下車したのであった。

 店内は、入ってすぐ左手に8席の直線カウンター席、その奥には、部分的にしか見えないけれど、23席分の座敷席があって、合計31人が入れるそうだ。

 木曜、午後7時過ぎのこの時間帯、カウンター席には一番奥に先客がひとり居るだけ。でも、奥の座敷席には何組かのグループ客が飲んでるらしく、ワイワイと楽しそうな声が聞こえている。

「いらっしゃいませ。こちらにどうぞ」

 とカウンター席を指し示してくれたので、入口から2番目ぐらいの席に腰を下ろした。

「お飲み物は?」

「大びんのビール(サッポロ黒ラベル、580円)をお願いします」

 店は男性3人が切り盛りしていて、ふたりはカウンター内の厨房で調理を担当。ひとりがカウンターの外にいて、接客や飲みものを担当している様子。

 カウンター内の男性から、「お通しが出ますからね」と声がかかる。

 ビールを飲みながら、写真付きのメニューを眺めているところへ、お通しの三点盛り(550円)が出された。

 お通しの内容は、日によって変わるらしいが、今日は「エビとブロッコリーのマヨネーズソース」、「エシャレットとモロキュウ」、そして冒頭でご紹介した「メゴチの竜田揚げ」の3点だ。

 このお通しの存在も、実はこの店の名物のひとつらしい。これだけでビールの1~2本、あるいは酒の1~2杯なら軽く飲めそうだ。

 このお店、表の看板に『酒客の友・大衆酒場』と書かれているものの、料理の値段はけっして大衆酒場の価格ではない。

 たとえば刺身。「マグロぶつ」が900円。盛り合わせは一人前が1,500円だ。

 魚料理は煮物も焼物も、だいたい700~900円ほど。でも、写真を見ると、いずれもボリュームがあって美味しそうだ。

 そんな中、「酒場放浪記」のサイトでも紹介され、この店のメニューでも、それだけ1ページ丸ごとを使って、『当店名物』と大書されている「たら豆腐」(950円)をもらうことにした。初回はやっぱり名物を食べておかないとねえ。

 「たら豆腐」は、大鍋にツユだけスタンバイされていて、注文をうけてから、下ごしらえを終えて冷蔵庫に保存されているタラひと切れと、ひとかたまり(半丁ぐらい?)の豆腐を、その場で二つに切り分けて、鍋に投入する。数分待ったらできあがり。

 丼のような器に盛って、刻みネギとカツオ節をトッピングし、レンゲを添えて出してくれる。

「お好みで、ポン酢をかけてみてくださいね」とのこと。

 薄味のツユの旨さもさることながら、タラの食感(=できたての煮魚のようなジューシーな感覚)が素晴らしい。

 これと比べると、冬場によくいただく小鍋のタラ豆腐は、「タラに火が通りすぎて、身がパサパサになってしまっていることが多い」というのがよくわかる。

 ポン酢をかけると、味がきゅっと締まったような感じになって、またうまい。

 複数人でひとつの「たら豆腐」をたのんだ場合には、取り分けるための小鉢にも、ツユを張って、それを人数分、出してくれている。なにしろツユが美味しいだけに、これもうれしいサービスだね。

 その「たら豆腐」に合わせて、「八重垣 男酒 辛口酒」(400円)を燗でもらうと、受け皿の上に大きな一合猪口ちょこが置かれ、燗づけされている大きな徳利から、表面張力になる(ちょっとだけ受皿にこぼれる)まで、お酒を注いでくれる。

 このお酒がまたいい。知らなかったなあ、「八重垣」。

 1時間半ほど楽しんで、今日のお勘定は2,480円。

 本当にしっかりとした魚料理の店だった。どうもごちそうさま。

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「瀧元」 / たら豆腐 / 八重垣 男酒 辛口酒(燗酒)

店情報

《平成28(2016)年5月26日(木)の記録》

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