牛もつ煮込みは高密度 … 「千成(せんなり)」(巣鴨)
会社からの帰り道、巣鴨駅で途中下車してやって来たのは、『芝浦直送・朝〆モツ焼』が看板の「千成本店」だ。
このブログに書くのは初めてだけど、実はこの店にやって来たのは2度め。
最初に来たのはブラジルから一時帰国していた昨年の10月のことだった。
坂崎重盛(さかざき・しげもり)さんが「東京煮込み横丁評判記
」(中公文庫、2015年12月、720円+税)の文庫化のために追加取材をされるということで、「古典酒場」編集長の倉嶋さんや編集の方と一緒に、ここ「千成」の煮込みをいただいたのだった。(→そのときの記録は、「MUITO BRASIL」にあります。)
そのときは、坂崎さんや倉嶋さんの話がおもしろすぎて、看板メニューである煮込みの記憶が、残念ながらあまり残っていなかった。
『ぜひもう一度、あの煮込みを食べてみなければ』
と思いながら、なかなか来ることができず、それから8ヶ月たった今日、やっとそれが実現したのであった。
火曜日、午後7時半の店内は、開けっぱなしの入口から見ると、ほぼ満席に見える。
「ひとりですけど……」
入口にいた店のおにいさんに、そう声をかけてみると、
「カウンター席にどうぞ。こっちから3番めの席です」
と場所まで指定してくれた。よーく見ると、満席に思えたカウンター席も、両側の男性客の間に埋もれるように、ひとつだけ空いている席があった。
「すみません。間に失礼します」
両側の客にそう声をかけながら、その席に腰をおろすと、これでカウンター席は本当に満席になった。
「お飲みものは?」
腰をおろすやいなやというタイミングで、店のおにいさんが声をかけてくれる。
「大瓶のビール(617円)を、サッポロで」
ここの大瓶ビールは、サッポロとアサヒが選べるのだ。ここに来るまでの電車内で、少しだけ「千成」のメニューの予習をしておいたのが良かった。
すぐにビールが出されたところで、懸案の「牛もつ煮込み」(593円)を注文すると、まずはお通し(250円)の昆布の煮物が出され、追いかけるように牛もつ煮込みもやってきた。
牛もつ煮込みは、小ぶりの小鉢で出されるので、出てきた瞬間、「少なっ!」と思ってしまうが、食べ始めると、ぎっしりと牛もつ密度が高いことに気がつく。
豚もつ(シロ)と比べると、牛もつ(シロ)は、厚みがあって、濃厚な脂肪の旨みが強いのが大きな特徴。豚もつのテッポウと比べても、牛シロのほうが厚みがある。
ここ「千成」の牛もつ煮込みは、その牛シロが、トロトロになるぐらまで煮込まれているのが大きな特徴。かと言って、牛シロの弾力感がなくなってしまっているわけではない。
そして噛みしめると、旨さと、ほんのりとした甘さが口の中に広がっていく。
なるほど、これはいいねえ。
それにしても、この牛もつ煮込みの価格表記がおもしろい。税抜き価格が549円で、税込み価格が593円。どちらもキリがよくない数字なのだ。
税抜き価格の549円は、以前の消費税のときに決まったんだろうけど、3%で計算してみても、5%で計算してみても、やっぱりキリがよくない。(549/1.03=533, 549*1.03=565, 549/1.05=523, 549*1.05=576)
どんな経緯があって、こういう価格設定になったんだろうなあ。そんなことが気になって仕方がない(笑)。
ビールに続いては、芋焼酎「さつま白波」(400円)をロックでもらうと、カウンターの中に置かれている一升瓶の「黒白波」を、氷を入れたロックグラスのふちまで、たっぷりと注いでくれた。
ックゥ~ッ。
予想どおり、この濃厚な味わいの牛もつ煮込みには、すっきりとした飲み口の焼酎ロックがぴったりだ。
焼きものもぜひ食べていこう。
ここのもつ焼きは、基本的に1本が117円で、味は塩、タレが選べる。
「おまかせセット」というのもあって、これは5本で529円。もつの種類は選べないが、1本あたり106円弱とお得になる。
私の両側の、それぞれ男性ひとり客も、この「おまかせセット」を注文している。
「おまかせセットを塩で」とか、「おまかせセットをタレで」といった注文の仕方をしているので、5本全部を塩で焼くか、5本全部をタレで焼くかというのが選べるようだ。
メニューをじっくりと眺めていると、「手造り・豚棒」(1本159円)というのが目についた。
さらに『希少』と注意書きされた「なんこつ」(1本117円)に、「輪」「たたき」「ちょうちょ」という3種類があるのも気になる。
特に「ちょうちょ」。なんだろうなあ、これは??
「すみません」と店のおねえさんを呼び止めて、
「これ(とメニューを指差しながら)豚棒(とんぼう)って読むんですかねえ、これを1本と、なんこつのちょうちょを……」
と注文し始めると、おねえさんが、
「なんこつは、ちょうちょも、他のものも、ぜんぶ売り切れたんですよ。ごめんなさい」
なんと! そんなにも希少部位なんですね。残念だ。
「じゃあ、豚棒を2本。タレと塩で1本ずつ焼いてください」
おねえさんが焼き台に注文を通すのを聞いていると、トンボウではなくて、トンボと短く発音しているようだった。
その豚棒は、豚肉と豚軟骨で作ったツクネなのかな。
塩焼きは肉の味がよくわかり、タレ焼きは旨みが強くなる。どっちも捨てがたい。
お皿に添えられている辛味噌がまたいい。ちょっとつけていただくと、ビシッと味が引き立つ。
この辛味噌は、どのもつ焼きにも添えて出してくれるようだ。
1時間ほどの酒場浴。今日のお勘定は2,178円なり。どうもごちそうさま。
「千成」の斜め向かいにある「ゆたか食堂」も気になるなあ。今度、行ってみなければ!
お通し、牛もつ煮込み、大瓶ビール / 黒白波ロック / 豚棒のタレと塩
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