改めて太田さんに感服 … 居酒屋「さきと」(赤坂@福岡県)
改めて、太田和彦さんの選球眼の確かさに感服した!
居心地よし、味よし、値段よし。まったく素晴らしい居酒屋である。
しかもこの店の場合、いわゆる酒場街の中にある店ではなくて、街外れの路地の中にポツンと存在している。よくもまあ、この店を見つけることができたもんだ。
ご常連のどなたかからのご紹介なのかもしれないなあ。
太田さんは、とにかく探究心が強いのだ。
私が最初に太田さんにお会いしたのは、今から14年前。平成14(2002)年の夏だった。
「中野区に住んでるんです」という話をしたところ、
「中央線沿線はあまり得意じゃないんですが、どこがおすすめでしょう」
と、いきなり太田さんに聞かれて驚いたことを思い出す。
当時、太田さんはすでに飲み歩き界(そんな界があるのか?!)のスーパースター的な存在。平成11(1999)年から始まって、11年間ものロングランとなった、旅チャンネルの番組、「全国居酒屋紀行」も放映されていたころで、まさに雲の上の人だったのだ。
それでもなお、私たちにすら「おすすめの酒場」を訪ねてくださるような探究心が、いい酒場の発見につながってるんだろうなあ。見習わなくっちゃ。
さて「さきと」。
この店に2度ほど来たことがあるという、同行の宇ち中さんから、「基本的に予約は受けていないお店なので、開店前に並びましょう」と教えてもらい、倉嶋さんと3人で店の前に到着したのは、開店時刻(午後6時)の15分ほど前。
店の入口には、3人連れ一組、カップル一組の、合わせて5人が列を作っていた。我われ3人も、その後ろに並ぶ。
「店内はカウンター12席らしいから、この位置ならば大丈夫?」
と宇ち中さんに確認したところ、
「ところがそうでもないんですよ」という返事。
基本的には予約は受けていないお店ながら、常連さんになると予約ができるんだという。
「常連さんが多いお店だし、今日は金曜日でもあるので、けっこう常連さんの予約が入っているんじゃないかと思うんです。それを確保したうえで、あと何席が残っているかということなんです」
うわぁ、それはきびしいのぉ。
そうこうしているうちに、我われの後ろにも何人かの人が並び、開店時刻を迎えた。
店内から出てきた店主の奥さんが、いちばん先頭の人たちに「何名様ですか?」と尋ね、「3人です」と答えると、「じゃ、こちらにどうぞ」と店内のカウンター席へと案内される。
次の2人も店内に入り、我われも「3人です」と答えると、「ではこちらに」と、L字カウンター長辺のちょうど真ん中あたりの席に案内された。
そしてなんと、ここで完全なる空席は終了した。
我われの後ろのサラリーマンらしき2人連れは、
「7時半から予約されているお客さまがいらっしゃいますので、それまでの間でよろしければ……」
という条件付きで店内に案内され、それより後ろは、完全にアウトだった。
危なかったなあ。でも、なんとか入れて良かった良かった。
ちなみに、遅い時間帯に行くと、席が空いていることもあるらしいので、開店前に並ぶことができなかった場合は、遅い時間帯をねらうのがいいかもね。
各種銘柄が選べる中瓶ビール(580円)は、「キリン一番搾り」を選んで乾杯。
料理は「クエ(本あら)刺」(1,000円)と「ごまさば」(800円)、「おばいけ」(800円)、そして「おいしいトマト」(500円)を注文する。
我われの前に入ったカップルは、この店に何度か来ているようで、「お料理のほうは?」という店主の問いかけに、「おまかせでお願いします」と答えている。
そのカップルの前に出される料理の数々を見ていると、「おまかせ」というのも、とてもいい注文の仕方だと思った。
「つき出しです」と出されたのは、大好物の「鯛のかぶと煮」だ。この一品で、もう私のテンションは上がってしまった。
大喜びで写真を撮ろうとしていると、さらに「こちらのつき出しはクエの南蛮漬けです」。おぉ~っ。これもまた、博多ならではの大ごちそうだなあ。
さらにもう一品のつき出しは、できたて熱々の「いわし団子」(つみれ)だ。うぅ~っ。その香りだけでもう、すばらしく美味しそうだ。
なるほど。3人で来たから、つき出しも3種類か。これはいいねえ。
ビールのあとは、日本酒に切り替える。いろいろな銘柄がそろっているが、福岡に来たら、やっぱり福岡のお酒を飲まなきゃね。
そして出される、ずっしりと厚みがあるクエ(本あら)刺。柚子胡椒でいただくのがうまい。
ごまさば。福岡では普通に食べてたのに、よそにはないんだよなあ。たっぷりとトッピングされた刻みネギが重要なポイントだね。
おばいけには、たっぷりと赤身も付いている。こんなおばいけ、食べたことがないぞ。
「生姜醤油で食べてみてください。普通のおばいけもお出ししますから、こちらは酢味噌で」
と言いながら、普通のおばいけも出してくれた。
ニコニコと接客してくれる店主夫妻がいいなあ。お客に美味しいものを出すのが嬉しくてたまらない様子。それが客にも伝搬して、みんなが嬉しくなる。
「おいしいトマト」は、真っ赤に熟れた小ぶりのトマト。メニューに書かれているとおり、本当に「おいしいトマト」だ。
福岡の地酒をたっぷりといただいて、2時間ほどの「さきと」浴。
お勘定は3人で9,420円。なんと、ひとり当たり3,140円だった。
近くに住んでたら、絶対に常連になりたい名居酒屋だ。どうもごちそうさま!
鯛かぶと煮、クエの南蛮漬け、いわし団子 / クエ(本あら)刺 / 「田中六五」「繁桝」
赤身の付いたオバイケ / 普通のオバイケ / おいしいトマト
「岩波」純米酒 / ずらりと並ぶメニュー / 「三井の寿」純米吟醸
・店情報
| 固定リンク | 0
コメント