カツ丼をつまみに一杯 … 「天平食堂(てんぺいしょくどう)」(大塚)
『久しぶりに大衆食堂のカツ丼をつまみに一杯やるか!』
やってきたのは大塚(巣鴨新田)の「天平食堂」だ。
創業から60年以上がたち、今は2代目となる店主ご夫妻が切り盛りしているそうなので、かなりの老舗である。
入口引き戸をガラリと開けて、店内に入るなり、右手の厨房の中にいるご主人から「いらっしゃいませ」と声がかかる。
店内は入口すぐの土間に、4人掛けのテーブル席が4卓。しかし、その内の1卓は壁際にピシャリとくっつけて配置しているため、その片側(2人分)しか座ることができない。
その奥が小上がりの座敷席になっていて、4人掛けのテーブルと同じぐらいの大きさの座卓が4卓並んでいる。ただし、各卓の座布団は向いあって2つずつしか置かれていないので、基本的には「2人で1卓を使ってくれ」ということのようである。(予備の座布団も置かれているので、人数が多い場合には、ギュッと詰めればもっと座れる。)
先客は2名。それぞれ1人客で、入口側のテーブル席を1卓ずつ使って座っている。私も残る1テーブルに腰をおろす。
すぐに店主の奥さんが、「いらっしゃいませ」と、湯飲みに冷たいお茶を入れて出してくれる。
「大びんのビール(550円)をください」
「アサヒとキリンがありますが」
「キリンで!」
とても穏やかで上品なやり取りが、昨年閉店した「はまや食堂」(横浜・杉田)の店主夫妻を
『なんとカツ丼は680円か。安いなあ。味噌汁とお新香は付いてくるだろうから、カツ丼を待つ間のつまみには「おひたし」(200円)をもらおうかな』
メニューを眺めながら、そう考える。「すみません」と奥さんを呼んで、
「カツ丼と、お新香をお願いします。お新香は先に出していただいてかまいません」
注文を終えて、ゆるゆるとビールを飲んでいるときに、「おひたし」をたのまないといけないのに、間違えて「お新香」(200円)を注文したことに気がついた。
『しまった。お新香がダブって出てきちゃうかな。おひたしに代えてもらおうか。でももう用意してくれてるだろうなあ……』
なんて思っているところへ、案の定、お新香が出てきた。キュウリと白菜のぬか漬けである。
結果的に言うと、お新香を注文してて、まったく問題はなかった。
定食についてくるお新香は、かくや漬けのように細かく刻んだ漬物とタクアンだったので、ダブることはなかったのでした。
追いかけるように「お通しです」と、ホワンと温かい枝豆(サービス)が出された。あらら。「はまや食堂」のお通しも、いつも枝豆だったなあ。なんだか懐かしいや。
大衆食堂で飲む楽しみを覚えたのは、2010~2012年に呉(広島県)に単身赴任していたときだった。
呉には「森田食堂」「くわだ食堂」「寿食堂」などの老舗大衆食堂のそれぞれが、それぞれに人気を博していて、平日はもちろん、週末には朝から酔客も多かった。
冷蔵陳列ケースにずらりと並んだ料理を見ながら、自分の好みのお皿を取ってきて、それをつまみに酒を飲むのである。
東京下町の大衆酒場と同じぐらいのコストパフォーマンスなのが良かったなあ。
そんなことを思いながらビールを飲んでいるところへ、カツ丼の登場だ。
ちゃんと
まずは「カツ丼の頭」(=カツ煮)の部分を中心に、ときどき
ビールがなくなったところで、ウーロンハイ(450円)をもらう。
『ウーロンハイが450円というのは、この店にしては高いなあ』
と思っていると、ウーロンハイは、なんとジョッキで出された。なるほど、これなら納得だ。
このあたりで、先客の二人は順次席を立ち、入れ替わるように新しいお客さんが入ってきた。
一組は中年の男女。それぞれがウーロンハイをもらい、肉野菜炒め(500円)、冷やっこ(200円)、豚しょうが焼き(550円)を単品で注文。
その次に入ってきた男性ひとり客は、大瓶ビール(キリン)に、冷やっこ、ハムエッグ(380円)、アジフライ(1人前2尾で300円)を、こちらも単品で注文した。
いろんなものが安いから、こうやって大衆酒場風に飲むこともできるんだろうな。
最後に残っていたごはんを、残しておいたお新香と味噌汁でいただいで〆。満腹だ!
1時間10分ほど楽しんで、今夜のお勘定は1,880円。どうもごちそうさま。また来ます。
・店情報
| 固定リンク
コメント