横須賀で呉酒場を偲ぶ … 「鳥好(とりよし)」(横須賀中央)
呉の焼き鳥と、横須賀のとっても濃いホッピー。
その両者がいっぺんに楽しめるのが、ここ、横須賀の「鳥好」だ。
しかも、横須賀「鳥好」の大将は、呉の焼き鳥屋が、もっとも華やかな時代に独立して、この店を立ち上げているので、『古き良き時代の呉の焼き鳥屋』が、そのままここに、時代を超えて定着されているのである。
『古き良き時代の呉の焼き鳥屋』とは何なのか。
すごく単純なことなんだけど、「焼き鳥に専念してる」というのがその答えだ。
呉(倉橋の室尾)出身の長尾一良さんが、呉の「鳥好」(現在の「本家鳥好」)を開店したのは、昭和26(1951)年のこと。
長尾さんは、戦時中に働きに出ていた大阪で焼き鳥と出会い、戦後、呉に戻って焼き鳥屋を開いたのだった。
その焼き鳥屋が、行列ができるほどの大人気店となり、次々にのれん分けした店舗が広がっていったのだった。
それらの店が「鳥八」「三とり」「鳥晃」などなどと、「鳥」や「とり」が入った店名だったことから、これらを総称して『とり屋』と呼ぶようになったのだった。
そんな呉の『とり屋』が転機を迎えたのは、昭和50年ごろのこと。
大手居酒屋チェーン店が、呉にも進出してきたのである。
これ以降、それら大手居酒屋チェーン店に負けないように、呉の『とり屋』の多くに
横須賀の「鳥好」が開店したのは、この転機が訪れる前、昭和40年代後期だった。
だから横須賀の「鳥好」には魚介類のメニューはない。
呉の『とり屋』も、昔はきっとこんな感じだったんだろうなあ、と思わせてくれる酒場なのである。
そんな横須賀の「鳥好」に来たら、まずはホッピー(380円)と「鳥皮のみそ煮」(1本70円)だ。
鳥皮と同じ鍋で煮込まれた玉子とコンニャクも食べたかったので、セット(鳥皮3本+玉子とコンニャクが各1個)でもらった。
後で知ったことだけど、このセットが500円。実は玉子とコンニャクが意外と高いんだなあ……。
ちなみに玉子とコンニャクは単品では出していないので、セットでしか食べることができない。
そして、忘れてはならないのが、だんご(2本1皿300円)と串カツ(3本1皿380円)だ。
だんごというのは“つくね”のことだんだけど、ここのは揚げてソースをかけているのが大きな特徴。
これは呉の「本家鳥好」も同じ。というか、「本家鳥好」が元祖だ。
「本家鳥好」の焼き台は、工夫好きな2代目店主・上瀬弘和さんが若かりし頃(昭和35年頃)に独自に考案したもので、上下から一気に焼き上げることができる。
普通の焼き鳥はこの焼き台を使うことで短時間で焼けるのだが、つくねの場合はこの高火力が災いして、表面がいい感じで焼けても、中がレアになってしまうのだ。
そこで、だんごだけはフライヤーを使って揚げることで、焦がさずに、中までじっくりと火を通すことができるようにしたというのが、「鳥好」ならではのだんごの始まりだ。
カリッとした表面の食感が実にいいのである。
串カツも「本家鳥好」と同じで、焼き鳥用に串刺しにした鶏肉をカツにしたもの。呉には、この鶏串に衣をつけて天ぷらにして出してくれる店もある。
最後は横須賀「鳥好」の店主・野村宏さんの生まれ故郷である成田の名産品、「瓜の鉄砲漬」をいただいて〆とした。
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