
倉嶋編集長が予約してくださっていた酒場は「Sake Kaiseki 醸音 -kamone-」。
瑞鷹酒造の取材をしたときに、常務・吉村謙太郎さんに教えていただいた、「無濾過生原酒専門日本酒バー」なんだそうな。
無濾過生原酒とは、どんな日本酒なのか。
それを知るには、無濾過生原酒という6文字熟語を、「無濾過」「生」「原酒」という三つの部分に分けてみるとわかりやすい。
発酵が終わった『もろみ』から、雑味やにごりを取るための「濾過をせず」(=「無濾過」)に搾り、雑菌の繁殖を防止するための「火入れもせず」(=「生」)、アルコール度数を調整するための「加水もしない」(=「原酒」)で瓶詰めする。
この三拍子がそろった日本酒が無濾過生原酒なのである。
だから、味が濃く、香りが強く、ガツンと効く。
『焼酎に近いぐらいのアルコール度数があるのに、日本酒の旨みや香りも、これまた強烈に持ち合わせている』という、実に呑兵衛好みのするお酒ができあがるのだ。
この店では、その無濾過生原酒を、コースで出される料理のように順番に提供してくれる。まるで会席料理の料理のようであることから、“Sake Kaiseki”(酒会席)と称しているんだって。
店内はカウンター7席、テーブル1卓4席の合計11席。
その小さな空間を、店主・池田朋弘さんがひとりで切り盛りされている。
まず最初に注がれたのは、熊本は瑞鷹酒造の「崇薫」。
追いかけるようにお通しの三点盛りと、「和らぎ水」(日本酒を飲みながら飲む水)を出してくれる。
さっきも書いたとおり、原酒はアルコール度数が高い(18度ぐらいある)ので、ちびりちびりと、途中でほぼ同量以上の「和らぎ水」もいただきながら飲み進める。
2杯めとして出してくれたのは、京都・白杉酒造の「白木久」。
熊本生まれの店主は、高校を卒業してすぐに関西に出て、主として京都で修業。そのときに無濾過生原酒と出会ったそうだ。
壁には「本日の予約メニュー」と書かれた紙が張り出されている。店内にあるメニューはこれだけだ。
その内容は、さわら西京焼き、ぶた角煮(丼あり)、茶わん蒸し、醸音オイスター、だし巻き玉子、トマトスライス、スナップえんどう、ゆきやぎそうめん、にしんそば、バニラアイス(日本酒シロップがけ)の10品。値段は書かれていない。
この「本日の予約メニュー」の中から、茶わん蒸し、醸音オイスター、だし巻き玉子の3品を注文した。
なにしろ店主ひとりで切り盛りしているから、料理は店主の手があいたときに作ってくれる。だからあえて「本日の『予約』メニュー」と、『予約』という言葉を入れてるのかもね。
『予約しとけば、そのうち出てくる』みたいな感覚なのかもしれない。(←店主に確認してみたわけではありません。)
料理は、まずできたて熱々の「だし巻き玉子」が出てきて、すぐに「醸音オイスター」も出される。
京都で修業されただけあって、料理は比較的薄味で、濃厚な無濾過生原酒によく合う。
そして醸音オイスターが実にすばらしい。
これは広島産の大粒のカキを、熊本産の赤酒などを使って1時間以上も煮込み、冷ましたもの。もともとは大きかったカキが、ギュッと小さく凝縮されて、その分、旨みもギュッと凝縮されて詰まっている。
その味わい(旨み)の濃厚さといったら!
とろりと軟らかくなるまで煮込まれたカキの身を、ほんの豆粒ほど口に含むだけで、口の中いっぱいに旨みが広がって、お酒がグイグイと進む。
続く日本酒は「大治郎」(滋賀・畑酒造)に「神開」(滋賀・藤本酒造)。
そして出てきた「茶わん蒸し」には、イクラがトッピングされていて、これまた味わいが絶妙。しかも熱々とろりと軟らかいのがいいね。強い日本酒にぴったりとよく合う味つけだ。
さらに「越前岬」(福井・田辺酒造)、「遊穂」(石川・御祖酒造)と続いたあと、熊本の地酒に戻って「亀萬」(熊本・亀萬酒造)で〆る。
最後の食事ものとして、熊本産の極細手延べそうめん「ゆきやぎ」をいただいた。このそうめん、日本一細いらしくて、なんとたったの18秒でゆであがる。麺が細いので、ツユもよくからむのである。
たっぷりと3時間以上楽しんで、今宵のお勘定は二人で17,900円(ひとり当たり8,950円)。
我われ二人は、最初から「この1軒」と腰を据えて思いっきり飲んだので、ちょっと高めのお勘定になりましたが、「食べログ」などでは、予算5~6千円ぐらいと紹介されています。ご参考までに。
やぁ、よく飲んだ、よく食べた。これ以上はもう飲めない、食べられない。
無濾過生原酒ばかりをこんなに飲んだのは、今夜が初めてでした。
お忙しい取材の合間に、こんなすばらしい酒場をご紹介いただき、本当にありがとうございました。>倉嶋編集長

「崇薫」 / お通しと和らぎ水 / 「白木久」

だし巻き玉子 / 「大治郎」「神開」 / 茶わん蒸し

「越前岬」「遊穂」 / 「亀萬」 / ゆきやぎそうめん
・店情報
《平成28(2016)年8月26日(金)の記録》
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