冬の味・牛すじ煮込み … 焼鳥「川名(かわな)」(阿佐ヶ谷)
「川名」には2種類の煮込みがある。ひとつは「豚軟骨もつ煮込み」、もうひとつは「牛すじ煮込み」だ。
「川名」でしか食べることができない、「川名」固有の煮込みは、前者の「豚軟骨もつ煮込み」のほうだ。
その名のとおり、豚軟骨(のど軟骨)を、大根やごぼうなどの根菜類と一緒に煮込んだものなんだけど、作るのにものすごく手間ひまがかかるんだそうな。
その手間ひまのかかりようたるや、煮込みが飛ぶように売れる冬場は、とてもやってられないほど。そこで冬場は「牛すじ煮込み」を出すようになったというのが、ことの顛末だ。
なので、冬場の今は、メニューには「牛すじ煮込み」(324円)しか出ていない。
こちらも牛すじ肉を、大根やごぼうなどの根菜類やコンニャクと一緒にグツグツと煮込んだもの。
コクの強さ(甘みと旨み、脂分の多さ)からいくと、「牛すじ煮込み」のほうが
木曜日の今日、「川名」に到着したのは午後7時半。
そろそろすき始める時間かと思いきや、まだまだお客が多かった。しかもグループ客が多いので、二人だけで店を切り盛りしている店主夫妻も、まだまだ大忙しの様子だ。
なにしろ看板料理でもある焼き鳥を焼くための焼き台が店の外にあるからなあ。ひとりは必ず焼き台の番をしていないといけない。そうすると店の中は中で、てんてこ舞いの状態になるのである。
飲食店はどこも慢性的な人手不足に陥っている。「川名」も例外ではないのだ。
そんな状況を見ながら、カウンター席の一角に腰をおろし、「生グレープフルーツサワー」(411円)と「牛すじ煮込み」(324円)を注文した。
「牛すじ煮込み」は、焼き台の端っこに置かれた鍋で煮込んでいるものを、サッと小鉢についでくれるだけなので、たとえ忙しいときでも、すぐに出てくる。お腹がすいているときの最初のおつまみとして、ちょうどいいのである。
その煮込みをつまみながら、サワーを飲んでいるうちに、徐々にお客さんが減ってきた。やはりこのくらいの時間帯が、ちょうど入れ替わりの時間帯のようだ。
午後8時に向かって、だんだんと減っていったお客さんは、8時を回ったところで、今度はまた増え始めた。
この辺からが、「川名」にとっては『第三波』となる時間帯なんだろうな。
午後4時開店の「川名」は、開店直後に、毎日のようにやってくる年配の常連さんたちが訪れてくる。これが『第一波』である。
この『第一波』は、6時ごろまでに収束し、6時過ぎぐらいから『第二波』が始まる。『第二波』の主役は、この近隣で働いている会社員のみなさんたちだ。
そしてその次。ちょうど今ぐらい(8時過ぎ)の時間帯からが『第三波』となる。都心部で働いていた人たちが帰路につき、自宅に帰る前に、ちょっと立ち寄る時間帯だ。
『第三波』からは、明確な波の形にはならずに、閉店時刻までだらだらと高い波が続くことが多い。
近くの店で飲んでた人たちが二次会でやってきたり、都心部で飲んでた人が、「帰る前にもう1杯」と飲み直しにやってきたりするからだ。
その『第三波』が高くなってしまわないうちに、もう1品、料理をもらうことにしよう。
ボリュームたっぷりのサラダにするかな。今日のメニューに並んでいるサラダは、「アスパラサラダ」、「生ハムサラダ」、「トマトサラダ」の3種類。いずれも432円である。
そんな中から、「生ハムサラダ」を選択。「生グレープフルーツサワー」もおかわりした。
出てきたサラダは、予想どおりのボリューム。
大きな丸皿にまずレタスが盛られ、その上にたっぷりのオニオンスライス。それを覆いつくすように生ハムである。皿のフチには、バナナやパイナップルなども添えられる。
『第一波』のときに多い、年配の常連さんの中には、「野菜や果物はこの店でしか食べない(≒食べる機会がない)」という方も多いんだそうな。
『それならば、ここでたっぷりと食べて帰ってもらおう』
ということで、こんなにボリュームたっぷりのサラダにしたり、お通し(サービス)を果物(今日はオレンジ2切れ)にしたりしたんだそうな。
「うちのお客さんには、ずっと元気でいてもらって、いつまでも店に来てもらわないといけないですからねえ(笑)」と店主。
「これもどうですか」と出してくれたニンジンがまた良かった。
塩ゆでして、オリーブオイルをかけただけのニンジンなんだけど、甘みがすばらしい。
『ニンジンって、こんなに甘かったっけ?』と驚いた。
ニンジンもさることながら、オリーブオイルもいいのかもね。イタリアは、トンマーゾ・マシャントニオという有機農園で採れた、エキストラバージン・オリーブオイルなんだそうな。
午後9時まで、1時間半の酒場浴。席料108円が加わって、今夜のお勘定は1,686円なり。どうもごちそうさま。
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