関東煮と肉皿で昼間酒 … 大衆食堂「稲田屋(いなだや)」(福山)
お盆の帰省からの帰り道。今回も、今治から高速バスで福山へと移動して、福山から新幹線で東京に向かうというコースを採った。
福山に到着したのはお昼の12時40分ごろ。
予約している新幹線は、福山発が午後3時ごろなので、まだ2時間ちょっと時間がある。
というか、それくらいの時間的な余裕がとれるように、早めに松山の実家を出てきたのである。
その目的は、もちろん福山でちょっと昼飲みをして帰ること。
『福山と言えばここ』というほど有名な「自由軒」は、残念ながら今日、火曜日は定休日。
でも大丈夫。福山で昼間っから飲める酒場は「自由軒」だけではない。
今日は『福山人のソウルフード』とも呼ばれている
初めて行った前回、予定の新幹線までの時間が40分しかなくて、大急ぎで関東煮2本を小瓶のビール1本で流し込んだのだった。
そのとき、『次はゆっくりと来てみたいなあ』と思ってから早2年。やっと来ることができました。
店内には自然木の長テーブルがずらりと並んでいる。椅子がベンチシートなので、それぞれのテーブルは、ゆったりと6人、ギュッと詰めれば8人ぐらいで囲めるだろうか。
まだランチタイムのこの時間帯、店内はけっこうにぎわっている。
「おひとりさん? こちらか、こちらに相席をお願いします」
完全に空いているテーブルはなくて、長テーブルに2人連れが座っている2卓のどちらかに座るようにと、店のおねえさんが案内してくれた。
その一つに座りながら、「ビールを大瓶(650円)でお願いします」と注文すると、「大瓶はアサヒ? キリン?」とおねえさん。「キリンで」と返事すると、すぐにキリンラガービール大瓶とコップがやってきた。
「注文が決まったら呼んでくださいね」と言うおねえさんに、
「今日は定食はあるんですか?」と確認してみる。
「定食」(800円)は、平日の昼どき(午前11時~午後1時半)にだけ提供される「ご飯、肉皿、漬けもの、みそ汁」のセットのこと。それぞれを単品で注文するよりはお得なので、もしあれば、それからスタートしようと思っていたのだ。
なにしろ平日のこの時間帯にやって来れる機会は、めったにないからねえ。
しかしながら、おねえさんの返事は、「今週は、定食はお休みなんですよ」というもの。やっぱりお盆シーズンは、定食はやっていないんですね。
「じゃ、串を白2本、黒2本で。あとネギもください」と注文した。
『串』というのは、この店の名物「関東煮」(1本160円)のこと。「関東煮」といっても、おでんではなくて、この店独自の牛もつ煮込みのことなのだ。
『白』は牛シロ(腸)を、『黒』は牛フワ(肺)を、それぞれひと口大にカットして串に刺し、砂糖(ザラメ)をたっぷりと入れた、醤油味の汁で煮込んだもの。具材はこの2種類しかない。
『ねぎ』(100円)は、お皿にたっぷりと盛られた「刻みネギ」である。
前に来たときに、常連さんたちが串から外したシロやフワに、この刻みネギをたっぷりとトッピングして、一味唐辛子もたっぷりとかけて食べているのを見て、『次は自分もああしてみよう』と思っていたのだ。
予想どおり、ネギと一味唐辛子をたっぷりとかけると、もつの甘みが抑えられて、ちょうどいい感じのつまみとなった。
まわりのお客さんはというと、まさに老若男女、さまざまで、いろんなお客さんがいる。
半分ぐらいの人は飲んでいて、半分ぐらいの人は食事のようだ。
食事の人は、「肉丼」(780円)か「肉うどん」(600円)を食べている人が多い。
注文するときに「肉丼と3本ください」とか、「肉うどんと3本」といったように、サイドメニューとして関東煮を追加する人も多いようだ。
「○本ください」と本数を告げるだけで、それが関東煮のことだとわかるのがすごいね。さすがこの店の名物料理だ。
関東煮をサイドオーダーする場合、「3本」と注文する人が多いのが面白い。出てくるのは白2本・黒1本だったり、白1本・黒2本だったり。みんな、もつの種類にはそれほどこだわっていないようだ。
鍋を持ってきて、関東煮を10本単位でお持ち帰りしている人もいる。
逆に飲んでる人たちは、私と同じように「白を2本ね」などと、もつの種類を指定する人が多い。串をつまみにする人は、やっぱりこだわりがあるんだろうな。
お客さんの回転はけっこう速い。でも、その分、新しいお客さんもどんどん入ってくるので、店はずっとにぎわった状態が続いている。
私がもらった4本の関東煮も、そろそろ食べ終えそうなので、次なるつまみを検討する。
と言っても、候補はもう決まっている。「肉丼」(780円)にするか、それともご飯のない「肉皿」(650円)にするか。
『130円という値段の違いは、ご飯の有無によるものなのかなあ?』
そんなことを考えるともなしに考えていたら、となりに入ってきたご夫婦のご主人が、
「ボクは『肉皿』と『めし』(大200円)にしようかな」と告げると、
「あら、それじゃ『肉丼』と同じじゃない。『肉丼』のほうが安いんじゃないの?」と奥さん。
まるで私の心の中を見通してくれているかのような会話である。
「いや、『肉丼』の頭(=ごはんの上にのってる具材の部分)と『肉皿』とじゃ、量がぜんぜん違うんだよ」
ご主人のこの一言で私の心も固まり、ご夫婦の注文に続いて、「私も肉皿をお願いします」と注文した。
ほとんど待つこともなく出てきた肉皿は、ご主人の話のとおりボリュームたっぷり。これだけの量は、丼の頭としてはのせられないわなぁ。
肉皿というのは、牛肉とゴボウ、タマネギ、ニラなどを、砂糖、醤油をベースにした割下で煮込んだもの。すき焼きみたいな料理である。
これに3分の1ほど残しておいた「ねぎ(きざみ)」をのせ、一味唐辛子を振りかけていただく。
うん。これも甘いけど、関東煮ほどではない。
この料理には燗酒だな。
メニューに「酒上撰」(400円)と書かれているこのお酒。銘柄は地元・福山の「
ゆっくりとくつろぐこと約1時間半。今日のお勘定は2,440円でした。どうもごちそうさま。
「稲田屋」 / 関東煮4本 / 串から外してネギと混ぜて、一味をたっぷり
肉皿 / これにもネギをのせて、一味をかけて / 燗酒は「天寶一」
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