おでんの後は瀬戸の幸 … 洋食・おでん「自由軒(じゆうけん)」(福山)
福山に来たら、ここも絶対に外せない。福山を代表する大衆食堂「自由軒」だ。
その創業は昭和26(1951)年というから、今年で創業66年だ。
洋食とおでんは、創業当初からこの店の二枚看板だったんだって!
店内はコの字カウンター20席程度。2階にも20席ほどの座敷席があるのだが、今は1階のみで営業しているそうだ。
入口を入るとちょうど目の前、コの字カウンターの一番手前のところに、おでん鍋が据えつけられているので、店に入るとすぐに、おでんが目に飛び込んでくる。
ここに来ると、おでんの豆腐(150円)とスジ(300円)は外せない。
同行者と3人でやってきた今日は、まずスーパードライを大瓶(600円)でもらって、おでんの豆腐を人数分(3個)、スジはとりあえず1人前を出してもらった。
豆腐は3分の1丁分の大きさなので、ひとり1個でちょうどいいぐらい。
スジ(おでんの牛スジ)は好き嫌いがあるといけなので1人前だけもらったのだが、まったくいらぬ心配で、あっという間に空になった。
スジそのものもさることながら、上からかけてくれる、おでん専用の味噌がうまいからねえ。ちなみに豆腐も、その味噌ダレでいただきました。
そのスジを、おかわりでもらってもいいんだけれど、せっかくなので、「自由軒」らしいもの、福山(広島県)らしいものをいただくことにした。
「自由軒」らしいものの筆頭格が「キモテキ」(530円)だ。
キモテキという名称は、「キモ(レバー)のステーキ」の略称だろうと思うが、その実態は薄くスライスした牛レバーのケチャップ炒めである。
福山らしいものとしては、「ねぶと唐揚」(400円)と「ちいちいいか辛子みそ」(500円)を注文。
「ねぶと」の正式名称は「テンジクダイ」。呉あたりでは「めんぱち」と呼ばれている小魚で、頭を取って、唐揚げにしていただくことが多い。これがうまいっ。
「ちいちいいか」は、「瀬戸内海のホタルイカ」とも呼ばれる、胴の長さが8センチほどの小さなイカのこと。正式名称は「ベイカ」らしいが、「ベカ」(岡山)、「ベコ」(大分)、「ミミイカ」(香川)などとも呼ばれるそうだ。
瀬戸内海の他に、九州の有明海でもとれるようだ。
今日は、ゆで冷ましたものを辛子酢味噌でいただいたが、天ぷらにしたり、煮付けにしたりしても美味しい。
こうなると飲み物は日本酒だ。今日も福山の「天寶一(てんぽういち)」を、私は燗で、他の二人は常温でいただく。燗酒は、おでん鍋についている燗づけ用の孔に、チロリを差し込んでつけてくれる。
つまみは「おばいけ」(500円)と「れんこん天ぷら」(400円)を追加する。
「おばいけ」は、漢字で書くと「尾羽毛」。クジラの尾に近い部分の肉を、塩で漬けたあと、薄く切って熱湯をかけ、冷水でさらしたものなんだそうな。「さらしくじら」と呼ぶ地域も多いらしい。
我われが子供のころ、クジラの肉は筋っぽくて硬いものが多かったんだけど、オバイケは当時から(今ほどではないものの)軟らかかった。だから、けっこう好きだったなあ。懐かしい味と食感だ。
そしてレンコン。収穫が始まったばかりの9~10月は、新レンコンの季節でもある。これをサッと天ぷらにして、塩でいただく。うまくないはずがない。
3杯(3合)めの日本酒をたのんだところで、〆の食事も兼ねて、「ヤキメシ」(580円)と「オムライス」(630円)を注文する。
ここの「ヤキメシ」は、色合いも濃くて、ちょっとスパイシー。いかにも「洋食屋さんの焼きめし」という味わいなのがいいね!
そしてぷっくらとボリューム感のある「オムライス」。
「ヤキメシとオムライスと両方とも注文すると、おじさん3人には、ちょっと多いかもなあ……」
と、ちょっと心配だったんだけれど、これまたまったく要らぬ心配であった。ペロリと完食した。
1時間半ほどの晩酌タイム。今宵のお勘定は3人で7,730円(ひとり2,580円ほど)でした。どうもごちそうさま。
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