石巻からの帰り道。仙台駅で途中下車して、長年の課題であった仙台の有名店、「源氏」へと向かう。
仙台駅から歩いて10分ほどの文化横丁から、さらに細い路地の奥に、目指す「源氏」があった。
店に着いたのは午後5時半。
コの字カウンター20席程度の薄暗い店内は、パッと見たところすでに満席状態に見える。
酒場関係の書籍などでよく拝見していた、和服に割烹着姿の美人女将が、
「こちら、ちょっと詰めていただいて、おひとり入らせてください。こちらにどうぞ」
と、入口左手側に座っている先客お二人に声をかけてくれて、その間に入れてもらうことができた。
席は木製の長椅子になっていて、一つの椅子に、男性だと3人ぐらい。小柄な女性だと4人ぐらいは座ることができるだろうか。(神保町「兵六」の長椅子と同じような形態。)
そしてこれで、店内は本当に満席になったようで、私の次に店に入って来たひとり客は、「ごめんなさい」と断られていた。
ここ「源氏」は、創業が昭和25(1950)年という老舗酒場。
1杯900円のお酒には、1杯ごとにお通しの料理が付いてきて、基本的にはひとり4杯まで。
カウンター奥の壁には料理の短冊メニューも並んでいて、お通しだけでは足りない人は、料理を追加注文することができる。
今はなき野毛の「武蔵屋」(三杯屋)に近いイメージですね。「武蔵屋」の場合は、1杯めが1,200円(玉ねぎ酢漬け、おから、たら豆腐付き)、2杯めが+700円(納豆付き)、3杯めが+600円(お新香付き)で、3杯飲むと合計2,500円だった。
ここ「源氏」も、3杯で止めると2,700円になるので、金額的にも似ている。
「お飲み物はどうなさいますか?」
と聞いてくれる女将さんに、燗酒をお願いした。
先ほど、お酒は1杯900円(お通し付き)と書いたが、実際には飲み物は「浦霞 特別純米 生一本」(1杯1,100円)、「高清水 初しぼり」(1杯1,000円)、「高清水 辛口」(1杯900円)、「国盛 にごり酒」(1杯900円)、「生ビール」(1杯1,000円)という5種類の中から選べる。
季節によって、さらに別の銘柄が追加になったりもするようだ。
私のように、銘柄を指定せずに「燗酒で」とお願いすると、「高清水 辛口」を出してくれるようだ。
飲み方は「冷酒」「冷や(常温)」「燗」が選べるようだ。
燗酒は、カウンター上段で、受け皿付きのグラスに注がれる。
ちょうどすり切りまで注いでくれるんだけど、カウンターの上段から下段へと移すときの揺れで、受け皿のほうにちょっとだけ流れる。
1杯めの燗酒に合わせて、「きゅうりと大根のぬか漬け」と「あん肝、ナマコ、ホヤ、ワカメの三杯酢」が出された。
料理は少量なんだけど、日本酒にピッタリの、いいつまみである。
午後5時半の時点で、すでに満席ということからもわかるように、仙台でもかなりの人気店のようで、地元のサラリーマンらしきお客さんから、私のように、よそから出張でやって来たらしいお客さんたちも入り混じり、まさに老若男女、幅広い客層である。
ソフトドリンクなどは置かれていないので、お酒が飲める人じゃないと来れないのも、「武蔵屋」と同じだ。
ゆっくりと30分ほどかけて1杯めの燗酒を飲み干して、2杯めを、やはり「高清水 辛口」の燗酒でおかわりすると、お通しには「冷奴」が出された。
冷奴には、かつお節、刻みネギ、刻み海苔がたっぷりとトッピングされていて、卓上に置かれた醤油をさっとかけていただく。
午後5時の開店から1時間ちょっとが経過し、軽く1~2杯のお酒を飲んで切り上げる人たちが入れ替わり始めた。しかし、空席状態が続くことはまずなくて、空いた席にはすぐ入れ替わりに次のお客さんたちが入ってくる。
2杯めも30分ほどかけて、ゆっくりといただいて、3杯めは、ちょっと趣向を変えて、「浦霞 特別純米 生一本」に燗をつけてもらった。
「高清水」は同じ東北でも秋田の地酒なのに対して、「浦霞」はここ宮城県は塩竈の地酒。地元のお酒もいただいておかなきゃね。
3杯めのお通しは、刺身の盛り合わせ。盛り合わせと言っても、ソイ、ブリ、アジ、マグロがそれぞれ1切れずつ、ちんまりと盛り付けられたものだ。
店内の比率は、『老若』の視点で見ると、『老』よりは『若』のほうが多くて、カップル客も割合多い。
『男女』で見ると、やや『男』が多いけど、『女』も客全体の3分の1以上はいるんじゃないかなぁ。『男』ばかりという感じではない。
3杯めも30分ほどかけて飲み干して、4杯めは「高清水 辛口」の燗酒に戻った。
「4杯めのお通しは、『お味噌汁』か『おでん』が選べます。どちらになさいますか?」
という女将さんの問いかけに、お味噌汁をお願いした。
4杯めに「お味噌汁」か「おでん」が選べるということは知っていて、実は「おでん」を選ぼうと思っていたのでした。
ところがとなりの客が、少し前に「お味噌汁」を選択したところ、女将さんから、
「今日のお味噌汁は、ソイとタイのアラのお味噌汁です」
という説明。その具材に引かれて、急きょ路線変更し、私も「お味噌汁」にしたのでした。
汁ものでいただく日本酒ほど美味しいものはないしねぇ。
ちなみに逆どなりのお客さんは「おでん」を選択。その内容は、玉子、ちくわ、シラタキ、コンニャク、さつま揚げ(4分の1個)でした。
お酒1杯あたり約30分ずつ。2時間で4杯をいただいて、お勘定は3,800円でした。
どうもごちそうさま。
文化横丁の看板を頼りに / 細い路地を進んだ先に / 「源氏」の入口がある
2杯めの冷奴 / 3杯めの刺身 / 4杯めの味噌汁
・店情報
《平成31(2019)年3月29日(金)の記録》
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