常連さん達が集う老舗 … 「岩亀(がんき)」(京急鶴見)

京急鶴見駅から歩いて5分ほど。鶴見川近くの「岩亀」にやって来た。
この店名、「岩亀」と書いて、「がんき」と読むそうだ。
店内は、入ってすぐ右手のカウンター席と、左手のテーブル席、奥には小上がりの座敷席もある。
午後7時半の店内は多くのお客さんたちでにぎわっていたが、カウンター席の入口側には数席だけ、空席があり、そこに案内された。

席に着くとすぐにお手拭きと、醤油皿、そして箸(はし)が出される。
最初はやっぱりビールかな。
「生ビール(中)キリン」(610円)と「ビール(大)キリン」(600円)が選べるところを、後者の瓶ビールのほうでお願いした。
店は男性一人と女性二人の3人で切り盛りしていて、男性と女性が中の厨房にいる。もう一人の女性がカウンターの中にいて、お客さんたちと話をしながら、ホールへのお運びも担当している。

お通しとして出してくれたのは、濃い色合いのキュウリ漬け。
これがチビチビといいつまみになる。
店を出た後に、お勘定額から逆算してみると、このお通しはサービスだったようです。

さて、つまみ。
カウンター席と厨房との間の壁の上部に、ずらっと短冊メニューが並んでいる。
刺身もの、焼きもの、揚げもの、その他と区分けされていて、その数ざっと40品。
その中から「もつ煮込」(530円)を注文した。
私の後から、何人かの常連さんがやって来てわかったことだが、この店の一番の売りは刺身のようで、常連さんたちはまず真っ先に刺身を注文する。
だから、最初にお箸と一緒に醤油皿を出してくれたんですね。
後からお話しさせていただくようになった、となりの常連さんによると、刺身は2~3種の盛り合わせもできるそうで、この場合は、単品(670円のものが多い)の倍数ではなくて、割安になるらしい。

「うちのは、野菜なんかは入ってなくて、もつだけですよ」
と言いながら、おねえさんが心配そうに出してくれたが、私はそういう煮込みも大好き。
練り辛子を溶かし込んで、ちょっとピリ辛でいただくと、ものすごく美味しい。

大瓶ビールを飲み切ったところで、次なる飲み物として「お茶割り焼酎」(380円)をもらう。
「お茶割り焼酎」をいただいていると、店のおねえさんが、「横浜開港160年の浮世絵」という大きな本を出してくれた。
横浜の街そのものや、その街の中を闊歩する外国人を描いたりした浮世絵があるんですねぇ。初めて知った。
この店の大元は、この浮世絵にも描かれている横浜の遊郭・「岩亀楼(がんきろう)」にあるんだそうで、本店(明治末期に創業)は今も横浜(戸部)にあるとのこと。
この店は、1953(昭和28)年に、その本店から分岐して、この地に創業したそうだ。創業68年となる老舗酒場である。

「もつ煮込」の具材をすべて食べ終えて、あとは大事な煮汁!
これがまたいいつまみになるんですねぇ。
この煮汁を、より美味しくいただくには、豆腐(冷やっこ)あたりがあるとベストなのだが、なぜかメニューに見当たらない。
その代わりに「厚揚」(370円)を注文し、「お茶割り焼酎」もおかわりした。

この「厚揚」が、厚揚げとして旨味が強く、調味料がなくても美味しくいただける!
そこで最初の半個はそのまま&生姜醤油でいただいて、残り2個半を煮込みの汁と一緒にいただいた。
「厚揚」の注文。正解だったなぁ。
カウンター内のおねえさんは、カウンターに居並ぶお客さんたちのハブ(中心点、中継点)のような役割を果たしていて、自分のような一見客にも「おにいさん、どこから来たの?」と話を聞いてくれて、「この人、東京から来たんだって」と、となりの常連さんに紹介してくれる。
それがきっかけで、まわりのお客さんたちとも話が弾むようになった。
左どなりは店の大常連のKさんで、右どなりは大阪から単身赴任してきているIさん。
ひとりだけ女性の常連さん(Mさん)がいるが、他はみんな、おじさん。
みんな、ほぼ毎晩のようにこの店にやって来ているんだそうな。
それぞれが名前(姓や名)で呼び合ってて、お互いの仕事のこともよく知っているほど。
お客さんたちの年齢層は幅広いのに、本当にみんな、この場を楽しんでいることがヒシヒシと伝わってくる。
常連さんが多い酒場は間違いないね。
本来は、感染防止のことも考えて、これまで来たことがない店にやって来て、話が弾まないようにしているところもあるのだが、こうして話が弾むようになったらなったで、それもまた楽しくてありがたい(爆)。

お店の常連さんたちと、ゆっくりと楽しむこと2時間弱。今夜のお勘定は2,260円でした。
どうもごちそうさま。
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