地元に根付くケの空間 … 立飲み処「紫羊(しよう)」(長崎)
『ハレとケ』なんて言葉がありますが、ちょっと素敵な料理をいただくレストランが『ハレ』(非日常)の空間だとすると、毎日でも酒が飲みたい呑兵衛たちが行く大衆酒場は、圧倒的に『ケ』(日常)の空間。
美味しく食べて飲んで、お勘定が2千円以内に収まるぐらいがうれしい。
だから地方に出張に行っても、その地に根付いている『ケ』の空間としての大衆酒場を探すのが楽しみなのです。
今回やってきた立飲み処「紫羊」も、長崎駅前の酒場街を歩いていて見つけた1軒。
『立飲み処』と出ているので、基本的に安いだろうなと思いながら近づいてみたところ、その店頭にメニューが掲示されていて、料理は1個60円の「ゆで卵」から始まって、高くても「刺身」(内容は日替り)の350円まで。飲み物も「生ビール」が370円で、「黒霧島」や「二階堂」などの本格焼酎も320円と安いのだ。
これは毎日行ける『ケ』の酒場に違いない!
そう確信して入口扉を開けたのだった。
店内はギュッと詰めると15人ほど立てるU字のカウンター席のみで、女将さんが一人で切り盛りされている。
1時間半ほど立ち飲んで、品物と引き換え払い(キャッシュ・オン・デリバリー)での支払合計が2,050円と、ほぼ予想どおりの金額だったし、料理もお酒も美味しかった。
そして当然のごとく、毎日のようにやって来ているらしき、地元のご常連客も多いようだった。
それ以来、長崎への出張があるたびに、この店に来るようにしているのだが、いかんせん、長崎への出張が年に2回ぐらいしかないので、残念ながらここ「紫羊」にも、そんなに足しげくは通えずにいるのでした。
今日も今日とて、立ち飲みカウンター席の一角に立ち、まずは「瓶麦酒」(中瓶510円)と「水いか」(350円)からスタートした。
「瓶麦酒」はアサヒかキリンが選べるので、今夜はキリンで。
私の場合、特にこれというビールの銘柄はないので、その日その日の気分次第で、あれこれの銘柄を楽しんでいる。
日替りの「お刺身」(各350円)。今日は「水いか」と「はまち」が並んでいる。
長崎県は東シナ海と対馬海峡に面していて、島や半島が多いことから、複雑な海岸線の総延長は、日本の海岸線長全体の1割強。4,200kmにも及んでいるんだそうです。
だから、当然のごとく漁業も盛ん。漁業生産量は、圧倒的首位の北海道に続く第2位。漁獲できる魚種は全国1位なんだって!
そんなわけで、いろんな魚を、お手頃価格でいただくことができるんですね。
「水いか刺身」はあっという間に食べ終えて、続いても魚。「かれいの煮付け」(250円)をいただいた。
甘い味付けが長崎ならでは。九州は全体的に味付けが甘いのだ。この甘みが、カレイの身の旨みをグッと引き出してくれるのがいいね。
長崎は電車で通勤してくる人も多いから、こうして駅の近くに『ケ』の大衆酒場があるんだろうなぁ。
自動車通勤が多い地域に行くと、『ケ』の大衆酒場を見つけるのが難しいことが多いのだ。
さらに観光地でもある長崎は、市街地に出ると、この地の名物料理を食べさせてくれる『ハレ』の飲食店も多いのがすばらしいところ。とてもいいバランスだ。
瓶ビールを飲み干すと、次なる飲み物は、ここに来ると毎回いただいている長崎県の麦焼酎「壱岐ゴールド」(330円)のロックである。
壱岐は麦焼酎発祥の地として知られている。中国から伝わった製法を活かし、16世紀ごろに壱岐独自の、麦を原料とした焼酎を生み出したんだそうな。
その壱岐の麦焼酎を飲むのも、長崎に来たときの楽しみのひとつなのだ。
続いてのつまみとして、この店の名物のひとつ、おでん(各140円)をもらう。今日は「厚揚げ」と「すじ(牛スジ)」にした。
ここのおでんは、魚のすり身に具材を混ぜて揚げた「揚げかまぼこ」系のものが多いのが大きな特徴。
大根、玉子、こんにゃくなどの定番のネタをはじめとする全20種類のおでん種の中に、いか天、あじ天、コーン天、ぎょうざ巻など、「揚げかまぼこ」系は10種類と、ネタの半数を占めているのだ。
「揚げかまぼこ」の種類が多いというのも、漁業生産量が多い長崎県ならではなんだろうな。
おでんに合わせて、練り辛子も出してくれたが、今日は卓上に置かれている柚子胡椒でいただいた。
刺身、煮魚、おでんといただいて、お腹はもう十分なんだけど、もうちょっと壱岐焼酎を飲みたくて、焼酎をおかわりするとともに、つまみには「お新香」(130円)をもらった。
出された「お新香」は、ピリ辛で昆布も入ってトロッとした青菜と、柔らかくて味の染みた甘いタクアンの2種盛り。
タクアンまで甘いのが長崎ならではなんだなぁ。でも美味しい。焼酎のいいつまみになりますね。
ゆっくりと2時間以上立ち飲んで、品物と引き換え払いでの総支払い額は2,180円でした。どうもごちそうさま。
これぞまさに素晴らしき『ケ』の酒場空間ですねぇ。
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コメント
懐かしいなぁ、紫羊。
私の定宿がウイングポートだったので、〆の1杯に立ち寄ったことがありました。
11年前は壱岐ゴールドが260円でした(笑)
投稿: G.A | 2022.05.26 05:57
なんと!
改めて「不言実食/旨い話にゃ気をつけろ」を確認し、2011年5月の「紫羊」のページを発見しました!
https://amaha1007.fc2.net/blog-entry-315.html
長崎に行くときは、いつもGAさんのサイトを確認させていただいているのに、見落としてました(^^;;
投稿: 浜田 信郎 | 2022.05.26 21:20