岡山で人気の大衆酒場 … 「成田家(なりたや)西口店」(岡山)
昼間に、新幹線から四国内の特急への乗換駅として利用することが多い岡山だが、もしゆっくりと飲める機会があれば、ぜひ行ってみたい酒場がある。
岡山の呑兵衛たちに大人気で、この地では「サラリーマンの聖地」とも呼ばれているらしき大衆酒場、「成田家」である。
今日は初めて岡山で宿泊できるチャンスが得られたので、満を持してその「成田家」に行ってみることにした。楽しみじゃのぉ!
「成田家」は、岡山市内を中心に、岡山県内に20店舗ほどある。
1953年(昭和28年)に第1号店がオープンし、そこから暖簾分けする形で、県内各地に「成田家」が広がっていったようだ。
そんな中から、今日は岡山駅に最も近い、「成田家 西口店」を目指すことにした。
もしここに入れなかったら次に近いところへ、それでもダメならその次に近いところへと回っていけば、そのうちどこかに入れるだろう、という心づもりなのだ。
店に着いたのは、開店時刻から10分しか経っていない、午後5時10分。
入口引戸をガラリと開けて、「ひとりです」と店内へ。
奥に向かって細長い店内には、左手にL字(形は左右逆)カウンター12席と、奥の右手壁際に4人用のテーブル席が2卓。(2階に座敷席もあるようだが、今日は使われていないようだった。)
カウンター席は、2席ごとに透明なパーティションで、6つぐらいの空間に区切られていて、開店直後にもかかわらず、空いている空間は1つのみ。当然のようにその空間に案内された。
奥のテーブル席にも、すでにグループ客が1組入っていて、私のすぐ後から入ってきたサラリーマン4人組が、残る1卓に入って、これで店内はなんとなく満員になった。(パーティションの数ではなくて、椅子の数で見ると、カウンター席には、あと5人ぐらいは入れそうな状況ではある。)
危なかったなぁ。岡山の呑兵衛さんたち、みんな、出足がいいなぁ。
まずはやっぱりビールからスタートだ。
メニューには「ビール大」(600円)と「生ビール中」(600円)が並んでいるので、「ビール大」のほうを注文すると、すぐにアサヒスーパードライの大瓶が出された。
生ビールは飲みやす過ぎて、すぐにキューッと飲み干してしまうので、ひとりの時はなるべく瓶ビールを選んで、ペースダウンを図っているのでした。
そしてつまみ。
岡山「成田家」の名物料理と言えば、「とり酢」(230円)と「湯豆腐」(250円)。この2品は必ず食べて帰らないと。
しかしながら、一品一品の量がどれくらいかわからないので、最初の注文は「とり酢」だけにしておいた。
小鉢に、ひとつかみの春雨を入れて、その上に細かく切った蒸し鶏(カシワ)をのせ、刻みネギをたっぷりとトッピングする。ポン酢醤油を回しかけ、小鉢の縁に練りガラシを添えたらできあがりという、わりとシンプルな料理だ。
「はいどうぞ」と、カウンター越しに出してくれる「とり酢」を、グルグルっとかき混ぜていただく。
なるほど! 見た目どおり、さっぱりとした味わいで、飲み始めの最初の一品として、ぴったりだ。
ここ「成田家」には、お通しはないが、この「とり酢」がまさにお通しの役割も果たすわけですね!
「とり酢」に続いて、もうひとつの名物、「湯豆腐」も注文しようと思っていたのだが、その前に、メニューを眺めていて気になった「刺身盛合せ」(680円)をもらうことにした。
メニューには、「マグロ刺」(550円)、「イカ刺」(550円)、「あじ刺」(550円)、「ハマチ刺」(600円)、「たこぶつ切り」(630円)、「カツオタタキ」(550円)と、各種刺身が単品価格550円から630円で並んでいるなか、「刺身盛合せ」は680円と、単品の値段とほとんど変わらないのだ。こりゃ気になるよねぇ。
そして出てきた「刺身盛合せ」は、タイ、タコ、マグロ、イカの4点盛り。1種あたり2切れずつぐらいの少量だけど、ひとりで食べるにはちょうどいい。
ひとりで飲むときは、こういう刺し盛りがうれしいなぁ。
イカの身が、ねっとりと分厚いのもいいですねぇ。立派な紋甲イカだ。
大瓶ビールを飲み切ったところで、「日本酒」(300円)を熱燗で注文すると、カウンター上に置かれているポットから、受け皿付きの大きな一合猪口に、たっぷりと注いでくれた。
銘柄は地元・岡山の「御前酒(ごぜんしゅ)」だ。
初めて飲んだお酒だけれど、これまたとっても飲みやすい。魚とも合うねぇ!
刺身の後は、いよいよもうひとつの名物、「湯豆腐」をもらう。
味のついた出汁と一緒に出してくれる「湯豆腐」には、カツオ節や刻みネギもたっぷりとトッピングされている。
うぅ~っ。これもいいねぇ。
呉の「森田食堂」や、新開地(神戸)の「赤ひげ姉妹店」の湯豆腐と共通する、出汁が旨い系の湯豆腐だ。
こうして「成田家」二大名物の、「とり酢」と「湯豆腐」をいただいたけれど、『名物にうまいものあり』ですねぇ!
実は県内に何軒もある「成田家」では、「とり酢」と「湯豆腐」は定番だが、それ以外の料理は店舗ごとに違うそうだ。
それどころか、その「とり酢」と「湯豆腐」にしても、名前は同じだが、その内容は店舗ごとに違うらしい。
そういえば都内に暖簾分けで広がった「三州屋」にも、「鳥豆腐」という、各店舗に共通する名物料理があるんだけど、その内容は店舗ごとに違う。それと似た感じなのだろう。
そこが、暖簾分けで広がった店ならではの、チェーン店とは異なる面白いところですね。
こうして同じ「成田家」でも、店舗ごとに個性が異なり、メニューも異なるのだが、『うまく、早く、感じよく、なおかつ安く』という、「成田家」の家訓は各店舗で共有されているそうだ。
この『なおかつ安く』を実現すべく、ここ西口店のつまみも、200円から始まって、一番高いのが、さっきいただいた「刺身盛合せ」の680円だ。
最安値である200円のつまみにしても、とりきも、あらだき、ねぎみそ、もろきゅう、トマト、納豆、冷ヤッコ、ワカメ酢、もずく酢、白菜キムチ、枝豆と充実しているのが嬉しいところだ。(カウンターの常連さんたちにはワカメ酢が人気のようだ。)
そんな中から「あらだき」(200円)を注文すると、「今日は『あらだき』はないんです」とのこと。残念!
それじゃあ、と代わりに注文した「とりきも」(200円)が、これまた美味しいこと!
熱燗も2杯目に突入した。
「小エビ唐揚げ」(390円)か「小エビかき揚げ」(550円)も食べたかったのだが、もうお腹がいっぱいになってきた。
そこで最後に、つまみ 兼 〆の一品として、「穴子巻」(390円)を注文すると、注文を受けてから焼いた穴子を巻物にしてくれる。これもいいねぇ。
もう1杯、熱燗をもらって2時間ちょっとの酒場浴。
お勘定は3,250円でした。どうもごちそうさま。
やぁ、来れて良かった!
| 固定リンク | 0
コメント