知る人ぞ知る老舗酒場 … 小料理「小乃(おの)」(新橋)
新橋にもまだこんな酒場が残ってたんだなぁ。
初めてやって来たお店なのに、どこか懐かしさを感じる落ち着いた雰囲気。
ここ小料理「小乃」は、高校・大学の先輩であるKさんの行きつけの酒場。
ここに来はじめてからもう20年近くになるそうな。
今日はそのKさんと、くまさん、そして私の3人でこの店にやってきた。
くまさんは、Kさんと同じ職場にいて、私とは20年来の呑み仲間。
今日の飲み会も、くまさんがアレンジしてくれたのである。
狭い狭い店内には、テーブル席が1卓のみ。
ここに普通は6~7名。ギュッと詰めると10人近く入れるんだそうな。
くまさんがKさんと同じ職場になったのは、今から2年ほど前のこと。Kさんにこの店を紹介してもらって、今ではくまさんも常連さんになっている。
今日はそのKさん、くまさんという常連さんお二人と一緒なので、初めての店にもかかわらず緊張感もなく、ふわっと自然に馴染めたんでしょうね。
まずは瓶ビールをもらって乾杯すると、店を一人で切り盛りしている女将さんが、一品、また一品と、順々に料理を出してくれる。
店にはメニューはなくて、その日、女将さんが作った料理を出してくれるのだ。
言ってみれば、知り合いのお家にお邪魔して、そこでお酒や料理をおよばれしているような感じなのである。
この女将さんの手作りの料理が、ごちゃごちゃと手をかけず、わりとシンプルに作られているようなのに、すごく美味しい。これは嬉しいなぁ。
お酒も、特にメニューはなくて、店内の壁際にずらりと置かれているお酒の中から、好きなものを注文する仕組み。
くまさんがハマっているのが奄美黒糖焼酎「れんと」なんだそうで、今日はそれをロックでいただいた。
小料理「小乃」がある新橋相互ビルは、新橋駅から徒歩2分ほどの第一京浜(国道15号線)沿いにある。
それぞれ人気立ち飲み店である「こひなた」や「工藤軒」、数年先まで予約で埋まっている「すし処まさ」などが入っている新橋駅前ビル2号館のすぐ南側だ。
この新橋相互ビルが竣工した1972(昭和47)年12月23日に、小料理「小乃」も開店した。それ以来、創業50年を超える老舗酒場である。
その開店記念日が、ちょうど浅草寺の羽子板市の時期(12月17~19日)に近いこともあって、店内には毎年の羽子板がずらりと飾られている。
創業店主は、現在の女将さんのお母さん。お母さんが昭和時代の「小乃」を切り盛りされ、平成に入ってから現在の二代目女将にバトンタッチしたそうである。
料理を終えた女将さんは、客席側に出てきて、我われの話の輪に加わってくれる。
そして、やはり常連さんらしき男性ひとり客も、ひとり、またひとりと入ってきて、同じテーブルの一角に腰を下ろす。
この小さなテーブルが、「ロ」の字のカウンター席のような感じで使われているのだ。
だから自然と客同士も会話するようになり、店全体に一体感が出てくる。中野の「路傍」や、呉に単身赴任していたころの「魚菜や」と同じような雰囲気だろうか。
このタイプの酒場は、一見さんにはややハードルが高いのだが、何度か通うとすぐに常連さんになれますからね。
ちなみに新橋相互ビルは地上9階建てのマンションで、下層階が店舗フロアになっている。小料理「小乃」も1階フロアの店舗の1軒で、お手洗いはビル内の共同トイレだ。
ゆっくりたっぷりと4時間近くも楽しませてもらって、今夜のお勘定は一人5千円ずつでした。どうもごちそうさま。
いい酒場をご紹介いただき、本当にありがとうございました。>Kさん、くまさん
それにしても心配なのは新橋駅周辺の再開発である。東口側では、新橋駅前ビル1号館・2号館、そしてここ新橋相互ビルも検討区域の範囲に含まれているのだ。
温かみのある雰囲気、手作りの料理の美味しさ、そして居酒屋としてのコミュニケーションの場という、昔ながらの小料理居酒屋の良さがすべて残っている小料理「小乃」。ぜひ今後も長く続いて欲しいものである。
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