串カツ/とん焼/どて煮 … 「八幡屋(やはたや)」(名古屋)

名古屋駅から歩いて10分ほどのところにある、昭和29年創業の老舗居酒屋「八幡屋」。
開店時刻の午後5時に店に到着すると、開店前にできていた行列が、ちょうど店内へと案内されているところだった。
この流れで、そのまま店内に入れるかと思いきや、私のところまであと5人ぐらいになったところで、ピタッと動きが止まった。
「八幡屋」の店内は70席ほどあるらしいのだが、予約も可能な店なので、予約席以外の空席がすべて埋まったということなんだろうな。

その後も、二人ずつぐらいのペースで順次店内に案内されていって、5分後ぐらいには私が列の先頭になった。
なるほど。店頭のこの場所で串を焼いたり、どて煮を煮たりしてるんですね。
その焼き台前で、持ち帰り用の串を注文しているお客さんも多い。

「予約のお客さんがいらっしゃる午後6時まででよろしければ、すぐにご案内できますが…」と声がかかったが、「すみません。ゆっくり飲みたいので、もうちょっと待ちます」とお断りすると、私の後ろに並んでいたご常連らしき男性客が、「私は6時まででかまいません」と、先に店内に案内されていった。
短時間のうちにサクッと飲み食いして、サクッと帰るお客さんも多いようだ。

さらに店のおねえさんに、「そこの立ち飲み席をお使いいただくこともできますよ」と声をかけていただいて、横を見ると、なんと入口のすぐ横に、壁に作り付けられた小さな立ち飲みカウンターがあるではありませんか。
「ありがとうございます。ここで飲みます!」
と答えると、すぐに串入れ、お通し(サービス)のキャベツ、そしてコップを出してくれて、立ち飲み席ができあがった。

まずは各種選べる「大瓶ビール」(770円)をサッポロ赤星でもらって、つまみには「食事メニュー」と書かれているメニュー表の上から三つ、「串カツ」(99円)、「とん焼」(99円)、そして「肝焼」(99円)を注文すると、ほとんど待つこともなく、それらが一斉にやって来た。

この店のおつまみはとってもシンプル。
さっき注文した「串カツ」、「とん焼」、「肝焼」の他に、「肝唐揚げ」(99円)、「どて煮」(99円)、「心臓」(99円)、「ネギマ」(132円)の合わせて7品と、「おでん」(各110円)が「厚揚げ」、「たまご」、「こんにゃく」、「赤棒(はんぺん)」の4品で、全部合わせても11品しかないのだ。

これが「串カツ」。
「串カツ」の味付けは、ソース、味噌、タレ、塩コショウの4種類から選べるが、何も指定しないで注文したら、名古屋ならではの味噌で出してくれた。
ちなみにソースと塩コショウは、卓上に調味料が置かれている。

こちらは「とん焼」(奥)と「肝焼」(手前)。
東京の『もつ焼き屋』風に言うと、シロとレバのタレ焼きである。

さらに「肝唐揚げ」も追加注文。
カリッと揚がったレバも美味しいよねぇ。

せっかくなのでその「肝唐揚げ」に、ちょいとソースをかけていただいてみると、これもまたいいなぁ!

「どて煮」は、串に刺したシロを煮込んだもの。
味噌の味わいがいいですねぇ。何本でも食べられそうだ。
「味噌串カツ」にしても、「どて煮」にしても、名古屋の赤味噌、うまいねぇ!

20分ほど立ち飲んだところで、「座敷席が空きましたけど、移りますか?」と声がかかった。
私自身は立ち飲みも大好きなので、このままでもいいんだけれど、せっかくの機会なので、店内も見ておきたくて、座敷席に移らせてもらった。

店に入ってすぐの部屋に、厨房を囲むカウンター席(ただし2~3人しか座れない)とテーブル席がいくつか並んでいて、入口から見て左側の別室に、通路を挟んで右の小上がりに4人掛け座卓。

通路の左の小上がりには6人掛け座卓が並んでいて、私は6人掛けの座卓のひとつに案内された。
コップなどが置かれている席は予約席のようだ。つまり私が座っているこの卓以外は、すべてが今は空いているけど予約席ってことですね。

座卓にくつろいでのつまみは「心臓」(手前)と「ネギマ」(奥)。
これまですべて、味付けの指定はしていないのだが、これら2本は塩焼きで仕上げてくれている。
確認はしていないが、ネギマの肉は、カシラじゃないだろうか。

最初のビールも残りわずかになってきたので、麦焼酎を水割り(473円)でお願いすると、「麦水(むぎみず)ひとつぅーっ!」と注文が通された。
ちなみにここの麦焼酎は大分の「いいちこ」、芋焼酎は宮崎・高千穂の「天孫降臨」である。

立ち飲み席にもあったのだが、各席には調味料の他に小さく切った新聞紙が置かれている。
この新聞紙を使って串をつまむことで、串についているタレや味噌で指が汚れるのを防ぐのだ。
この店では、ずっと前からこういうSDGsな取組みが行われていたようだ。やるね!

串もの7種を制覇して、ここからは「おでん」(各110円)に突入だ。
まずは「たまご」(左)と「厚揚げ」(右)。
名古屋では「おでん」もまた味噌ベースで、全体的に色が黒い!
でもこれまた美味しいよねぇ。

冷たい飲みものはすべて、小上がりの座敷席の入口に置かれている大きな冷蔵庫から出されるようなので、改めてそこを観察してみたところ、家呑みの時にいつもお世話になっている「タカラ焼酎ハイボール〈ドライ〉」を発見。

そこで、麦焼酎水割りの後は、その「チューハイ ドライ」(528円)をいただくことにした。
330ml瓶なんだけど、氷入りのサワーグラスに軽く2杯分の分量なのが嬉しいですね。

そして「おでん」の「赤棒(はんぺん)」(左)と「こんにゃく」(右)ももらって、これでこの店の11種類のつまみを完全制覇である。

「赤棒」は、カッコ書きで「はんぺん」と注釈が付いているが、実際には『ピンク色をしたさつま揚げ』のことで、名古屋特有のおでんダネなんだそうな。

2本目の「タカラ焼酎ハイボール〈ドライ〉」をもらうころ(午後6時半頃)には、予約席もすべて埋まった状態になった。
右前方の席に座ったサラリーマン3人組は、「まず、串カツ、とん焼、どて煮を10本ずつお願いします!」なんて頼んでるし、後ろに入ってきた6人組は各種20本単位でバンバン注文している。
ぬぉぉ~~っ。これが名古屋流の注文の仕方なのか! ものすごいことじゃのぉ!
お皿にピラミッドのように10本の串焼きが積み上げられて出てくるのも豪快だ。

すべてのつまみを一通り制覇したので、ここから先は2巡目となる品物だ。
こちらは「とん焼」。タレがいいよねぇ。
まわりの席がいっぱいになったのに、私が座っている6人用座卓は、相席のお客すらいなくて、座卓全体を独り占めしている状況。
女将さんらしき女性や男性店員さんに、「一人用の空きができたら、どこにでも移りますから」と声をかけたのだが、「大丈夫ですよ」と最後まで相席になることすらなかった。
このあたりも、この店の人気の理由のひとつなのかもしれないなぁ。

そして「どて煮」。これもいいよねぇ。クセになる味わいと食感だ。
この「とん焼」や「どて煮」が、1本99円というのもありがたい。
10本単位、20本単位で注文する人がいるのも納得できるよねぇ。

最後に「串カツ」と「ライス(小)」(187円)を注文し、「串カツは、ごはんに載せて出してもらったのでかまいませんから」とお願いすると、ごはんにもよーく味噌ダレが染みるようにして出してくれた。
いやぁ、この串カツごはんが美味しいこと!
大正解の〆となりました。

ゆっくりたっぷりと2時間ちょっと楽しんで、今宵のお勘定は3,762円。
店のおねえさんの「よう食べたね。また来てね」という声に見送られながら店を出ると、私がひとりで立ち飲んでいた入口横の小さな立ち飲みカウンターを、若者3人が囲んで楽しんでいた。
すべての料理が美味しかった。どうもごちそうさま。絶対にまた来ます!
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