音戸の牡蠣に音戸の酒 … 本家「鳥好(とりよし)」(呉)

1913年(大正2年)創業の老舗大衆食堂「森田食堂」での昼呑みを終えて、駅前のホテルにチェックインし、夕方5時半の開店時刻を目指して向かったのは、呉の焼き鳥屋の元祖、1951年(昭和26年)創業の「本家 鳥好」だ。
前回来たのが、ブラジルから一時帰国していた2014年(平成26年)11月20日のことだったので、実に10年ぶりである!
なかなか来れなくてごめんなさい。

カウンター席の一角に座り、最初の注文は決まっている。
「生ビール(中)」(600円)と「みそだき」(1本200円)である。
「みそだき」は2本いただいた。

この店が元祖で、呉の名物でもある「みそだき」は、鶏皮をグツグツと煮込んだもの。
店が創業した頃は、まだ戦後の復興期の真っ最中。
ブロイラーなどはまだない時代で、卵を産まなくなった親鶏などが主役だったそうだ。
その親鶏の硬い皮を、なんとか捨てずに食べる方法はないかと、試行錯誤して生まれたのが、この「みそだき」だったのだ。(詳しくは過去記事をご参照ください。)

あっという間に生ビールを飲み干して、続いては、昼呑みのときにもいただいた、呉は音戸の地酒、「華鳩」(600円)だ。
昼は特純冷酒で、今回は上撰の熱燗である。
熱燗にしたのには理由がある。

この店自慢の「かき串焼」(2本700円)をもらって、牡蛎酒を楽しむためである。
この牡蠣が、これまた音戸産で、真水ではなくて海水で洗っているのが大きな特長。このため牡蠣が『水ぶくれ』しないし、旨みも逃げないのだ。

ここ「本家 鳥好」では、この音戸の牡蠣を、今いただいている「かき串焼」の他、「かき造り」(1,200円)や「かき天ぷら」(1,200円)、「かきフライ」(1,200円)、「酢かき」(700円)、そして事前予約が必要だが「かきなべ」といった料理で楽しめる。
特に「かき造り」と「かき天ぷら」は、音戸産の牡蠣ならではの濃厚な旨みが、思いっきり堪能できる逸品なのである。

すぐに「華鳩」(600円)の熱燗もおかわりだ。
音戸の牡蠣に音戸の地酒。合わないはずがない!

続いていただいたのは、呉の焼き鳥屋ならではの串類である。
写真の左から順に、「串焼(たれ)」(1本200円)、「串かつ」(1本200円)、「串天」(1本200円)。
いずれも素材としては『鶏ねぎま』で、焼くと「串焼」になり、衣をつけて揚げると、「串かつ」になったり、「串天」になったりする。
同じ素材でも、調理法によって味わいと食感が変わってくるのが面白いよねぇ。
これもここ「本家 鳥好」が元祖だが、呉の焼き鳥屋のほとんどで、さらには全国各地にある「鳥好」で、この食べ方を楽しむことができる。

せっかくなので「串かつ」に、「みそだき」の残りダレをからめていただいてみたのだが、これもまた旨し! ぜひお試しください。

店は現在、創業者の長尾一良さんから数えると三代目となる上瀬正智さんが、奥様の寛子さんとお二人で切り盛りされている。
10年前に来たときは二代目ご夫妻(上瀬弘和さん、久美さん)と三代目ご夫妻の4人で切り盛りされていたが、7年ほど前にバトンタッチされたそうだ。
たいへん残念なことに、お母さん(久美さん)は2年前に、お父さん(弘和さん)は昨年(2024年)の11月に亡くなられたとのことです。

最後は、燗酒の中に旨みをたっぷりと出してくれた牡蠣を、箸でつまみ上げていただく。

お酒の色が変わるほどに旨みが出ているのが実に美味しいではありませんか!

ゆっくりと2時間ほど楽しませてもらって、今宵のお勘定は3,500円でした。
どうもごちそうさま。
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